第11話 小石川

 その言葉の後、エミは航治に質問をしてこなくなった。折口も、広尾からの車中からひきつづき、言葉少なだった。

 航治は二人の様子に異和感を抱いたが、台風上陸の時間が刻々と近づいていることへの焦りがもっぱら頭を支配していたこともあり、とりたてて話しかけることもなく、自らも無言で脚を運びつづけた。

 小石川に入ると、細々とした低い、築年数の経っていそうな木造の建物が目に付くようになった。沿道には風に吹き飛ばされ割れた植木鉢がいくつも散乱していた。

 ふと前を見た航治は、折口の様子の大きな変化に気づいた。

 頭全体を隠すかのように帽子を深く被り、下を向き、首を肩に埋めるようにして歩いている。運ぶ脚も心なしか、さっきよりも速くなっているようだ。

 航治はようやく理解しはじめた。この男はもしかして、過去に自分を知っていた者が住む場所へ行こうとしているのではないか。顔を隠しているのは、かつての知人たちに、自分の姿を気取られるのを怖れているからなのではないか。

 今更ながら航治は、自分が折口の個人的なことについて、何一つと言っていいほど知らないことに気づく。彼は一体、どうして路上生活者になったのだろう。そして辻という、あのドライバーとの関係はどんなものなのだろう。

 とある路地に入ったところで、折口は立ち止まった。その視線の先には、一軒の白壁の二階建て家屋があった。

「折口さん」航治は声をかけた。

「あ、ああ」と返事をすると、折口はぶるり、と身体を震わし、そこへ向かって歩きはじめた。

 家の前では、四十代前後らしき男が一人、厚手の合羽を着て、脇目もふらず門の前に重そうな土嚢どのうを積み重ねていた。

 門の向こう、玉砂利の敷かれた庭には、広くて深い水溜まりがいくつもできていて、その水は激しく降る雨によって、絶え間なく攪拌かくはんされていた。

 折口は道に立ち、少しの間それらを見つめていたが、意を決したように、ごくりと一つ唾を飲み込むと、男に向かって声をかけた。

「よ、よう、ヒロユキ」

 男が顔を上げた。一瞬浮かんだ驚きの表情が、すぐさま冷ややかなものに変わった。

 男は立ちあがると、所在なげに佇んでいる折口に向かって、無慈悲に言い放った。

「今頃何しに来た? 親父」

 折口は卑屈に顔を歪めると、息子に向かって、おずおずと言った。

「ああ、ちょっと、お願いがあってな」

「お願い?」

 男は折口が発した言葉の響きを確かめるように、繰り返した。

「おう」

 折口は頷き、気まずさから逃れるように目の前の土嚢を指さした。

「それはそうと、お前、この土嚢、随分上手く積めているじゃないか」

「あんたにそんな口ぶりで言われても、全然嬉しくないな」

 男の口調はあくまでも硬く、視線は刺すようだった。

 航治は男の顔を見て、折口の顔を見た。二人の顔には幾つかの共通点があり、それと同じくらいの相違点があった。

 男に最も特徴的なのは、瞳の奥にある理知的な光だった。それは折口の眼にもあって、航治に、彼がかつて知的労働に従事する人間だったであろうことを確信させた。

「何の用だ。二年ぶりに姿を現わしたと思ったら、こんな日に。それともこんな日だったら、親父面ができるんじゃないかと算段してやって来たのか?」

「いや、違うんだ」折口はちら、と航治に目を走らせると、「ちょっと、話せば長くなる理由があってな」

 男は、航治とエミに遠慮のない視線を走らせていたが、やがて顎をしゃくり、

「近所の人に見られたら恥だ。中に入ってくれ。ただし、十五分で用を済ませて出ていくこと」


 男は合羽を脱ぐと、何も言わず玄関をあがり、居間らしき部屋へと歩いていき、上座にどっかと腰をおろした。折口は遠慮がちに靴を脱ぎ、その後に続き、縮こまるようにして下座に座った。

