第4話 始まりは突然に4


 ステータスは口に出さずとも、頭の中で呪文のように唱えると、出現することが検証したことで分かっている、後はこのステータス画面が他人にも見える仕様なのか、それとも自分自身にしか見えないのかの検証を行いたいところだが、あいにくおひとり様なので、頭の片隅に追いやることにした。

 ステータスが画面を開いた状態で、心の中で拠点化と唱える、すると画面の表示が切り替わったのが確認できた。

「よし、ここまでは検証した通り出来たが……」

 切り替わったステータス画面に目向ける。


 <拠点化範囲、建物を指定してください>


 このメッセージと共に自宅とその周囲の田んぼ、山が航空撮影のように表示されているのが分かる、どういう原理かは分からないが、自分が所有している土地と建物だけが薄ぼんやりと青く表示されており、その他の部分は薄ぼんやりと赤く表示されていた。

 「たぶん、この青くなっている範囲の部分は拠点化できるんだろうが、範囲を狭くしたりとかの調整は出来るのか?」

 画面を見つめながら、色々と調べてみるが、画面の表示は一向に変化しない、

恐らく自分の所有している土地や建物を自動で判断はしてくれるのだろうが、細かい調整はできないのだろうと結論づける。

 「細かい調整は出来ないのか、まぁ土地全てを拠点化できるのなら問題はないか……ん?なんだこれ?」

 山の一部に赤くなっている部分があるのを見つけた、理由が分からない、この山は全て自分の所有している土地のはずなのに。

「良くわからんが、この部分は拠点化できないのか?だが理由もわからないままに放置するわけにもいかんしなぁ、面倒だが、様子を見に行くか?しょうがない、準備して見に行くか、見たところ家からもそんなに離れてはいないしな」

 部屋から出て、玄関に向かい玄関に置いてあった親父のゴルフバッグの中から一本クラブを手に取り、普段はあまり履かない農作業用に置いてあった、長靴を履いて靴箱の上の時計に目をやる。

「7時30分か、あの声から、まだ30分しか経ってないのか…やれやれ、この先この世界はどうなるんですかねぇ……」

 クラブを握る手に自然と力が入る、この先の事を考えるが、情報が少なすぎて何も考えつかない、ふいに家の事を考える、今は自分一人で暮らしている、両親が残してくれたこの木造の平屋の一軒家、田舎特有の広い玄関に大きい靴箱、今は自分のと、妹の靴が少し寂しく収まっている、大きい庭に農具を入れてある納屋、車が4台は止められる駐車場には普通車が一台と原付が一台、荒れ果てた田んぼに荒れ果てた山、自然豊かだと言えば聞こえは良いが、ただの田舎にある一軒家、住むのに不満はないが、多少不便ではあるこの家、守りたいと素直に思えるほどには大事な家。

「いってきます」

 返事は無いがいつもの癖でそう口にすると、少し立て付けの悪くなった戸を開けて、常識が変わったであろう外の世界に初めて足を踏み出した、恐怖はあるが、自然と足は山へと向かう、そう遠くない場所だったので歩いて行くことにした。


 ☆ ☆ ☆


(周囲に人は居ないな、まぁここら辺に住んでるのは俺だけだし、当然か、もしかしたら、モンスターでも出てくるんじゃないかと思ったが大丈夫そうだな、にしても久々に山に入ったけど荒れてんなぁ、やっぱりある程度は人間が管理しないとダメか?まぁいいか、どうせ使い道なんてないし使う人も居ないしな)


山に入ってしばらく、クラブを杖代わりに一応周囲を警戒しながら山を歩いて行き目的地の側まで何事もなくたどり着いた。


(確かここら辺のはずなんだが、あれは……洞窟?洞穴?たぶんこの穴だよな、こんなとこにこんな洞窟なんてあったんだな、だが何故、この場所だけが拠点化できないのか、きっと何か理由があると思うんだが、外から見た様子じゃ特に何か変わったことはないと思うんだが、とりあえず入ってみるか?)


 意を決して洞窟へと足を踏み入れると、茶色い岩肌に囲まれたまるで廊下のような場所を歩いて行く、しばらく歩いていると不思議な事に気付く、洞窟の中で真っ暗な筈なのに、周囲を確認出来るのだ。


(おいおい、どうなってんだ?これもスキルの力なのか?何故見える?光源なんて何もないぞ?ここ本当に洞窟だよな?)


上を見上げるとそこには岩肌の天井がはっきりと見えた、これもスキルの力なのかと思うが、スキルの説明には、それらしき記述は見当たらない。


(まさか、鑑定だけではわからない隠れている情報があるのか?まぁいい、今はそんなこと考えても答えは出ないだろうし、先に進んでみよう)


 そしてしばらく進むと、両開きであろう、鉄の様なもので作られた重厚そうな扉の前にたどり着いた、扉の周囲を探るが何もないただの行き止まりだった、どうしたものかとしばらく考えるが、何も良い考えなど思いつかず、扉を開いてみようと扉に手を触れた。


(何かいたら、速攻で走って逃げる!よし!行くぞ!)


思いっきり力を込めて扉を押し開こうとするが、意外な程扉は軽く大きく開かれた、そして扉を開けた先には、真っ白な部屋が広がっていた、部屋の中央に木で出来た台座、その上に水晶玉のようなものが乗っているのが目に入った。


(なんだここ?何故真っ白?そして、あの水晶玉はなに?意味が分からない怖い、走って逃げるか?だが、拠点化出来ないのはほぼほぼ、この空間のせいだよな?どうする?)


部屋の外からしばらく中を観察するが、台座と水晶以外何もない、そして異様なほどに真っ白な部屋、特に危険も無さそうだと、ここまでわざわざ来たのだからと、思い切って一歩部屋へと足を踏み入れる、特に何か変わった様子はない、拍子抜けだが、まだ台座と水晶玉がある、まずは拠点化に進展が無いか確認するが、何も変わってはいない、やはり水晶玉をどうにかしないと駄目なのかと意を決して水晶玉に手を触れた、その瞬間水晶玉が輝き砕け散った、そして砕け散った水晶玉が体の中に吸い込まれる様に消え去った。












<パンパカパーン!おめでとー!君は地球で初めてダンジョンを攻略したよ!凄いね!でもまさか、こんなに早く攻略するなんて!びっくりだよ!まぁ、そんなことより!ダンジョン攻略者には、G-SHOPが解禁されるよ!いわゆる攻略者の特権てやつだね!良かったね!素晴らしきかな生命!またねぇばいばーい!>



「は?」



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