第18話 普通の正月

 今年と去年の不連続点はどこなんだろう。

正月を迎えるたび、つまり毎年1月1日0:00にそう思う。毎日が過ぎるのと何一つ変わらず、時計は滑らかに年をまたぐ。それなのに、この日だけは世界中の人々が等しく喜びはしゃぐのだ。

 ・・・こういう穿った考えばかりしているから、人から疎まれ人の輪から弾き出されるんだろうな。自覚はしているのだ。


「ゆみちゃん、何を考えてるの?」

隣で圭一が優しく問いかける。そう、私たちは神社の初詣にきているのだ。人がたくさん並んでいて、日付を廻っても鳥居をくぐれる気配すらない。

「ううん、新年だね!今年もよろしくおねがいします」

可愛らしく、彼が求めているであろう返答をする。

「いえいえ、こちらこそ。どうぞよろしくおねがいします」

背の高い圭一が、私に目線を合わせようと少し身をかがめて微笑んだ。

そう、これが正解。私が求める普通。興味があろうとなかろうと、正月に彼氏と一緒に初詣。圭一と一緒にいると、わかりやすい普通を演じていればいいので、とても楽だ。彼氏がいる、という事実自体も「普通」という名の膜となって私を包む。


今年も1年、普通に過ごせますように。

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