第25話 全員バカ

「他人がバカに思えたら、まず自分の精神状態を疑った方が良い」


こんなアドバイスをどっかでみた。ツイッターだったかな、まあ、どこでもよい。とにかく、周りがバカだと思えたら、自分が天狗になってませんか?ってことだよね。


じゃあ、鼻からぼうぼうに鼻毛だしてる部長とか、暇さえあれば耳毛抜いてる同期とか、YouTubeをこっそり見てる先輩とか、みんなバカに見えるんだけど、私がやばいのかしら。


さっき外回りから帰ってきた営業の人も、ネクタイが某アニメのやつで、外回りに使うか?バカかよ?って思っちゃったし、トイレで聞いた受付の子たちの話は合コンの面子が如何にハズレだったかでバカなの?って感じだし、部屋に戻ったら鼻毛部長が「俺のスマホのパスワード、娘の誕生日」とか言っちゃっててやっぱりバカかよ?なんだけど、きっとそう思う私が1番やばいんだろう。


気持ちが悪くなってきた。再びトイレに駆け込んだ。そうしたら、誰かが話す声がする。

「佐藤さんてさ、」

私の話だ。

「何でスネの毛剃らないんだろうね?ストッキングの下で渦巻いてるの、すっごく気になる」

「あー、分かる。それにデスク周りに某ゲームグッズ並べるのもなんか嫌。家でやれよって感じ」

うるさいうるさいうるさい。


お前たちもバカか、やはり私以外全員バカじゃないか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る