 航治は家にはあがらず、エミとともに上がり框に腰を掛け、二人の様子をうかがった。

 折口親子の張詰めた空気に呑まれてか、それとも最前からのだんまりの延長なのか、エミも航治と同様に一言も口をきかず、二人の話を聞いていた。

 最初のうち話はもっぱら、折口が男に対して近況を訊ね、男が冷淡にそれに答えるという体裁で進んだ。

 その内容からどうやら折口には、この息子以外に娘がいること。娘は半年前に結婚してこの家を出て行き、現在は息子一人がこの家で暮らしているらしいことがわかった。

 折口は、自分の知らぬ間に娘が結婚し、家を去ってしまっていたという事実に驚き、落胆したようだった。だが何とか気持ちを立て直したらしく、ようやく、気弱げにだが、話の本題を切り出した。

「――そういうわけで、悪いんだが、車を貸して欲しいんだ。友達を救いたいっていう、この子の気持ちに免じて」

 折口が話を終えた後、しばらくの間、男は腕を胸の前で組み、黙りこくっていた。折口はその前で、いかにも居心地悪そうに背を丸め、あぐらをかいた膝の先で、貧乏揺すりを続けていた。

 男が口を開いた。

「変わってねぇな」

「えっ?」

「あんた、相変わらず、全然変わってねぇなって言ってるんだよ」

 言うと同時に、だん、と男が掌を座卓の上に振り下ろした。折口が反射的に背筋を伸ばした。男は怒気に満ちた声で続けた。

「二年ぶりにここにやって来たかと思ったら、いきなり車を貸してくれって? しかもどこのどいつか知らない子供のために? あんた、ふざけるのもたいがいにしろよ。自分が俺たち家族に何をしたのか、まだ理解できてないのか? あんたはな、仕事にかこつけて、俺たち兄妹と、病気がちのお袋を、定年まで何十年にもわたって放置しやがった。あげく、お袋の最後の頼みの、『別れてくれ』っていう申し出さえ受け容れず、ある日勝手に、何の断りもなく、この家から出て行っちまいやがったんだ」

「あれは、母さんの葬式のときは、お前たちにどんどん詰め寄られて、俺もどうしたらいいのかわからなくなっちまって」

「俺たちのせいだって言いたいのか?」

「そういうわけじゃ」

「言い訳するな!」再び男が座卓を叩いた。さっきよりも一段と大きな音が部屋を震わせた。男は唇を歪ませ言った。

「あんた、見たところ随分、自由な身分を満喫してたみたいじゃないか。さぞかし楽しかったろう。今までの自分を全部リセットできて。お袋も、俺たちのことも忘れていられて」

「違う、俺は一日だって、お前たちと母さんのことを忘れたことは」

「嘘をつけ」男がまたも遮った。

「俺にはわかる。あんたには正面から俺たちと向き合う勇気も、誠意もなかったんだ。只ただ、後ろめたい気持ちがあるだけで、そこから逃げようっていう発想しか浮かばなかった。今回だってどうせ、その餓鬼の望みにかこつけて、自分のほとぼりが冷めたかどうか、様子をうかがうためにやって来たんだろう?だったらお生憎あいにくだ。俺は絶対、あんたのことを許さない。死ぬまで許さない。あんた、俺があんたについてどう思っているか知ってるか?」

