第13話 科学者の験担ぎ

「先生、あの写真なんなんですか?」

研究室に配属された初日、実験室に案内されたら、オジサンの白黒写真が何枚も入口にぶらさがっていた。

「この人たちはな、うちの分野では神様クラスなわけ。あ、真ん中の先生はノーベル賞受賞者ね。んで、貼っておいた方が結果が出る気がして、古くなったら定期的に貼りなおしてるんよ」

「え、科学者なのに験をかつぐんですか?!」

「いや、大事よ?験とかジンクスとか。大体、我々科学者っていってもさあ、大きなくくりでは科学も宗教なわけ。太古の昔は天動説がまかり通ってて、地動説なんて異教徒じゃー!って扱いだったわけでしょ。今は技術が発達してるとは言え、科学を信じ、科学に身を捧げるわけだから、科学者は信徒だな」


よくわかったような、よくわからないような・・・。

先生の部屋には、神社で授けてもらったと思しきお札までが恭しく祭られている。


科学に身を捧げる、か。なんとなく神聖な気持ちになって、ちょっと頑張ろっかな、と思えた。

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