第2話 始まりは突然に2
「あぁ働きたくねぇ」
今日も駅から遠く離れた山奥にある一軒家の一室でバイト終わりで疲れた体と心を癒すためにネトゲの日課をこなしながら、独り言を吐く。
「異世界転生して無双して、ハーレム作って一生遊んで暮らしたい…」
ここ最近いつも考えてしまう、現実ではない理想の生活を送る自分のこと。
学も才能も気概も気力も真面目に働く気もない俺は、只々バイトして毎日ネトゲをするだけ。
特に目標もなく、フレンドがいるわけでもないのに何故か続けているネトゲ。
最初は本当に楽しくて刺激的で現実とは違う自分になれる気がした。
この世界なら俺は特別なんだと本気で思えた。だがネトゲも現実なのだと思い知らされた。どんなに時間をかけて練習しても勝てない奴らがいるという現実を。
「ふぅ、今週も上位勢はメンツが一緒だな、プレイヤースキルどうなってんだよコイツラ……才能もあって努力も出来る奴らには敵わないってことか……俺は相変わらずランク圏外か……」
ボスの撃破速度を競うタイムアタックの上位者のランキングを確認しながら自分のランキングを確認しては落ち込む。
「まぁ俺はまったり勢だし、別にいいか……むしろタイムアタックに参加してるだけまだガチ寄りだし」
意味の分からない言い訳を口にしながらふと考える。
ネトゲが楽しくないわけじゃない。
むしろ楽しいのだ、日々の癒しにもなっている。
素材を集めお金を貯めて、装備を作りまた素材の為にモンスターを倒す。
毎日時間を忘れる程楽しめているはずなのだが、上位勢にはなれない無力感も同時に味わう日々、このままでいいのかと疑問に思う。
頑張ればランキングに入る事ぐらいは出来るんじゃないかとあくせくしている内に時間だけが過ぎて行く。
「でもなぁ……努力したところで現実的に何か変わるわけでもないし、バイトに支障がでるし、そもそもランキング入り出来るほどの才能が俺には無いよなぁ」
自分に期待出来ない。
自分に自信が持てない。
思考がネガティブになっていく。
生活に困っているわけでもないが正直な所、生きていることに飽きていた。
生きる理由も無いが死ぬ理由も無いまま、ただ生きているだけ。
「あぁ働きたくねぇ」
<ザザーッ>
急に画面にノイズが走り、画面が暗転する
「ん?故障か?長いこと使ってたからな…ッ!」
画面が暗転した途端、頭に激痛が走る
「あ!…がッ!ふぅぅ…なんだこれ?」
頭痛は一瞬で治まったが、視界に直接文字が浮かび上がる
「大罪スキル怠惰を取得?娯楽神の加護を取得?」
意味が分からない、夢でも見ているのかと疑うが、心臓はバクバクと煩いほど興奮している。
「これは、ひょっとして、ひょっとするの…か?」
人生で一番興奮していた、確信めいた何かで心臓の音が気にならなくなっていた。
俺も成れるのだと。
心の底から憧れていた、特別な何かに。
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