「い、いや」

「あんた、死ねばよかったんだ。お袋の代わりに、あんたが死んじまえばよかったんだ」

 男は立ちあがると、折口に向かって投げつけるように言った。

「ここにあんたの居場所はない。お袋に線香をあげるのも許さない。ともかく五分以内にここから出ていけ。そして二度とやって来るな」

 男は荒々しく玄関まで来ると、航治たちを蹴散らすようにして三和土に降りた。それから真っ直ぐに門の方へと歩いていくと、再び土嚢を積み上げはじめた。


 航治は駆けだした。

 ザックを背負い、まっしぐらに門へ向かうと、男の横をすり抜け、土嚢をまたぎ越え、路地へと飛び出し、大通りへと走った。

 大通りに出る角でようやく立ち止まると、どっと息を吐き出し、ふるえる拳を握りしめ、きつく眼を閉じた。そして一心に「まゆ」を身体の周りに形作ろうとした。

 背後から声がした。

「何逃げてんのよ」

 航治は眼を開けて振り向く。エミだった。射抜くような視線と、怒気を含んだ表情で、真後ろに立っていた。

「何にも言わないで、ひとりで脱走してるんじゃないわよ」

「君には、わからないよ。僕は、ああいう場面が駄目なんだ。トラウマなんだよ」

「どんなトラウマよ」

「暴力さ。言葉の、態度の。あの息子さん、折口さんの言おうとすることを全然聞こうともしないで、あんなひどい言葉を一方的に投げつけて」

「へえ」エミが嘲るように言った。

「じゃあ、あんたは折口の身の上話をもう聞いたの?」

「それは、まだ聞いていないよ。でも少なくとも、折口さんが話そうとしたなら、聞いてたと思うよ」

「だから、あの息子みたいに、相手の話を聞こうともしないで、一方的に非難ばかりするのは、暴力だと?」

「そうだよ。僕は、そういう場面を見ていられないんだ」

「ふうん」

 エミが大きく鼻を鳴らした。

「なんだよ。何がおかしいんだよ」

「あんたが、あんまりに自分に対してご都合で、身勝手だからよ」

「なんだって」

「トラウマだかなんだか知らないけれどね、要するにあんたは、ただ嫌なことから逃げているだけの、事なかれ人間なのよ。自分が傷つきたくないから。嫌なことを思い出したくないからって言って」

