アフタヌーンティー・ディストピア
お題【ディストピア】をテーマにした小説を1時間で完成させる。
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本来なら
僕がここに居られる理由は
懲罰…ということはないだろう。
それならばわざわざ居住区に招く理由がない。
心当たりはないでもない。
目的は結社ごとに様々だ。
管理AIへの反逆。超能力の訓練。管理都市からの脱却。
わざわざ
「入りたまえ。
部屋の中からスピーカ越しの声が聞こえ個室の扉が開く。
例え気に入らない組織であろうと、
密告しようにも、誰が
管理AIも自身の選定した
この扉の先にいる
怖がりながら僕は扉をくぐる。
迎えてくれたのは、青い髪の女性だった。
「やあやあ、ご機嫌よう。
「ありません、
「そうか。ならば名前を与えよう。221-B。これから私は君をジョンと呼ぶ。仲間にもそう伝えておく。君を221-Bでなくジョンと呼ぶものがいればそれは私たちと同じ
「はい。私の識別コードはこれからも221-Bですが、結社の中ではジョン。理解できます」
「よろしい。私の名前はシャーロット。結社における君の直属の上司となる者だ。」
「はい。理解しました。」
「よし、では私たちの
一体、いかなる結社なのか。ゴクリと僕は喉を鳴らす。
「秘密結社ティーパーティの活動目的は『アフタヌーンティーの普及』だ」
「アフ…失礼ながら、存じ上げません。それはいかなるものなのでしょうか?」
「旧世界での風習さ。紅茶と呼ばれる嗜好飲料と共に食事を楽しむ」
「
「本当に差はないのかね?
「差は…差はあります」
僕にはその差がわかる。
「管理AIの毎日の支給食品を口にした時…異なる感覚があります。私には形容する言葉が与えられていませんが」
「やはり、見立て通りだった。私は監視ネットワークに目を走らせて味覚を持った個体を探していたのさ」
味覚?
「規格化市民からは失われた旧世界人の第五感覚。食事の差異を知ることができる知覚機能。先祖帰りとして、あるいは突然変異の遺伝子異常として君や私が得ている感覚のことだよ」
ずっと覚えていた違和感。
他の
隠してきた自分の感覚異常の正体。
それが味覚…。
「私たちの目的はね、味覚保持者を集めて、味の感覚を共有することにある。他の人間には分からない、食事の差異について語り合える仲間を探している。君には味覚がある。だが、語彙がない。これから私と共に週末は午後の紅茶を楽しむんだ。そして、味覚の名前を覚えるのが君の最初の課題だよ」
そう言って
そして四角い塊を溶かし、僕の方へと差し伸べた。
「これが『甘い』という味だよ」
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