第110話 夢を追うもの笑うもの37
俺と英美里の模擬戦に決着が着き、これで第一回戦を勝ち上がった三人が決定した。
Aブロック勝者はエルフルズリーダー、美帆。
Bブロック勝者は研究施設所属インテリジェンスデビル、博士。
Cブロック勝者は我が家の家事責任者メイドラキュラ、英美里。
俺的には英美里がこの中では最強だと思っているが、試合はやってみなければどうなるか分からない。
「じゃあ……準々決勝は勝ち上がった三人でクジを引いて貰ってシードを決めようか!」
準々決勝は公平に勝ち上がった三人でクジを引いて貰って戦う順番を決めて、シードを一人決める事にした。
紙に番号を書いて適当にあみだクジを作り、リーダーから順番に好きな場所を選んでもらった。
「良し!これで戦う相手は決まったな!……準々決勝一回戦目は!博士VS英美里!両者は準備が出来次第、スタート位置に着いてくれ!」
リーダーはシード権を獲得したのでこの試合の勝者と対戦してもらう事になった。
英美里も博士も準備は整っているようで、スタート位置に着いた。
「それでは!試合開始ぃ!」
「様子見は致しません!」
「ムリゲー……」
英美里が開幕と同時に博士と距離を一気に詰めようと前方へ突っ込んでいく。
博士は助手ちゃん戦の時とは違い、距離を離す為にバックステップ。
「……グラビティ」
博士がバックステップと同時に闇魔法を放ったのか、英美里が一旦停止して影に潜った。
博士の闇魔法は俺には何をしているかがさっぱり理解出来ないので、解説役にベルを呼ぶ。
「ベル!何が起きてる?」
「はいマスター!博士が闇魔法を使って英美里を圧し潰そうとしてますね!闇魔法は見えないのが厄介な所ですが、魔力を感じ取れる者にはバレバレですから、ああして英美里みたいに避けれられない事も無いですね!」
博士の背後に現れた英美里が影を纏った拳で殴り掛かる。
「中々やりますね!」
「サスガニ?」
背後からの奇襲を受けた博士は背後を確認することも無く腕を背後に回して英美里からの攻撃を受けた。
そこから更に腕を振り回し、英美里を軽く吹き飛ばした後に体を反転させて英美里と再び相対した。
「ふむ……闇魔法とはこんなにも便利な魔法でしたか」
「……!そうなんです!闇魔法と云うのは消費魔力が多いという点さえ克服出来ればとても便利でとても優れた属性魔法なんです!攻撃にも防御にもどちらにも使えますが、特に空間に干渉する事の出来る闇魔法は防御面にとても優れていて、生半可な攻撃ではビクともしません!熟練していけば消費魔力も多少は抑える事も出来ます!ただ、どうしても相性というのは存在していまして光魔法とはとても相性が良くないんです!光魔法は闇魔法とは反属性の関係に当たるのですが、光魔法と闇魔法がぶつかりあった時は両方共がお互いの魔法を打ち消す比率が高いんです!闇魔法と火魔法がぶつかりあった時は火魔法に込めた魔力量が多くないと絶対に闇魔法の防禦は崩せません!これは光魔法と火魔法でも一緒です!ですが光魔法と闇魔法は込めた魔力量が同量であればお互いに打ち消し合う事が可能になるんです!不思議ですよね!他の属性には強く、光属性とは互角の関係!それが闇魔法です!ですので闇魔法の防禦を崩すには光魔法であれば同量の魔力、他の属性魔法なら大体1,2倍程度の魔力が必要になります!しかし!闇魔法はその性質上使用魔力量が多いのです!ですがそれは理に適っているのです!闇魔法は他の属性魔法に比べて魔力を込めやすいという特性もあるのです!これは戦闘面において非常に有効です!火魔法に1000の魔力を込めるのに掛かる時間が1秒だとすれば闇魔法では大体半分の時間で済むのです!これ程までに優れた魔法が他にありますか!いや!無い!私は自分の得意な属性が闇魔法で本当に良かったです!闇魔法と光魔法は他の属性魔法よりも使用出来る者が少ないので尚更嬉しい事ですね!」
突如として博士のスイッチが入って饒舌モードになったのだが、戦闘中にも関わらず喋り倒すその姿には呆れと尊敬の念を送りたいと思う。
「とても貴重なお話ありがとう……でも、戦闘中はもう辞めてね?次からは容赦なく攻撃するからね?」
黙って博士の話を聞いていた英美里が博士に優しく注意してから試合は再開された。
「スミマセン……」
「影人形!」
仕切り直した直後、英美里が俺の試合の時に使った影人形を使った。
俺の時には三体の影人形だけだったが今回はその比じゃない数の影人形が現れた。
「『『『さぁ、これが今の私の限界……64体の影人形による攻撃を自慢の闇魔法で受けきってみせて!』』』」
「コレハムリ……」
そこからは本当に英美里が博士を圧倒し、蹂躙した。
総数64体の影人形から放たれる魔法と打撃の連打、袋叩きとはこの事だろう。
途中で反撃に出た博士だったが、数の暴力には勝てずに闇魔法も英美里の桁違いの魔力量による暴力で打ち消されてしまった。
最初こそ博士も中々やると思っていたのだが、蓋を開けて見れば英美里の圧倒的な勝利で終わった。
「ふぅ……流石に少し疲れましたね。博士もお疲れ様、歩ける?」
「はひ!歩けます!だいじょぶです!おつかれさまでした!」
「勝者!英美里!」
あの博士が英美里に話しかけられ、大きな声で返事を返し、試合終了と同時に急いで助手ちゃんの側に駆け寄っていった。
「……あんなの食らったらトラウマもんだよな。良かった、俺の時は三体で手加減してくれて……」
「ちょっとやり過ぎな気もします!もしも決勝まで英美里が勝ち上がったら、少し私がお仕置きしてやります!」
ベル的には英美里は少しやり過ぎらしい。
俺も少しやり過ぎだとは思うが、英美里的には後輩に今の自分の全力を見せてあげたかったのかもしれないなとも思う。
先輩の背中を後輩が追いかけやすくする為に敢えて実力の差を見せつけたんだと思いたい、でなければ只の可愛がりでしかない。
「……次はリーダー対英美里、名持ちの最古参組の勝負か」
「ですね!楽しみです!」
リーダーは博士の元へと向かい、何かを話している。
流石に心配しているのだと思う。
「ふむ……リーダーの方が優しい先輩で、英美里が厳しい先輩って感じか……部長と副部長的な」
「英美里が部長でリーダーが副部長っすね!いやぁ!英美里は本当に容赦無いっすね!流石の私もビビったっす!」
何気に復活していた番長がベルの隣に居た。
「番長ももう良いのか?毒を食らってたんだろ?」
「はいっす!リーダーの薬のおかげっすね!まぁ麻痺薬の類だったのもあるっすけどね!……これが本当に命に関わる毒薬だったらと思うと、まだまだ精進が足りないって気付かされたっす……もっともっと強くなりたいっす!」
「そっか!頑張れよ!」
「おっす!」
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