「なんだよ。自分を大切にして、何が悪いっていうんだよ。だいいち君こそ一番の自分勝手な人間じゃないか」

「自分勝手なのは認めてもいいわ。でもね、あたしはあんたみたいな弱虫とは違う」

「弱虫、だって?」

「何? あたし何かあんたの心の地雷を踏んじゃった?」

「僕は弱虫なんかじゃない。自分を変えるって、強くなるって、決めた人間なんだ。ただ、今は、休んで余力をためているだけなんだ」

「ふうん。ものは言いようね。怖くて逃げ出しただけのくせに、『余力をためている』なんて。随分格好つけるじゃない」

「なんとでも言えよ」

 へええ、と嘲るようにエミが言った。

「今のあんたの台詞を聞いたら折口はさぞかしがっかりするでしょうね」

「どういう意味だよ」

「来なさい。折口があんたのこと、どう思ってるか聞こうじゃないの」


「悪いけど、通らせてもらうわよ」そう折口の息子に言って、エミは航治を連れて土嚢をまたぎ越え、半ば池と化した庭をじゃぶじゃぶと音を立て通り抜け、玄関に入った。

 そこでは折口が、虚ろな眼で中空を見つめつつ、背を丸め、上がり框に腰掛けていた。

 エミは航治を横に連れたまま、その前に立つと、開口一番、言い放った。

「折口。あんたなんで息子に言い返さないの」

 航治は横からエミの顔を見る。彼女の眼差しは折口を射抜くようだった。卑屈な声音で折口が言った。

「あ、ああ、姉ちゃん、どうしたんだい?」

「ちゃんと人の話を聞きなさいよ!」エミが怒鳴った。瞬時にして、折口の、そして航治の背筋が伸びた。

「あのさ、折口、あんたにも、何か事情があったんでしょう? だからビクつきながらも、ここに帰って来たんでしょう? なら、なんで何も言い返さなかったのよ!」

 まくし立てるエミに、航治は言った。

「止めろよ。折口さんと、息子さんの問題だろう」

「うるさい、黙れ、馬鹿航治! あたしはこの爺さんと話しをしてるのよ」

 航治を一喝すると、エミは再び折口に向き直り、つづけた。

「あたしはね、むかつくのよ。『居場所はない』なんて言われっぱなしで、一方的に責められてる奴を見ると」

「なぜだよ。どうして君がそんなに怒らなきゃならないんだよ」

 エミは航治を睨むと、大きく息を吐き、言った。

「馬鹿な航治。あんたって、他人の話の腰を折るのが本当に好きね。じゃあいいわよ。教えてあげる。車の中で話したでしょう? 臭くって家族の鼻つまみ者になる奴の話」

「ああ、覚えているよ」

「あれ、あたしのことだよ」

「え?」

 エミは大きく息を吸うと言った。

「もちろん『変な臭い』はただの喩えよ。でも、家族全員に毒ガエルみたいに疎まれて、家に居場所なくした奴のことは実話。あれは、あたしの話なのよ。あたしはね、あんたと同じ『良い子』だった。『ここで大人しく待ってなさい』って言われたら、二時間でも、三時間でもじっと同じ場所で待ってるような、従順な子だった。でもある日、嫌になった。疲れたの。だからあたしは、何から何まで、親の言いつけの反対のことをやることにした。学校でも、家でも。そしたら突然、食卓からあたしの席が消えたんだ」

「消えた? 席が?」

「ある夕方、食事を食べにダイニングに行った。そこには、親の椅子も、弟の椅子もあった。だけれどあたしの分だけ、椅子がなくなっていたんだ。そのときから、あたしは思うようになった。嫌われても、呪われても絶対負けない。そんな奴らにはこっちから、『お前らなんて要らない』って言葉叩きつけて、どこまでもしぶとく生きつづけてやるって」

 エミは折口へと視線を戻すと、言った。

「だからあたしは死ぬほど嫌いなのよ。一方的に責められるばっかりで、何も言い返さない腰抜け野郎を見るのが。あんた、折口。どうして何も言わないのさ。何か魂胆があって、航治の目的にかこつけて、わざわざここへ戻ってきたんでしょ? だったら、それを息子に向かってはっきり言えばいいじゃないか。ええ? そうでしょう!」

 沈黙が降りた。

 家の外からは、機関銃のように雨滴が庭石を叩く音と、狂ったように風が空を搔き回す音とが、絶え間なく響いていた。

 折口は依然としてうなだれたまま、言った。

「無理だよ、姉ちゃん。ヒロユキ――息子は頑固だ。帰れって言い放ったからにはもう俺の話を聞こうなんてしないさ」

 そしてまた折口は口を噤んだ。

 航治は背後を振り返った。門の前では相変わらずせっせと土嚢をつくり、積み上げつづけるヒロユキの姿があった。

 航治は外へ出ると、庭を横切って彼の目の前に立った。航治はしばらく目を伏せていたが、思い切って顔を上げると、声を発した。

「あの、すいません」

 ヒロユキは無言で剣呑な視線を航治に向けた。思わず口ごもりそうになったが、航治は言葉をつづけた。

「どうかお願いです。もう一度折口さんと話をしてください」

「そんな必要はない」

 ヒロユキは言下に言い放った。

「部外者の君には関係ないことだ。あんな男とつるんでいる暇があったら、さっさと家に帰りなさい」

「それは、できません」

「できません? なぜだ。どうあってもあの男を利用したい理由でもあるのか」

「それもあります。でも、僕は、あなたたちが親子である以上、きちんと互いの言い分を聞く必要があると思うんです」

「ほう。随分おせっかいだな。だがこれはうちの問題だ。君とはまったく無関係だ。ともかく、悪いことは言わないから、タクシーでも拾って家へと帰ることだな」

「嫌です! ともかく、あっちに行って、折口さんと話をしてください。お願いですから」

 航治はヒロユキの腕をつかみ、ぐいと引っ張った。すぐにヒロユキは航治の手を振りほどいた。再び航治はヒロユキを掴み、さっきよりも強い力で引いた。体勢を崩しそうになったヒロユキは、「何をするんだ、止めなさい」と言いながら航治の身体を突き飛ばした。航治は水たまりの中に倒れ込んだ。

