遅咲きの最強氷魔法師〜『無能』だとパーティーを追放された英雄の息子の俺、発動時間が一日の最弱氷魔法がついに覚醒!! ハーレムを築いて無双するほうが幸せなので、今更帰ってこいだなんて『もう遅い』〜
第22話 決戦!! 【漆黒】の"剣士"ミランダ 後編ーーー『三人』のコンビネーションとアイロスの実力
第22話 決戦!! 【漆黒】の"剣士"ミランダ 後編ーーー『三人』のコンビネーションとアイロスの実力
ヴィリスは、勝利を確信していた。
【漆黒】の剣士ミランダが、いくら魔法を躱せる剣士であろうと、必ず弱点はある。
想定しない攻撃に、誰が戸惑わないというのだろうか。
剣と剣を合わせる、ヴィリスとミランダ。
「何が貴様を勝つと確信させる?」
ミランダは、焦っていた。この自分を倒すことのできる技。それが存在してしまうというのか。
「逆に、ミランダは何だと思う」
そうやって、時間を稼いでいく。どうにか、魔法を放つ気配を察知されることなく、魔力が左手に溜まっていく。
「別の魔法でも考案できたか?」
「それは……」
ヴィリスの剣の勢いが勝り、ミランダの体を後ろへともっていかせる。
「半分正解、半分不正解です。じゃあ、はじめますよ。アイロス、こっちにきて、とびきり性欲を晒け出してください!!」
「そんな、ヴィリス君に、命令されて……」
そうは言いつつも、ノリノリでアイロスは近づく。
「このエルフに、何をさせるつもりだ?」
ミランダが疑問を抱く。いっさいアイロスの情報がないミランダであるから、行動は予測不可能。
しかし、ヴィリスもアイロスの動きは想定できていない。
それこそが狙いだった。
緻密な計算や行動に歪みを生じさせる、不確定な要素を意図的に組み込もうとしている。
この勝負はアイロスの行動に委ねているところが大きい。今は、仲間を信じないといけない戦いだった。
可能性があるなら、リスクを負ってでも行動しないといけない。
ようやく、ヴィリスは秘密裏に発動していた魔法の、感覚を掴む。
左手を前方に突き出し、拳を開く。
「【氷雪嵐ブリザード】!!【氷柱・追尾】!!」
「同時詠唱だと? そうか、そちらはすべてを賭けるつもりなのか!! 面白い!!」
ミランダはつい驚いてしまう。同時詠唱など、魔法師のなす技でも、かなり難易度が高い。
使えるものが少ないということではないが、実際に戦闘で放つものは、ほぼいない。
膨大な魔力と集中力を要するものであり、失敗などしたら命取りだからである。魔法師は、戦いでは無理をしない。安全と確信したものを中心に撃つ。
ゆえに、ヴィリスやフライスの攻撃は、いつも似通ったものだったともいっていい。
「そんな……何をするつもりなの」
敗北覚悟で使う、無茶な技。それをあえて使う理由とは。
「いや、【氷雪嵐ブリザード】だと? 攻撃型の魔法ではなく?」
左手から広がる、銀世界。視界は【氷雪嵐】によって遮られてしまう。
わずかながら風が起き、混ざってる雪が体を打ちつける。
「そんなことをして、貴様。私の剣が魔法を斬らんとすることを忘れたか」
ヴィリスにとっては、前方から聞こえる、ミランダの声。残念ながら、この場所にいる誰にも、各人の居場所を把握することはほぼ不可能であった。
「これでは自分にも不利な攻撃じゃないのか」
「いまだ、アイロス。こっちまで来て、欲求をぶちまけてください」
ただ、声がどこから来ているかは、大まか把握することはできる。
アイロスは、ヴィリスの声の方向へと向かう。
「私の全部、見て…… じっくり、ねっとり」
靴が地面を蹴っている様子は伝わる。
「無意味なことを! こんな霧など」
勢いよくミランダが、空気を一閃する。
剣の先から、閉ざされていた世界は斬り込まれていく。
明瞭な光景が、ミランダの目には映る。
「私の、あられのない姿を、見てください、ヴィリス」
アイロスは、視界のあやふやな中でも、服を完全に脱げていた。
それほど、自分の欲求を発散するための方法は開拓済みであった。
目を瞑っていても、彼女はものの数秒で服を脱ぐことは可能なのだ。
「あれ? あなたは」
「!!!!」
アイロスが剣を振ったのち。目に入るのは、布ひとつ纏わない、アイロスの姿。まだ【氷雪嵐ブリザード】によって視界があやふやであるため、はっきりと、ミランダが体を拝むことはなかったが。
なんの前触れも無く、女性の裸体を見たミランダは体が固まってしまう。
「何の真似だ?」
そんなことをいっている間にも、【氷柱・追尾】がミランダの方へ向かってくる。
進路は、アイロスを経由するものだった。そのまま向かえば、アイロスごと氷柱に突き刺さる。
「そうか、こうして仲間を犠牲にして倒す策略ということか。『無能』ひとり差し出したところで、何の問題もないからいいだろう、そういうことか」
「いや、違います。アイロス、【魅惑魔法】を使ってください!!」
「あぁっあっ。もう、オトコの人にすべてを晒すなんて、もう痺れて麻痺しちゃうっ…… 強力な【魅惑魔法】、激しく撃てそう……!!」
【魅惑魔法】。それは、聖なる(性なる)欲求の力で、魔法を目の前で消滅させてしまう力。
次々とくる【氷柱・追尾】は打ち砕かれていく。氷柱の破片が飛び散り、ミランダの視界を邪魔していく。
「これじゃあ、まともに剣も……」
驚きのあまり地面に倒れ込んでしまったミランダ。力が入らず、立つことができない。あられもない姿を見た衝撃、そして想定外の攻撃のために。
「そう。この隙を、大きな隙を待っていたんです!!」
ヴィリスは、剣を持って近づく。
「やめろ、この【漆黒】を斬るつもりか?」
「それはそうです。アイロスを馬鹿にし、調子に乗って僕らを苛立たせてきた敵。決めさせてもらわないと気が済みません!!」
「負けを認めるもの……」
地面に横たわるミランダを一刀両断しようとする直前。
ヴィリスは持ち手を入れ替える。
刃の方を握り、柄の部分を先端とする。
そして。
柄でミランダの首を狙い、強打させる。
「うっっ!!」
一瞬の呻き声を後に、ミランダは気絶した。
「勝ったよ、ヴィリス、アイロス!!」
勝利を収めた。これはまさに、全員で勝ち取った勝利であった。
だが、体にかかった負荷は相当なもの。ギリギリの勝負を強いられたためか。
「もう、僕も限界なので、後で一緒に、起こして、くだ」
膨大な魔力を使ったことにより、ミランダだけでなくヴィリスも気絶してしまった。
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