第104話 夢を追うもの笑うもの31
研究施設に向かったは良いが、この時間まで助手ちゃんが研究施設にいるかどうかも分からないので一応施設に向かいながらリーダーに念話を掛ける。
『リーダー、まだ仕事中?』
『はい。今日はもう少し研究をやろうと思ってますが、どうかされましたか?』
『今日、助手ちゃんに貰った魔法銃なんだが試し撃ちの結果少し爆発の規模が大きすぎてな……ちょっとダウングレードしてもらおうと思ってそっちに向かってる所なんだけど、助手ちゃんもまだ居るよな?』
『そうですね、助手ちゃんもまだ研究の続きをやってます』
『じゃあ、もうすぐ着くからまた後でな』
『了解しました』
念話を終え助手ちゃんの所在も掴めたので更に速度を上げて研究施設に向かった。
☆ ☆ ☆
第一棟に到着し早速中へ入る。
相変わらず良く分からない物で溢れているが、それらを触らないようにしながら目的の部屋を目指した。
「おいすー!」
目的の部屋へと軽く挨拶しながらの入室。
「お待ちしておりました、拓美様!」
「ドモデス」
「ん……」
三者三様の反応だが、助手ちゃんはだけは俺に向かって小さな可愛らしいお手々を突き出している。
リーダーから事情は聞いているようなので、早速アイテムボックスから魔法銃を取り出し助手ちゃんに手渡していく。
「悪いんだけど、爆発の規模を小さくするか爆発しないようにしてもらいたいんだけど……良いかな?」
魔法銃を一丁ずつ受け取り、机の上に並べた助手ちゃんが少しだけ不満そうに眉を顰めながら見てくる。
「不満……何故」
「ちょっと新人の子が扱うには威力が高すぎて、扱いが難し過ぎると思ってね」
「爆発……威力高い……良い」
「うーん……威力は高い方が良いんだけど、高すぎると同士討ちになったりして危ないから」
「……りょ」
そう言って助手ちゃんは部屋の奥にある自分の研究デスクに向かい、そこに用意していた魔法銃をこちらに持ってきてくれた。
新たに助手ちゃんが持ってきてくれた魔法銃は片手で扱いやすいデザインの物が四丁と明らかに狙撃用の銃身が長い、対物ライフルのような物が一丁だった。
「お勧め」
助手ちゃんが手にしているのは、片手で扱えそうな黒い自動式拳銃のような物。
それを俺に手渡してきたので俺も素直に受け取った。
「ありがとう」
「試作型爆発しない」
まじまじと受け取った魔法銃を見るが不安は拭えない。
「それは色々と試作したものの中でも指向性を高めた型の一つですね!助手ちゃんの結論は威力こそ正義であったので、これらは一応は失敗作になりますが安全面には何も問題ありません。一点集中型と言いますか……ただの火薬式の銃と殆ど使用感は変わらない物になっていますよ!」
火薬式の銃と変わらないという事はたぶん爆発する事は無いのだろうが、新人の子らに渡す前に性能は確かめておきたい。
「試し撃ちしたいんだけど……何処か出来る所あるか?」
「では、施設の外にある森で試し撃ち致しましょうか!着いてきてください!」
リーダーに先導されながら第一棟の外へと向かった。
施設の周りは木々に囲まれた森になっている。
「ここらへんで良いでしょう……」
リーダーが一瞬黙ったかと思ったら、木々が大きな音を立てながら根ごと移動してあっという間に森の中に小さめの広場が出来上がった。
「的も用意しましたので、どうぞ試し撃ちを!」
「ありがとう」
もはやこれぐらいの事では驚かなくなっている自分が居る。
リーダーが用意してくれた的は木で作られた人形のようなものだ、レベルアップの恩恵が無ければ銃で撃っても当てる事は難しかったかもしれないが今の俺なら可能だろう。
「とりあえず……助手ちゃんのお勧めからいきますか」
