第6話 独り占め
そんなあたしに元気をくれたのは、イエンでした。あたしは、席に一人座って、頬杖を突きながら、じっと静かに考えることが多くなっていました。そんなあたしに、彼は近づいてきて、あたしの名前を優しく呼びました。
「メロ奈」
「あ、イエン」
「大丈夫か? なにか悩み事でもあるのか?」
「大丈夫だよ、大丈夫!」
「嘘つくなって」
「っ!! どうして……」
「いいから、話してみろよ。俺、力になりたいからさ」
「……ありがとう。あのね、実は……」
あたしは、心の内を彼に話しました。彼は共感をしてくれ、またアドバイスをくれました。話を聞いてくれたことももちろんですが、あたしは、そうやって彼を一瞬の間でも、独り占めしていたことが嬉しかったのです。彼があたしのことを考えてくれていると思うと、明かりがポッと灯ったかのように心が温かくなるのでした。あたしは、イエンとこのようにして話す機会を持ったことで、さらに深い関係になることが出来たように感じました。イエンと話した後、あたしの悩みは軽減し、あたしは少し元気と自信を取り戻したのでした。
庭の花を見ると、すこし前までしおれていたあの花は、少し元気を取り戻したように見えました。茎は少しだけ、元に戻って、花弁も少しだけ上を向いていました。その花は、日光に照らされていて、キラキラと輝いているように見えたのでした。
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