遅咲きの最強氷魔法師〜『無能』だとパーティーを追放された英雄の息子の俺、発動時間が一日の最弱氷魔法がついに覚醒!! ハーレムを築いて無双するほうが幸せなので、今更帰ってこいだなんて『もう遅い』〜
第27話 悪の根源、ルートニに特大級の『ざまぁ』を
第27話 悪の根源、ルートニに特大級の『ざまぁ』を
ヴィリスの追放をいいように使ったルートニ。彼の行動に、ヴィリスは怒り狂いそうであった。
「どうして、あなたにはそんなことが……!!」
殴りかかりにいくヴィリス。魔法を失った彼には、それが精一杯の反逆だった。
「強くなりたい、その一心だよ。【七選魔法師】は、選ばれた存在だろう。その中でも、もっともっと上を目指し、頂点に君臨したい。そう思ってもおかしくないとは思うけどね」
ヴィリスがうまく射程を取り、殴りかかろうと拳を振るうと。
「【
右手を上に掲げ、指を弾く。
それと同時に、ヴィリスに対してボン、と風が吹きつける。
その勢いに勝てるはずもなく、ヴィリスは地面に打ち付けられる。
「どうだい? 自分の力を失った途端に、自分がめっぽう弱くなった感覚は? 能力なんてなければ、何もないただのありふれた人間に成り下がるだろう。無様」
「それは、ルートニも同じことでしょう」
「なんだ、まだやれるんだ。『無能』だった君のことなら、ここで倒れてもおかしくないと思ったけど」
「あなただって、その能力さえ失ってしまえば、何も残らないことでしょう。人の能力を略奪してまで上り詰めようとする汚い精神の持ち主には、誰も寄りつかなくなるでしょう」
「そうか、じゃあ君にも問うよ。今君の元にいる仲間は、ヴィリスに能力がなかったら、一緒についてきてくれたと思うかね」
「それは……」
「おかしいな、答えはすぐに出てくると思ったけど。君の仲間も、所詮君の能力狙いでホイホイついてきただけだろう? 金を持ったものに人が集まる構造と同じじゃないのかい? 金がなくなれば、一気に人も寄り付かなくなる」
ヴィリスは、一瞬心が揺れ動く。自分の氷魔法なんてなければ、自分は。
ただ、そんなことで揺らぐようなヴィリスではなかった。
「僕の仲間は、能力という『薄っぺらい表面』だけを見つめているようなのはいないと思っています。たとえ力がなくても、僕は生きていけると確信しています」
「力のひとつも守れない分際で、うっせえんだよ。【
指を弾くと同時に伸びた人差し指と親指を伸ばし、上に振り上がる。
「ばあーん」
指先から放たれる弾丸のような大きさの空気の塊が、ヴィリスの左腕に命中する。痛みから腕を押さえてしまう。
「口ほどにもない雑魚だね。つまんない、つまんない。ダサいね。英雄の息子なんて肩書き、恥ずかしくないのかな」
「……あんたこそさ、恥ずかしくないわけ?」
「どうした、【閃光】のフライス。よせよせ、これのどこが恥ずかしいんだ」
「人から能力を与えられた身でありながら、侮辱する言葉を投げかけて、行動も見ていられたものじゃない。あんた、それでよく生きてられるね」
「それがどうした? 自分の行動など、大した問題ではない。強さ、そう強さこそ人をはかる唯一の術ーーー力なきもの、奪われしものには何もできない!! 無価値も同然!!」
「今更どうしようもないって感じ。今更どう足掻いても『もう遅い』、手遅れだっていう感じね」
会話が交わされる間にも、ヴィリスはもがく。どうにか腕を押さえながらも立ち上がっていく。
「よくも、こんなことを……!!」
「いやいや、もう少し君には期待していたんだけどね。呆気なく吹っ飛ばされちゃってさー、つまんないね」
「ひとつだけ、きいてもいいですか」
「いいさ、負け犬の遠吠えを十分きいてから潰した方が、絶望の淵に突き落とせそうだからね!!」
ヴィリスは、この状況でもまだ打開策はあると信じていた。
些細な穴が、絶対にあると信じていた。
なぜか?
自分が英雄の息子であるから。ただそれだけだった。
【英雄パーティー】から追放されたときですら、英雄と名高い父の存在を信じ続けていた。自分には、まだできるはずだ、ここで終わるような逸材ではないのだ、と。
最後の最後で、倒れそうになっても、死にそうになっても、絶対に力が助けてくれる。打開策は、必ず見つかる。
「あなたは、本当に僕の魔力を奪いきれましたか?」
「どういうことだ? ヴィリス、君は今、魔法を使えていないじゃあ、ないのか。自分の現状を理解できないほど、君も阿呆ではないと思うんだが」
「完全に、魔力を奪い取れたとでも思っていましたか?」
「何がしたい? そんなハッタリが通用するとでも思っているのか?」
まだ、魔力が完全に吸い取られたわけではない。そんな確証はどこにもない。それでも、この言葉がルートニを惑わせられること間違いないと、思えていた。
「では、どうやって力を奪ったか。そのざっくりとした手順の説明をしてもらえれば、答えはおのずと見えてくるはずですよ」
「時間稼ぎか? 絶対にいわない」
「きっと、あなたこそ勘違いをしているはずなのです!! いいからいってみてはどうですか!!」
言葉でどうにか押し切っていくヴィリス。
「ああ、いいよ!! いってやるよ!! お前が魔法を使っているときに魔力が流れる通路を切断させてもらった!! 通路に位置付けられる、魔石の方は消失したがな!!」
ヴィリスは、ここで希望的観測から、確信へと変わった。
「ふだん、魔法を僕は左手から放ちます。右利きですから、どうも打ちづらかったんですよね」
「それがどうした? 魔法を放つ回路は遮断したはずだ」
「まだ気づいていないんですか? 右手は使ったことないので、魔力の流れはありません。魔力が流れたことなど、いっさい」
「くっ…… そういうことか!!」
「あなたは、僕が右手から魔法を使える可能性を、除外していたんです!!」
左腕を突き出すかわりに、右腕が伸びる。
これまで、魔法でいっさい使うことのなかった、利き腕の右腕が、炸裂する。
「【
体の底から込み上げてくるような、魔力の感覚。これまでのものよりも、もっともっと凄まじい力。体が、魔力の強さに興奮しつつもある。
水が勢いよく放出するかのように、猛烈なスピードでルートニに届いた氷が、一瞬で彼の体を凍らせた。
氷漬けにされたルートニは、息をする様子もなく、聖樹の痕に立ち尽くす。
「やった……」
魔法を放ってしばらくしても、右手に注入された、大量の魔力の流れによる快感は忘れられないものだった。
「おめでとう、ヴィリス」
ヴィリスは、フライスに抱きついた。
ルートニは、それからすぐに、隠し持っていた、縮小した聖樹が元に戻り、木に巻き込まれ、また聖樹となった。
炎龍のように、彼は木となったのだ。
「木の中で、一生悔い改めてください、外道人間」
ヴィリスたちを撫でる風。
それは、これまでのものよりも、心地よさは段違いだった。
成敗すべき敵を払った後のヴィリスたちは、心のつっかえが取れたようで、清々しいようだった。
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