お金でお金を買う時代

時は遥か未来!

日本には3つの大きな変化が起こっていた!


1つ目の変化は『現金の消滅』

日本円の貨幣流通量は0に等しくなり、ほぼ全ての日本人は現金を所持しないようになった。

どこへ行っても電子決済が主流となり、現金を仮に持っていても使える場所がない世界になったのだ。使える場所がないため現金での買い物を拒否する店が増え、使える場所が減っていくサイクルが回り切り、通貨としての現金は死滅した。

それに伴い日本銀行も現金を回収し流通量を調整。

物理的な貨幣の貯蔵をするスペースの土地代などが無駄であると国会の議題に上がり、最終的に貨幣は破棄され現金の現存量そのものがほぼ皆無となった。


2つ目の変化は『商品価値のギャップ』

例えばここに100円の商品Aがあるとしよう。

この商品Aの類似品であり、性能がいくらか落ちる商品A´がある。

圧倒的な商品流通量の安定化により商品Aも商品A´も簡単に手に入るようになると、需要と供給のバランスが崩れる。

商品AとA´ではAを欲しがる人の方が多くなり品薄になる。

Aは価格が高騰し、500円になる。

A´は欲しがる人が減り価格は一気に下がる。

そして電子決済がこの価格下落を加速させる。

銭の概念を日常の決済で利用できるようになると物品に「1円以下の値」をつけることができるようになったのだ。

A´の値段が1銭までさがるようになる。

こう言った価格変動は供給量の変化により歯止めがかかるという古典経済の理屈は生産ラインの超安定化と価格崩壊によってセオリーごと打ち崩された。

原材料の素材ギャップが完成した商品の価格ギャップに反映されるようになり、

「少しでもいいもの」は超高級品になり、「少しでも悪いもの」は超安価となった。


3つ目の変化は「圧倒的な格差社会」

価格ギャップによる変化は給料の格差を生み「円」を主体として取引する富裕層と「銭」で取引を行う貧困層に分かれた。

格差は格差を生み、貧困層は貧困層で集い、富裕層は富裕層で集う。

経済圏は分断された。


ある時、一人の貧困経済圏の男が古文書を漁っていると、1枚の紙幣が出てきた。

ヘソクリとして隠された千円札である。


千円札…!

銭経済圏の貧民にとってこれは莫大な価値を持つ!

単純に千円として使えるだけではない。

円経済圏の高等市民には貨幣コレクターが存在する。

彼らはほぼ現存しなくなった「旧紙幣」に対しては莫大な「円」を支払う用意がある。

千円札はもはや千円どころではなくなっているのだ!


男はしばし千円札をながめたが。

現金と言う概念を理解できずに栞やチラシだと思い、

それが「金」だと気づかないまま元の本に挟んで脇に置いた。


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本日の課題:【千円札】をテーマにした小説を1時間で完成させる

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