第17話
……てか、そういうこと、何一つ殿下には伝えてないのか。
口で言うのが無理で、態度にも出せないなら、日記に書いたような素直な気持ちを手紙にでも書いて渡せばよかったんだよな……。
そりゃ……。
「サラが悪い……」
皇太子が一方的に悪いと思ってたけれど、表面を覗き見るだけじゃ分からないこともいろいろあるもんだ。
おじさん、反省するわ。
すまんな、アオハラーたちよ。
ぐいっと、なぜかアレン殿下に襟元をつかまれる。
うひー、不敬、不敬で処刑、なんでだよっ!
「サラは何も悪くないっ!不平不満など一度も口にせず、懸命に王妃教育をこなしていた。学園でもいろいろと陰口をたたかれることもあったのに、凛としていて……いつも美しくて……。何か間違ったことをしようとしている人にはきちんと正してあげようと声をかけたり……サラは何も悪くないんだ、私はさらに相応しい男になろうと努力をしてきた。だけど、その努力が足りなくて、サラにはいつも無表情をさせてしまっていた……。もっと私が心も体も強くて男らしい立派な人間であれば……サラにふさわしい婚約者になれていたら、苦しませずに済んだのに……」
あー、もう、めんどくさいな。おい。
両想いがこじれまくってますけど。
何を言っても無駄なのかね。
時間がないんだけども。
「いいえ、アレン様が努力をしていたのを私は知っています。サラ様のことを思って、サラ様を思うからこそ、婚約破棄を決めたアレン様は立派です。サラ様にもアレン様にも幸せになってほ」
……メリシャも参入。カオス。もういいや。全部すっ飛ばそう。
「殿下、それで、サラが戻れば陛下に会わせてくれるんだよな?」
もう、そこだけ言質取っとけばいいよな。
「ああ。サラが無事に戻れば……仮廃嫡処分を解かれるか、廃嫡処分が決定するかどちらかだが……処分を言い渡されるときには陛下に会うことはできるはずだ。その時に、頼むだけは頼んでみよう」
廃嫡処分……にはならないと思うぞ。サラと元通りどころか、円満な感じに落ち着けばな。
「よし。じゃぁ、サラを連れ戻しに行こう」
「え?師匠は、サラの居場所を知っているのか?」
ちょいと、お待ちなさい、皇太子殿下アレン君よ。「メリシャの師匠」呼びが「師匠」呼びに変化してますが。
さすがに王子に師匠と呼ばれるわけにはいかない……。他の人に聞かれたらヤバイよな。これ。
「ところで殿下は、どれくらい強いですか?」
突然の話題変換に、殿下が言葉に詰まる。いや、返答に困ったのかな。自分で俺は世界一強いっていうやつも信用ならないし、まだまだですと謙遜がひどくても能力がまるっきり伝わらないもんな。
「すっごくアレン様は強いです。学園の武道競技会でも、いつも優勝候補なんですっ!」
うーん、これまたメリシャから謎の評価が。皇太子相手に手を抜いてる可能性があるもんな。相手がさぁ。っていうか、優勝候補?
「優勝したんじゃなくて、優勝候補?」
「あはは、恥ずかしながら、一度も優勝はしたことがなくてね。武道競技会では純粋な剣術、おのれの肉体の能力の身で競い合う会で、魔法の使用が禁止されているからね。魔法さえ使えれば……」
うわぁ、やだわ、この子。魔法が使えなかったから優勝できなかったなんて言い訳用意してるんだもの。……って、なんで突然おねえ口調。
まぁいいや。
「魔法が使えれば、ドラゴンに勝てるか?」
俺の言葉に、殿下の表情がぎゅっと引き締まる。
「ドラゴン……の強さは聞いている。私は、自分の力を過信はしない。差し違える覚悟があればあるいは……勝てる可能性はある」
はい。勝てないは分かった。
「あー。ちょっと待ってくて」
いったんポケットから手鏡テレビを出して、サラの現状確認。うん、まだ動きはないぞ。
「あのぉ師匠、なぜ今、身なりを気にするのでしょうか?」
「メリシャ、大丈夫なのか?この師匠、ナルシストっていうやつじゃないのか?」
うぐっ。
ナルシスト疑惑が。
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