第16話 雪見酒
さて、どうしたものか。
足元には、ついさっき殴り殺した彼が転がっている。
こいつが買ってきた、スーパーの安いシャンパンの瓶で殴ったわけだが、その瓶もそろそろ置きたいのに、指に吸い付いたように離れない。
左手で、瓶を持っている右手の指を一本ずつ剥がす。瓶が落ちて、ガシャンと床にシャンパンが泡立った。
ぶくぶくと泡立って広がる、安いシャンパンを見つめながら、さてどうしたものか、と再び思った。
殺した原因は、彼が突然やってきて、本命の女の愚痴を言ったはじめたことだ。私が二番なのは知っていたから、普段だったら構わなかったんだけど、今日は大掃除が済んだあとだったから。
大掃除の済んだ部屋に、安いシャンパン―クリスマスで売れ残ってさらに安くなったやつ―を彼が持ち込んで、本命の女の愚痴を言い出したのだ。
(あれ、こいつも粗大ごみじゃね?)
と思ったら、始末してしまった。衝動的に。
ベッドで私に乗っているときよりも、はるかに重い彼を引きずって、ベランダに出した。雪が本格的に降り始めていて、蒼白な彼の顔にも降り積もる。生きているときよりもきれいだね、君。と、一人ごちながら、正月用に買ってあったちょっと良い日本酒を出した。雪はしんしんと降り積もる。ほろ酔いになりながら、いい景色だなあと白くなっていく彼を眺めていた。
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