第19話 河童

 ある寒い冬の日、猟をしようと川沿いに山を登っていたら、一匹の河童が体育座りをしてぼうっとしていた。なぜ河童とわかったか、単純だ、頭に皿が乗ってたからだ。長髪の男が、頭に皿を乗せて座っていた。故に河童と断定した次第である。


「こんなところでどうした、河童くん」

そう問いかけると、河童は

「この皿、いいでしょう、ウェッジウッドの今年の新作なんですよ」

と答えた。なるほど、ウェッジウッドとやらの新作を手に入れたから、見せびらかしたいのか。

「そうかそうか、では新作の前は何のお皿を?」

河童は途端に顔色をなくし、深刻そうにこう語った。

「秘密ですよ?絶対言わないでくれますね?」

「わかったわかった」


「…じつはクレオパトラが焼きそばを食べたと言われる、エジプトのお皿だったんです。国宝級なのに下を向いたときに落としてしまって…。絶対秘密ですよ?!」


とんでもないことを聞いてしまった。


「それまずいんじゃないの、あんた。呪いとかなんか掛けられるんじゃないの、エジプトそういうの得意そうだし」

そう伝えると

「ばれてないばれてない、ばれてなければ大丈夫です、でも事が重大すぎて自分ひとりで抱え込むのが限界で。だから全く知らないあなたにこっそり打ち明けたんですよ、絶対に秘密ですよ!?」

「分かった分かった。それでウェッジなんだ、の新作を乗っけて、丸く収まってるんだろう?良かったじゃないか。秘密な、秘密」


家に帰って早速、妻に話してやった。

「河童の皿が新作のウェッジウッドでな、その前がなんと!クレオパトラが焼きそばを食った皿だったんだ、すごいだろう!」

「お父さん、もう分かったわ、分かったから横になりましょうね」

なんだ、反応が悪いな。

そう思いながら、○○デイケアセンターの車から降りた。

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