第2話 好きすぎるんですがこれって病気ですか?

今日の密着度は、尋常じゃありません。

どうしたんですか。


「朋樹、サン?」

「……」


返事の代わりに彼は、ぎゅうっと抱きしめる腕に力を入れた。

返事をしないのは、私が“さん”をつけてしまったから。


「と、とも、き?」

「何」


ぶっきら棒な言葉が返ってくる。


「どう、したの?」


ですか……という敬語は、心の中でつけた。いつもより温かく感じる腕に掴まっていては逃げ出すもなにも、下手に動くより相手の動きを見てどう対応するのが一番かを見極めなければならない。


「花羽」


彼は何を思ったのか、いきなり手を離して横に座った。

クエスチョンマークを浮かべていると、


「お姉さん座りで……手を、こう前について」


と何やらジェスチャーしながら私に何かポーズをしろという。わけもわからずに彼の言うままそのポーズをした。

お姉さん座り、右手は髪を耳に掛ける状態で止めたまま、左手は左足の太ももの横に手を置いて……。

少し首をかしげながら、上目遣い。


「朋、樹? 何をさせたいの?」

「いや? 何となく、萌えるかなぁって」


それだけのためにそんなことさせないで下さい。アイドルがカメラマンに指示されてるみたいじゃないですか。


「もう、いい?」

「だめっ! 花羽、記念写真とってないから!」


わけがわからない理由で怒こられた。って記念写真?

と思ったときにはもう遅くて、彼は携帯を取り出してカシャカシャと写真を撮っていた。


「え、ちょっと!」

「花羽!」

「は、はい!」


携帯を取り上げようと動こうとすると、彼は静止をかけてきた。

とっさの彼の言葉に思わず私は固まってしまう。


「かわい」

「……」

「花羽っ! その顔も好き、すっごくすき!」

「って、またカメラ!」

「ポーズ云々じゃなくて、花羽が好き! どうしよう、好きすぎるんだけど……これって病気かな!?」


……敵わないです。


「恋の病ですね、朋樹……サン……ぁ」

「……花羽ァ……?」

「ひっ、」


そ、そんな怒った顔したって……恐くなんて……恐い。

私は後ずさって逃げようとした。


「どうなるか、判ってるよねー?」

「え、あ……今日は、駄目だよ! 着替え持って来てない、し」

「服なんてどうにでもなる出しょー? 花羽ちゃん」


彼のにっこりが恐い。

恐すぎ……って、私の後ろには壁。逃げ場、なし。


「す、好きならさ、穏便に……」

「好きな子ほど苛めたい……っていうよね?」

「ほどほどに! なにとぞ、ほどほどに!!」


彼は、楽しそうに身体を寄せてきた。



【好きすぎるんですがこれって病気ですか?】

(後で分かったけど、朋樹さんは風邪だった)

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