第19話
王都からドラゴンの巣に向かう道を確認すると、4つ間に街や村がある。その先は深い森で誰も立ち入らないようだ。つまり道らしい道はない。
さらに確認すると、森の中……。モンスターはいないようだな。
この世界のモンスターはダンジョンに生息する。
時々、ダンジョンで数が増えすぎたモンスターが地上に現れることがあるが、ドラゴンの住処に近づくようなモンスターはいないってことか。
ちなみに、ドラゴンやワイバーンなども元はダンジョンの中にのみいたらしいが、空飛ぶ生き物の討伐がうまくいかずにそのまま地上に住み着いてしまっているらしい。街や村を襲うなどの害がない限り、そのまま共存していく道を選んだらしい。
っていうか、国によってはワイバーンを乗りこなして竜騎士……ぶぶっ。やめれ、竜騎士とかたいそうな名前、ワイバーンだから、ワイバーンよ。
くくくっ。
って、思い出し笑いしてる暇はない。
「あ、これはまずいな……」
森の中に盗賊団のねぐらがあるようだ。避けていかなければ。
メモ用紙を取り出し、簡単な地図を制作。
「おっと、これは、できたばかりのダンジョンか?」
ダンジョンからはモンスターを倒すといろいろなお宝が手に入るというんで、冒険者たちが先を争うようにダンジョン攻略を目指す。
まったく周りに人がいないということは、新しくできてまだ発見されていないダンジョンか、それともかなり昔にろくな宝が出ないと放棄されたものか。
どっちでもいい。ダンジョンには興味がない。いや、今は興味があったとしても時間をそちらに費やす余裕はない。
っていうか、俺はスローライフを目指す男。ダンジョンの攻略なんてハナっから興味はない。
地図に書き込んでおく。
ほかにもいろいろと迷子にならないための目印になりそうなものも書き込み、地図を作り上げていく。
「よし、地図はオッケーだな。あと必要なものは……」
何日かかるか。道がある場所は馬車も利用できるだろう。森に入れば徒歩だ。
森の中の水源……川や泉の位置も確認して地図に書き込んだから水の確保は問題ないとして。食料を持って行かなくちゃな。
大きめのものを1つ持って行けばコピーして消費していけばいい。小さなものは駄目だ。
ほかに必要なものは……。
武器……か。あっても戦えないしなぁ。ナイフくらいは持ち歩くとして。鏡が割れた時の予備の鏡を用意するか?
体力のないおっさんには長い徒歩が待ってると分かっていて必要以上に荷物を持ち歩くほど愚かじゃない。
「メリシャ準備はできたか?」
荷物を用意すると再び男爵家のドアのライオンでノックする。
「はひー。師匠、準備は万端です」
押しつぶされそうな大きなリュックを背負ったメリシャがそこにはいた。
「……」
そうだった。この子、マシュマロ頭だ。中身ふわっふわだった。
「何が入ってるんだ?」
「はい、あの、食べるものに困っている人がいたら、助けられるように、パンをたくさん入れました。それから、着るものがなくて困っている人を助けるときのために、服と、それから」
顔を抑える。
「あれ?師匠の荷物はこれだけですか?ずいぶん少ないですね?」
メリシャが俺の背中の鞄を見て目を丸くしている。
「あのな、俺たちはサラを助けに行くんであって、道行く人を助けるための旅をするわけじゃない」
「ですが、困っている人がいたら……」
「メリシャ、物事には優先順位というものがある。もし、道行く人を助けて時間を使ったために、サラがドラゴンに食べられてしまったらどうする?」
メリシャが両手で口を押えて、小さく震える。
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