第2話

『なんだと?』

 お城の中をのぞくと、ごてごて飾り立てた豚が怒りで顔を真っ赤にしている。あ、豚じゃない。よく見たら王様でした。

 ……ってボケと突っ込みは、毎回です。今いるニーシル王国の王様は豚にそっくりなのよ。子豚じゃないよ。なんか、こう、食べすぎて顎とか6段くらいになってる豚さん。

『お前たちに服従しろだと?冗談じゃないっ!なぜ我々がお前たちのようなモンスターに服従しなければならないんだ!』

 ちょっと待て、ちょっと待て。

 王様の前に立っている青の肌で、金魚鉢みたいなガラスをかぶった全身銀色のタイツみたいなのを着た人間。

 いや、人間なのか?

『われらに服従するか、破滅か。選択肢は二つしかない』

 青の肌の人間がしゃべった。

 言葉として聞き取れるが、『='%#!#$'&~=)'#"$#(=`>+?>+=>=+~=)*??#>』という耳障りな音も同時に聞こえてきた。

 もしかしてこれが本来の青の肌の発している言葉で、こちらの言葉に翻訳されてるのか?

『はっ、服従などするものか!おい、やつを捕まえて牢にぶち込め!』

『愚かだな。この星はどの国のトップも愚かだ……』

 え?

 星?

 どういうことだ?この世界はまだ地動説なんてない、つまり自分が住んでる世界が星だなんて思ってもいないんじゃないのか?

 王様の命令で、3人の騎士が剣を抜き、その後ろで槍を構えた兵が……後ろに倒れた。

「嘘だろ……なんで……」

 青い人間が取り出したのは紛れもない、銃だ。

 ピストル。ちょこっと形は地球のそれとは違ってはいるが、片手で持って、引き金だかボタンだかで離れた人間を攻撃する……。

『なんだ?魔法か?』

 銃を知らないこの世界の人間は、魔法で攻撃されたと思ったようだ。

『【魔法攻撃防御】』

 とっさに応急勤めの魔導士が呪文を詠唱し魔法を展開して防御する。短縮詠唱だ。この世界では魔法発動にはやたらと長い詠唱がいる。短縮詠唱ができるということはさすが王宮勤め!と言いたいところだけど。俺もできるし。コピーは短縮詠唱だし。ってかむしろ長い詠唱するのに失敗したよ。

『まったく愚かだと……』

 青い人間が銃を構えた。あっという間に、剣を構えた3人の騎士がバタバタバタと倒れる。

『そんな馬鹿な。私の魔法結界を破るとは……私よりも魔力が高いというのか?』

 魔導士が動揺している。

『おい、早くあいつを取り押さえよ!何をしておる!』

 王様が真っ赤にした顔から唾を飛ばしながら命じている。

 俺は、思わず寝転がっていたベッドから立ち上がって、ふらふらと鏡テレビの前まで歩み寄る。

「まじか……」

 信じられない光景だ。

 青い人間は平然と向かってくる兵たちを次々と銃で撃ち殺した。

 いいや、撃ち殺したという表現では収まらない。銃で切り殺した。

 何を言っているんだと思うだろう?だが、事実だ。

「レーザー銃……」

 地球でレーザーと言えば、赤い光が出るレーザーポインタが有名だ。目に当てると視力に影響が出るレベルの力しかない。

 工業用や医療用で、レーザーで裁断や切断をするものもある。2014年にはアメリカがレーザー砲も実験に成功したとも言っていたが……。

 だけれど、地球ではレーザー銃はまだ存在していない。手に持てるようなサイズで殺傷能力があるほどレーザーの出力を上げる装置を作る技術がないからだ。

 つまり、青い人間は地球よりも進んだ科学文明を持つ星の人間……。

 いやいや、魔法かもしれないけど。

『もう一度、尋ねる。我らウィール星人に服従するか、それとも破滅か』

 銃口を王様に向けて青い人間が尋ねた。

 ウィール星人と、言ったか?

 王様は恐怖なのか怒りなのかそれとも何かを待っているのか黙ったままだ。

『愚かなのはどちらだ、消え去るのは気様の方だ!まんまと罠にはまりおった』

 どうやら王様が黙っていた理由は時間稼ぎが正解だったようだ。床のに魔法陣が突如として現れる。

『人の血がその魔法の発動条件じゃ。【業炎】チリ一つ残さず焼かれるがよい!』

 すさまじい炎が魔法陣から立ち上がり、青い人を包んだ。

 包んだ炎の色は青白い。そう、赤い炎よりも温度の高い火だ。

 王様が高笑いするのは分からなくもない。普通の生き物なら、ドラゴンと言えどもひとたまりもない温度だろう。

 だが、金属……アルミの融点は約600度で鉄なら1500度、セラミックなら2000度。

 レーザー銃を作れてしまう科学の発達した世界では何度まで耐えられる素材が開発されているのか。

 およそ10秒ほど。青い炎が収まった後、青い人間が何事もなかったかのように立っていた。

『もう茶番は終わりだ』

『そ、そんな馬鹿な……』

 王様もその周りにいた人間も驚愕している。

 青い人間が銃を持った手を真上に上げた。



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