第5話 ちょっと待て!何か勘違いしている

 招待された時間の5分前に、俺たち3人がZUUMに参加したところ、カリスはまだ現れていなかった。PCの画面右側には安田、左側にユメコが配置されている。ユメコの背景はヨーロッパの宮殿、相変わらずだ。衣装は純白のゴージャスなドレスと金髪のロングの巻き毛、情報量の多いスキンを選んだせいで、少し動くだけで背景が乖離するところがおかしい。

 俺たち3人は作戦会議用のチャット場を設けた。カリスとは音声だけで接触する想定だ。


「待たせたかしら?」


 1分前にカリスが参加してきた。画面右側にカリス、左側が上下に分かれて安田とユメコが表示されている。カリスの服装は先日と異なる赤を基調としたドレスだが、胸元の露出度は相変わらずだ。


 ユメコからチャットが届いた。

『先輩、この女、私たちを騙していますよ!』

『早速、何か気が付いたか。流石だな。何を騙しているんだ?』

『この女、胸盛ってます。こんなに痩せていて、胸だけ大きい日本人はいません!』

『◎※×&$……この映像はアバターだから、実際の姿と全然違うから』


「えええっ? 先輩、この人の身体、見たことあるんですか? 不潔‼ 信じられない‼」

 ユメコが音声通話でいきなり叫び始めた。

「ちょっと待て! 何か勘違いしている。カリスの本当の姿はこの映像じゃないんだ」

「カリスって、この女はもう呼び捨て? 私のことはずっとあだ名で呼ぶのに‼」


「安田! ちょっと説明してくれ!」


 安田が、笑いをこらえきれない風情で口を開いた。

「このお姉さんはな、ユメコ……脱いだらすごいんだ! ガハハハ!」

〝安田! この馬鹿、なんてことを! 確かにすごいがその言い方では!〟


「ぬ・い・だ・ら? 先輩、どこでいつそんなことを! 私というものがありながら! ◎※×&$… ……」


〈中略〉


 ユメコが興奮してちょっと収集が付かなくなってきた。


「楽しそうね、人間?」カリスのアバターが底意地の悪そうな笑みを浮かべている。


「お願いがある。お前の本当の姿を見せてくれ」


「それは7回のヒントの1回目でよいの?」

〝この性悪エイリアンめ!〟


「それは勘弁してくれ。見せられないのなら少し時間をくれ」


「しょうがないわね。特別におまけしてあげる」


 画面の右半分にカリスの本当の姿、巨大な蜘蛛によく似た節足動物のどアップが表示された。ユメコが沈黙する。

『先輩、すみません。よく判りました。この姿であれば、もう大丈夫です』

何がもう大丈夫なんだと突っ込みたい気持ちを押さえてチャットで応える。

『よし、今度こそ本当に作戦開始だ‼』

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