片手では無く両手でグリップをしっかりと握り込み木人形に狙いを定める。
引き金に指を掛けて、呼吸を止めながら軽く引き金を引いた。
何かが弾けるような軽い音が一発。
飛び出した魔力の弾丸は木人形目掛けて真っ直ぐに進み、見事木人形の頭部へと命中した。
「これだよこれ!この間、地下広場で使ってたやつ!これが欲しかったんだよ!ありがとう!これなら新人の子らにも渡せるよ!」
レベルアップの恩恵により身体能力は飛躍的に向上し、俺ぐらいのレベルになればこの魔法銃の弾丸を見てから避ける事も容易い上に、内気功を体に巡らせていれば当たった所で死にはしないだろう。
千尋が新人の子らをどの程度まで育てるかにもよるが、安全に魔法銃を運用する為に、せめて魔法銃の弾丸程度は避けられるぐらいには育てて欲しい。
「お見事です!他の魔法銃も試し撃ちしていきましょう!」
「威力不足……不満」
「バクハツ……」
リーダー以外の二名にはこの魔法銃は不満みたいだが、俺は威力よりも正確性の方が大事だと思うので一点集中型の方が好みだ。
「試し撃ちはするけど、その前に魔法銃のメンテナンス方法とか気を付ける事とか教えてくれ」
「分かりました!」
今回の魔法銃は大丈夫そうなので今の内に魔法銃を扱う際に気を付ける事を聞いておきたい。
「まずはメンテナンスですが……基本的には何も必要ありません!魔法銃は銃とは言っていますが火薬を使っている訳でも無いので故障する原因は殆ど一つしかありません。もっと言えば銃自体の形にさえ意味は有りません!大事なのは魔法銃の内部に刻まれた魔術式なので、この魔術式が何らかの影響で傷ついたり、損傷しない限りは問題有りません!ですが、万が一機能しなくなった場合は私達に連絡を頂ければ再度魔術式を刻み込んでお返しするように致します」
魔法銃はメンテナンスフリーで弾丸も自身の魔力を引き換えにして撃っているのでとてもエコだ。
「注意点は……魔法銃の内部に刻んでいる魔術式ですが、そのまま流用した所で何も意味を為さない仕掛けを施しているので分解はしないようにしてください、故障の原因になる事もありますので!」
技術の情報漏洩にもしっかりと対策を施しているようで何よりだ。
「後は……特にありませんが、お願いが1つ。使用者の使用感や要望をお教え頂きたく思っています。あくまでも私達は研究者であり、開発者でしかありませんので実際に戦闘で使った事は殆どありません。出来れば使用者の方の意見を参考に魔法銃をより良くしていけたらと思いますので、何かあれば些細な事でも良いので聞かせてください!」
「りょーかい!千尋に伝えて、新人の子らにも何かあれば言うように伝えてもらうよ」
「ありがとうございます!」
「感謝」
「アリガト」
その後は全ての魔法銃の試し撃ちを行って、何も問題は無かったので俺は夕飯を食べる為に我が家へ帰った。
魔法銃はとても素晴らしい。
けれどアニメのように空中に魔法陣か何かが現れたりした方が視覚的にも楽しめて良いと俺は思うので、今度要望としてリーダー達に伝えようと決心した。
「しっかし……あの狙撃型はピーキーな性能だよなぁ」
他の四丁に比べて狙撃型の魔法銃は少し特殊だった。
他とは違い、込める魔力に属性を付与する事が可能で使用魔力も馬鹿程高い。
射程も威力も速度も汎用性も全てが他の魔法銃よりも高いが、如何せん魔力の消費量と魔力の充填速度が遅いので一発外せば二射目は少し間が空いてしまうのが難点だ。
「魔法銃自体も相当な重量とサイズだし……あれは扱うのに大分骨が折れそうだな。新人の子であの狙撃型の魔法銃を扱える子が居れば良いけど……」
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