第33話 戦闘、ラインランド 前編
「ラインランド、久しいですね」
【七選魔法師】のひとり、土魔法師ラインランド。【大地】という異名を持つ魔法師。
これで、ヴィリスが追放後に出会っていない魔法師は、あとふたり。
未だ姿を見せない、【神話】。そして、ヴィリスを追放へと仕向けた最悪たる根源、【深淵】のジェーン。
「おう、そうらしいな。そうか、【閃光】も【炎舞】もヴィリスに付き纏っていたんだなあ。もうこちとら人手不足さ。ジェーンさんもお怒りよ」
「では、一月もの間この古代遺跡ーーー土に囲まれた空間で怠惰に時を過ごしていてよかったのですか」
「いや、もういいのさ。ジェーン様はしばらくする本当の実力を表した。他の七選魔法師を遥かに上回る実力で、敵と呼べるものはもう無くなっていたよ」
【七選魔法師】の真の実力というのを、ヴィリスは完全に理解できているわけではない。【英雄パーティー】所属時は、荷物持ちや雑用・非魔法系の戦闘(剣など)をしていたがために、実戦の様子に詳しくないのだ。
実力比べが、できない。どれほどの脅威なのか、想像もつかないのである。
「たとえひとりだとしても、ジェーンはなんてことなかったわけですか」
「それも一理ある。このラインランドは、ジェーン様に自由にしていいという命令を受けて、自分の住処で悠々自適に過ごしていた。なんせ認められているからな」
「あなたは、僕たちと何がしたいですか」
「戦いだ。ヴィリスの今の実力が、どうか。気になるものだ」
「戦い、ですか」
「そうだ、この土魔法師【大地】兼、古代遺跡管理者である私。それが求めるのは強さの果て。噂は耳にした、氷魔法、覚醒したらしいと」
「それを、なぜ」
「噂なんてその程度のものさ、広がるのも時間の問題というわけだ。さあ、戦おう、どちらが強いか」
土魔法師ラインランドであろうと、全員に絶大な力が授けられた【七選魔法師】には、どこか自惚れている面があった。「自分こそ最強」という思想が、ヴィリスでさえ頭をチラつくことが少なくない。
風魔法師ルートニも、同様に自惚れが自分の身を滅したといってもよい。
「前は、仲間だったじゃないですか。不毛な争いだとは思わなかったのですか」
「前は、そう昔は、の話だ。もう過去のことは関係ない。いまや敵という位置付けにあるヴィリス、英雄の息子であるあんたをぶちのめしたいって思いが芽生えても仕方ないだろう? なんせ『無能』と信じてやまなかった相手がルートニを殺せるほど強くなっているのだからな!!」
背中を逸らし、腕を連動させ、後ろに逸らす。伸びた手の先に、周囲の砂が集まっていく。
「大地の怒りを、受け取るがいい!! 【砂地獄】」
伸ばした腕を手前に戻していき、上部へと持っていく。手はついに重なり。
砂は手の上に集まる。
「くらえ!」
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