第12話
異様な光景。
皇太子に隣国の王子に……多くの高位貴族たちがメリシャ一人を取り囲み好意を寄せている「逆ハーレム」。
異様な光景だったが……。
救われた者たちは、恋愛感情を超越した何かをメリシャに寄せている……のか?
救われたのは病気や怪我とも限らないよな。もしかしたら、心の傷……。
うーん。そういうことなのか?
いや、でもさ、心の傷を治せるならさ、性格も治してやれよ。
サラに冷たく当たって、ありもしない罪をなすりつけ、婚約破棄を突き付けたりとかおかしいよなぁ。
ぐぐぐぐ。と、まぁ考えたって仕方がない。
「俺が、皇太子殿下に会って、メリシャのしていることは、間違ってない。助けられた俺が、感謝していると、そう、言ってやるから、だから、会わせてくれっ」
必死に懇願すると、ハンナが怪訝な目を俺に向ける。
「ずいぶん、変わったお礼の仕方ですね……」
そうだよな。言い訳としても苦しいよな。
「ふふふ……ふふ……」
え?
あれ?
ちょっと、ちょっと待て。
「あ、俺、何か悪いこと……」
やべぇ、メリシャが泣き出した。
でも、ふふって笑ってる?泣いてるのかどっちだ。
「うれしいです……」
え?いや、泣いてるけど、嬉しい?えええ?泣くほど嬉しい?
俺、何もしてないけど……!
「ほっておけ、近づくな、関わるな、能力を無駄に使うな……それから……それから……みんな、私のことを思って言ってくれてるのは知っているけれど……」
だんだんと、メリシャが嗚咽を漏らし始める。
「ひぃっく、でも、……私にはそうは思えなくて……あいつらの自業自得だ、助けてやる価値などない……って言われても……私には分からなくて」
あいつら、流石お貴族様だな!
どうせ、庶民などその辺のくそゴミ程度に考えてるんだろう。
だが、違うんだよっ!その庶民が国を支えてるんだぞ。
食べ物を作ってるのは庶民なんだ。
着るもの一つ、宝石一つ、どんなものだって庶民が働いて手に入れている。上に立つ者がそれを忘れたらおしまいだぞ。
ぶっちゃけ、俺はメリシャのように心の綺麗な人間じゃねぇ。
だから、メリシャのように無料で何のデメリットもなく、庶民の心をつかめるようなことができるんならさ、止める必要ないじゃないか?
ってか、選民意識のあるやつ嫌い。俺、やっぱ皇太子嫌い。
「……私が、おかしいのかな?って……みんなが言うようにできない私が変なのかなって……」
「いいや、メリシャは、何にも間違ってない」
メリシャが目を見開いて俺を見た。
きれいな濃い桃色の瞳だ。
目の前で誰かが困っていれば助けたくなるのは人間として、いいや、「まっとうな」人間なら普通の感情だぞ。
日本で何度「溺れている子供を助けようと飛び込んだ男性が死亡しました」みたいなニュースを目にしたことか。
家族じゃないぞ?見ず知らずの人が、子供が溺れてる、助けようとして命を落としてるんだ。
喧嘩の仲裁をして刺されて亡くなった人のニュースも見たな。
そんな大きなことばかりじゃない。
子供が転んで泣いていれば大丈夫か?と声をかけるし、いや、今はおっさんが子供に声をかけるのは通報案件なので、大丈夫かなと見守るしかできないのが歯がゆいが……嫌な世の中だが仕方がない。
誰かが何かを落としてしまえば一緒になって拾い集めようと体が動くし……日本じゃなきゃ、奪い取ろうとして人が集まるらしいが……あれ?
そう考えると、助けたいって気持ちは普通ではないのか?日本ではごくごく普通の感情。
いや、日本じゃなくたって、マンションから落ちそうになっている子供を住民がみんなで助けたとかニュースになってるし。助けたいって気持ちは普通だよな。
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