第14話 ヤドンのような彼

 今日はいいお天気で、教室にもカーテン越しに暖かい日差しが注がれている。

一番窓際の男子が、ゆったりとした動作で腕を伸ばして欠伸した。いつもぼやーっとしていて、太いとは言わないまでもなんだかもっさりしていて、極めつけにポケモンのヤドンに似ている彼。変わった人だなあ、と思っていたけど接点もとくになく、心の中でヤドンと呼んでいた。


特に仲良くなるわけもないだろうと思っていたが、次の席替えで隣の席になってしまった。いや、嫌いなわけではないから、なってしまったというのは失礼なのだが、何を話せばいいというのか。やきもきしていたら、なんとヤドンから話しかけてきた。「いい天気だねえ、そういえば日本で一番有名な滝ってどこか知ってる?はい、答えはケンタッキーなんつって。ぶふっ」

「はあ・・・」


引きつっていたであろう私の笑顔を好意的に解釈したらしく、ヤドンのダジャレの洗礼を毎日浴びることになった。


洗脳というのかな。一か月後の席替えでヤドンが離れた席になり、ダジャレ攻撃を浴びなくなったら何かものたりなくなってしまった。そのうえ、近くを通ったとき、隣の女子に相変わらずのダジャレ砲をぶっ放しているのを聞いて、とてつもない怒りに似た感情を覚えた。私のところにきて言いなさいよ!と。


あれ、これ嫉妬?と思ったときにはもう遅い。

私はヤドンに恋をした。

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