第11話
ころっといっちゃってる男どもが、メリシャの周りにはたくさんいたじゃないか。
例えば、クソ皇太子とか。クズ皇太子とか。アホ皇太子とか。いや、同じ人物のことだが。
皇太子っていえば、豚の子供。よくあの豚からイケメン生まれたな。王妃様が美人だからか?遺伝子の不思議。
って、それはさて置きだ、陛下の息子が皇太子だ。
これ、男爵から順々に紹介状を書いてもらう必要なくなったんじゃね?
メリシャに皇太子にお願いして陛下に会わせてもらえばオッケーなのでは?
超ラッキー!
詰んだと思ってたら、当たりのコマにとんだ感じだ。
「お礼を、お礼がしたくて、お礼に……」
「いえ、お礼なんて、気にしないでください」
ちょっと待て。
断られたらつながりが途切れる。
「そういわずに、お礼をさせてください」
お礼にといって宝石を差し出す。もらいすぎだと遠慮するそぶりを見せたら、じゃぁ代わりに皇太子に会わせてほしいとでも頼むか?
頭の中で計画を練る。
「あの、えっと……」
メリシャが困った顔をしているのを見たからか、ハンナがメリシャの前に出てきた。
「本当に、お嬢様にとっては日常のことですから、お礼は気持ちだけで……お帰りください」
帰れ、だと?
それじゃぁ振り出しに戻ってしまう。
「いや、そういうわけには……」
「しつこいと兵を呼びますよ?」
それも困る。
「ハンナ、せっかくお礼を言いに来てくれたのに……」
メリシャがハンナを抑えてくれた。
「ごめんなさい。本当に言葉だけで……。わざわざお礼をするために尋ねてきてくれてありがとうございます」
にこりと笑って頭を下げるメリシャ。
なんでだ?お礼を言いに来た俺がお礼を言われている。
「だから、そうじゃなくて、俺がお礼を、お礼に、皇太子に会わせてくれっ!」
しーん。
う、おおおうっ!
間違えた!
なんで、お礼にお願いごとしてるんだ。
メリシャもハンナもポカーンとしている。
しかも下手したらこれ、メリシャを利用して皇太子に近づきよからぬことを計画しているみたいじゃないか。
いや、メリシャを利用して皇太子に近づこうとしているのは間違いないんだから言い訳できないんだが。
「あの、それがお礼ですか?」
って、メリシャは疑うことなく首をかしげて訪ねてくる。
「あー、そう、そうだ」
なんか考えろ、俺!
メリシャの心を動かすような何かだよっ。
見てたんだから、分かるだろ。メリシャの性格……うぐ。うぐぐ。分からん。どっちかいうと、サラばっかり見てたからな。
サラ推しで、マシュマロピンク頭の方はその……。人として見ていなかった。
メリシャは、そう、相手に期待もせず、人を救おうとする。
そうだ。
「皇太子殿下に言われていただろう?助けても感謝されるとは限らない……と」
「あ、はい。あの、私は別に感謝されたいから助けたわけではないから……」
メリシャが小さな声で答える。
「俺が、殿下に言ってやるよ。助けられた方は、感謝すると。言葉に出さなくても、その時はお礼の言葉もなくても、メリシャにとって人を助けることは日常かもしれないが、助けれた方は特別な出来事で……」
あの時は体が痛いくらいだったけど、もし死ぬかもって病気だったらと想像してみる。
異世界で、引きこもっていた俺には知り合いなどいない。
誰かが親身に世話をしてくれることもなく、王都では浮浪者と思われるような姿をしていて、現に皇太子たちは眉をひそめて遠巻きにしていただろう。
そんな時に、損得も考えず助けの手を伸ばしてくれつ人が現れたら……。
ほっといてくれ俺は死にたかったんだって言うやつは別として、死にたくないと思ってたら感謝するよな。
むしろ、俺みたいなやつを助けてくれるのか?と……。感謝するよな。俺にとっての神みたいに思うよな。
もしかして……。
そうして、メリシャは、崇拝されているのか?
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ご覧いただきありがとうございます。
いやぁ、男爵から子爵に、子爵から伯爵にとかだんだん上の人に紹介してもらわなくても、皇太子から陛下へと、一足飛びできそう?なの?
そんなにうまくいくの?
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