第3話 おそろい

 お姉ちゃんとおそろいの筆箱、ランドセルにワンピース。同じ机に同じ椅子。

でもお姉ちゃんはもういない、だいぶん前に死んだから。それでもお母さんはおそろいの、二つ同じものを買ってくる。お父さんは、いつも目をそらして何も言わない。


今年、私はお姉ちゃんの死んだ歳を越えたんだよ、お母さん。

もうお姉ちゃんよりも大きいんだよ、お母さん、お母さん、お母さん。


私の中に、お姉ちゃんを見るのはもうやめて。

ある日たまねりかねて、叫んでしまった。

「お姉ちゃんは死んだんだよ、お母さん!

 私はお姉ちゃんじゃない、私を見てよ!」


お母さんはゆっくりと私を見つめ、そして中空を見た。

焦点の定まらない目で中を見つめ続けるお母さん、額を抑えて座り込むお父さん。


そして、取り返しのつかない事態を起こした事実にようやく気付いた私が、静まり返った部屋のライトに照らされ続けていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る