003

 セバスチャンが消えたあと、やってきた数人の冒険者を追い返し、城の中に戻ってマオが無事だったことを確認。

 その後も、また別の刺客が来たので追い返し…………。


 晩飯をみんなで食べたあと、俺はアリシアに城の外に呼び出され――――月明りに照らされた世界にアリシアと二人きり。


「こうして二人で会うのは久しぶりだな」


 酔っていた時を除けばだが……。

 思い出しても、あの時のアリシアは凄かったな……勢いというか色々と……。


「う、うん……」

「それでどうしたんだ?」

「ゼ、ゼクス、あのね……」

「ん?」


 アリシアは服の裾を掴んでもじもじとしていた。

 チラッとアリシアのへそが見え――


「ゼクス! 昨日はごめんなさい!」


 勢いよく頭を下げたアリシア。


「ん? 昨日のことって?」

「そ、それは……その……」


 顔を上げたアリシアだったが――


「おい、アリシア」

「な、なに……?」

「顔が赤いけど大丈夫か?」


 そっとアリシアの額に手を添えて熱がないか確認してみる。


「熱はないな」

「だ、大丈夫! 大丈夫だよ!」

「あ――」


 手をパシッと払われてしまい、少し悲しかった……。


「ご、ごめんね……」

「いや、俺の方こそ……」


 恥ずかしそうにするアリシアが耳元の髪をかき上げる。


「あ、あのね、昨日はフウちゃんに勧めてもらった飲み物を飲んだらあんなことになって……」

「もしかして、覚えてるのか?」

「う、うん……」

「そ、そうか……」


 覚えていない方がお互いに良かった気がする……。


「ゼクス!」

「なん――ッ……」


 急に抱きしめられてしまい、手は自然とアリシアの頭を撫でていた。


「ど、どうしたんだ?」

「ちょっとだけ、寒いかなって……」

「なら上着かなにか――」

「ここがいい……」


 アリシアの胸の感触が……。


「ア、アリシア?」

「ねぇゼクス」

「な、なんだ?」

「撫でてくれるのも嬉しいけど……」

「うん?」

「あ、あのね……」


 上目遣いで見つめてくるアリシアの綺麗な青い瞳、赤らんだ頬。

 当たる胸の感触にそろそろ我慢の限界が……。


「その……私は抱きしめてほしい、かな……」

「……」


 あぁ、やっぱり可愛いな……。


「ゼクス?」

「……ほら、これでいいか」

「はぅ……」


 優しくアリシアを抱きしめて包み込む。


 目を瞑ると、アリシアの甘い香りがより強く感じられた。


「やっぱり、こうしてると落ち着くね……」

「そ、そうだな……」

「……みんな、まだ起きてるかな?」

「さっき食べたばかりだからな、起きてると思うが」

「そ、そうだよね……」


 さっきからアリシアがぎこちない。

 もじもじしているというか、体をくっつけてくるというか……。


「アリシア、そんなにくっつかれると……」

「もうっ……、こんなにしてもまだ分かってくれないの?」

「な、なにが……んっ!」

「ちゅっ……んっ……」

「……はっ、はぁ……ア、アリシア……?」


 急な口づけに問いかけてみるが、アリシアの艶っぽい雰囲気に思わず息を飲む。


「こ、これで分かってくれたかな……?」

「さすがに、ここまでされるとな……」

「ずっと誘ってたのに気付いてくれないんだもん……」

「い、いつからだ?」

「ここに来た日に着替えたでしょ……?」


 ……ここに来て最初に着替えたって――


「あのビキニアーマーか……」

「そ、そうだよっ! なのにゼクスが寝るって……バスタオル一枚とかも、結構がんばったのにっ……」


 そんなこと言われても……――


「俺だって我慢してたんだからな……」

「え、ゼクス……?」

「どうなっても知らないぞ……」


 もう、こんなの我慢できるか……。


「ゼ、ゼクス……急にそんな――」


 今度はこちらから口づけを交わし、アリシアの服を少しずつめくり上げていく。


「お姉ちゃーん! お兄ちゃーん!」

「「――ッ!」」


 聞こえてきたライの声に、とりあえずアリシアを引き離して……。


「……あれ? 二人とも顔が赤いけどどうしたの?」

「ライ……」

「ライちゃん……」


 俺とアリシアは目を合わせて、湧き上がっていた衝動を抑え込んでいく。


 フウもライもいいタイミングで割り込んでくるよなぁ……。


「二人とも顔が赤いけどどうしたの?」

「な、なんでもないよ!」

「んー?」


 俺とアリシアの間に入って顔を覗き込むライが首を傾げていた。

 このところ、ギリギリでずっとおあずけされているような気がするんだが……。

 そろそろ本気で我慢できなくなってきた……。


「お姉ちゃん! お風呂入ろ!」

「う、うん!」

「お兄ちゃんも一緒に入る?」

「俺はエンと一緒に入るからいいよ……」


 今はライに下半身を見せられない……。


「お兄ちゃん、なんだか元気ないよ?」

「ちょっとな……」


 腹いせにライを撫でる。


「ん……えへへ……♪」


 嬉しそうにするライがそのまますり寄ってきた。


「くすぐったいよぉ♪」


 もう、可愛いからなんでもいいか……。


「ねぇ、ゼクス?」

「なんだ?」

「今日はその……外で寝るの?」

「ああ、月も綺麗だしな」

「そ、そっか……、んじゃ、またあとでだね……」

「……」


 アリシアと目が合い、ライに分からないように目線だけで会話。

 え、もしかして野外でするのか……?


「ライちゃん! お風呂にいこっか!」

「うん!」


 ライの手を握って嬉しそうに歩いていくアリシア。


「んじゃ、ゼクス、またあとでねっ」

「お、おお……」

「お姉ちゃん、お兄ちゃんとあとでなにかするの?」

「う、ううん! なにもしないよ!」

「んー?」


 純粋そうなライにはとても言えない……。

 あ、そういえばエンはあの後どうなったのか聞けてないな。

 食卓に居たときはスイと楽しそうに喋ってたし、上手くいったのかな。


 あとで聞いてみるか……。


「お兄ちゃーん!」

「ん、どうした?」

「いってきますっ♪」

「ああ……」


 あの笑顔は守らなければ……。

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