 だが航治は諦めなかった。立ち上がるとまたヒロユキの身体を掴み、玄関へと引いた。ヒロユキは激した声で言った。

「止めろと言っているだろう!」

「止めません! あなたが折口さんと向かい合うまで、何度でも繰り返します」

 呻きながら、ヒロユキは航治を突き飛ばした。航治は立ち上がり、同じやりとりが数度繰り返された。

 それでもよろつきながら立ち上がった航治に、ヒロユキは肩で息をしながら言った。

「なんて強情なんだ。いい加減に諦めろ」

「諦め、ません」

 航治は脚をもつれさせながら、ヒロユキに掴みかかっていった。ヒロユキはそれを身体の正面で受けとめると、溜息まじりに言った。

「しかたがない子だ。ほんの少しだけだぞ」

 そう言うと、ヒロユキは航治を横にのけ、玄関に向かって歩きはじめた。航治も全身ずぶ濡れのまま、その後につづいた。

 折口は玄関先で立ち上がり、驚いた表情でヒロユキを迎えた。エミは靴を脱いで玄関にあがると、折口のちょうど後ろに座り込んだ。

 ヒロユキは眉間に深々と溝をつくりながら、折口に言った。

「この子がどうしてもと言うから、お前の話を聞きに来た。もう五分だけ時間をやるから、とっととあんたの事情とやらを説明しろ」

「わ、わかった。ありがとう」

 折口は頷いた。

「今から言うことは、俺の勝手な理屈だ。お前には許し難いことかもしれない。話している最中に殴られても仕方ないことかもしれない。だがそれでも、俺はお前に話したくて、ここまでやって来たんだ。だからお願いだ。聞いてくれないか」

 ヒロユキは腕を組んだままの姿勢で、眼を背け、荒々しく息を吐いた。折口は話しはじめた。

「戦後まもなくの年に、カスリーンという台風が関東にやって来た。カスリーンはまだ未整備だった関東の河川を氾濫させ、大きな水害をあちこちにもたらした。そしてその犠牲者の中には、俺のお袋、お前にとっての祖母ばあさんがいた。俺は、川に母親を奪われたんだ。俺は、水害を憎んだ。そしてそれ以来、川と闘うことこそが、自分のつとめだと思うようになった。国交省に入ったのも、それが理由だ。今となっては、身勝手な理屈だったとわかっている。だが昔の俺は、自分が仕事に没頭することこそが、お前たち家族を護ることだと、本気で思っていたんだ」

「それはもう何度も聞かされたことさ」

「そうか。だがもう少し話を聞いてくれ。俺が自分の間違いに気づいたのは、母さんが死んで、全ての取り返しがつかなくなっちまってからのことだった。俺は逃げた。お前たちと、母さんと、そしてお前たちに何もしてこなかった自分自身から、逃げつづけたんだ。だが今日、俺はこの子に遭い、話を聞いた。この子は逃げていなかった。大切な人を助けるため、今まで閉じ籠もっていた檻を自分から出て、身ひとつで、行動を起こそうとしていた。俺は今までの自分を恥じた。そして思ったんだ。この子と一緒に行くことで、お前たちと向き合わずにきた自分に『落とし前』をつけることができるんじゃないかって。これが、自分勝手で、無茶苦茶な理屈なのはわかっている。だが俺は――」

 そのときだった。いきなりヒロユキが乱暴に折口の襟を掴むと、顔面をしたたか殴りつけた。そして荒い息のまま、呆然と見ている航治とエミの方に向き直ると、ポケットからキーを取り出し、航治の掌にぐい、とねじ込むように渡した。

 そして再び、外に積み上げられた土嚢の方へと、肩を怒らせ戻っていった。

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