第17話 あたまがよくなるおくすり

 私はなんにもわからない。学校の勉強もわからなければ、人の気持ちもわからない。お医者様がいうには「仕方ない」んだって。仕方ないのに、お母さんはいっつも「なんでアンタはこんなに鈍臭いんだろうねえ」って言う。


 悲しくて、この間お医者さんに「頭のよくなる薬ください」って言ったら、「そんなのないよ」って苦笑いされたんだけど、さっき処方箋をもっていった薬局でもらった薬をみたら、「お薬の効果:あたまがよくなります。」って書いてあったの。それで、食後の薬だけど待ちきれなくって、今飲んじゃった。効くのかな。


・・・。


何故人は鉄棒で回転したがるのであろう。否、そこではなく人が鉄棒で回転するのに必要なエネルギーを回転モーメントと本人の質量から求めれば、誰しもが逆上りに苦労せずともよいというのに、なぜ体育教師はそんな簡単な考えにも至らないのか。そして、回転する本人上のxyz軸と我々のいる絶対座標軸XYZの間を介在する角度(φ,θ,χ)をもってすれば軸の変換なぞ容易にでき・・・


何故お母様はおびえたような目で私を見ているのか。頭がよくなるくすりは大変良く効いているではないか?このような娘を求めていたのだろう、満足するところだと思うのだが。

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