第3話 始まりは突然に3
<”あーあー、テステス、ハローハロー”>
「…!」
突然頭の中に美しく、まるで女神の様な声が響き、驚き周囲を見渡そうとするが体が動かない、何が起きているのかと、思考を巡らせる前に、再び頭の中に声が響く。
<ヤホー!地球の皆、聞こえてるぅ?実は今地球がヤバイ!というか、地球に現存する?生命?全てが?やばい?みたいな?まぁ、簡単に説明するとね、地球がアップデートしました!これから先、地球には今まで幻想や空想、はたまた異世界の事だと思っていた事象が起きます!まぁ日常がちょこっとだけ変わるみたいな?つまり、世紀末的な定期メンテ的な?ダンジョンとか、モンスター、魔法、スキル、今までの非日常が日常になる!それだけ!これからも、頑張って生きるんだよ!ふぅ…すばらしきかな生命!またねぇばいばーい!>
…何がおきているんだ?世界がアップデート?
<ごめーん!>
「!!!」
<伝え忘れがあって怒られちゃったよ、んーとね?この声が聞こえる、現存する生命の中から、ランダムに?あっ違うの?えぇと何々?……そのものの行ってきた行動にある程度基づいて?スキルや加護を与えました!生きる為に!まぁ、与えられてない生命も後天的に得られるだろうから、生きるんだよ!すばらしきかな生命!またねぇばいばーい!>
天災はいつだって突然にやってくるものだ、この日から地球は非現実な事が現実に、非日常が日常に急速に変わっていった。
☆ ☆ ☆
頭の中に聞こえていた声が止み、体に自由が戻ってきた、考えるのは先ほどの声が言っていた事だが、まずは情報を確認した方が良いと思い、ゆっくりと周囲を伺うが、特に何も変わった様子もない、聞こえるのはネトゲのBGMだけ、PCを使いネットで”地球 アップデート”と検索してみるが、出てくるのはゲームのアップデート情報やネット投稿されている小説だけだった。
「流石にまだ、情報をアップしている馬鹿はいないか…となると、まずは自分の事を確認するべきだよなぁ」
おもむろに、机の上に置いてあるテレビのリモコンでテレビの電源を入れながら考える。
「まずは…定番だと“ステータス”…っ!!!」
ステータスと口にすると、視界にゲームのステータス画面のようなものが現れた。
児玉 拓美 LV1
スキル 怠惰
加護 娯楽神の加護
「……え?これだけ?」
一瞬思考が止まる、物語にあるようなテンプレ展開に嬉しさが込み上げてくるが、表示された自分自身のステータスのあまりの情報量の少なさに思わず声をあげてしまうが、まだ試していないテンプレがあるのを思い出し、ステータスのスキルの部分にある怠惰に視線を合わせ、心の中で強く唱えると同時に言葉を発する。
「鑑定!」
スキル 怠惰
・怠惰の業(自身が勤勉だと自身の全能力無効化)
・怠惰の居城(自身の居住空間と認められる場所を拠点化し、拠点内での自身と支配下にあるもの以外の全能力無効化、拠点の認識阻害効果)
・怠惰の謳歌(自身が勤勉ではない場合、経験値、SPを得られる)
・怠惰の豊穣(自身の支配下にあるものの成長値に上昇補正)
・怠惰の従者(自身の支配下にある者の謀反率低下)
・怠惰の魔眼(自身の支配下にある者の視覚を覗く事が出来る)
「出たっ!」
嬉しさのあまり、思わず大きな声でさけんでしまう、やはりテンプレは偉大だと妙に納得して数度頷いてしまう、そして、スキル怠惰のマスクデータとでも言えるものを読んでいった。
「ふむ、分からないことが多いな、そして怠惰の業に関しては完全にデメリット効果だし、怠惰の居城については、効果は明らかにチートだが、拠点化の仕方が分からん、とりあえず気になるところから色々試してみるか」
まずは、怠惰の居城の拠点化の方法調べてみようかね。
☆ ☆ ☆
「ふぅむ」
疲れた頭をほぐすように、ため息がもれる、検証の結果、怠惰について分かったことはあまり多くない、何せ効果の大半が“支配下”にあるものについて、効果を発揮するものだからだ、基本的に、怠惰とは自分自身が何かをするのではなく、支配下にあるものにやってもらうという、まさに“怠惰”の名を冠するに相応しい効果の様だからだ。
「はははっ……結局怠惰な俺じゃなく、俺の支配下のものを特別な何かにしていくスキルってことだよな、裏切り防止まで完備してあるし、スキルライン完璧チートじゃんこれ、でも……俺自身が何かをすることは出来ないんだよなぁ……まぁ俺らしいスキルかな……ちょっと、残念ではあるけど、こいつさえあれば世界がどう変わろうと、生きていけるさ、他人の力を使って」
チートのようなスキルを与えられたのに、数分前の興奮はなりを潜め、何故か心は冷静に冷たくなっていく、色々と思考が纏まらない、これから先の事や、思い出したくもない過去の出来事が頭の中をぐるぐる回っていく不思議な感覚。
「とりあえず……拠点化してみるか」
そう呟いて、自分の過去から目を背けるように心の中で“ステータス”と呟いた。
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