005. ブリリアントな輝きで借金を返済したい件
――1週間後、研究室にて
アレス侯爵家の屋敷に自分専用の研究室を手に入れた俺は、用意してもらった紙と
研究室は北の窓際に勉強机のような作業台が1つある。東側には作成した魔法陣を整理する棚がある。西側はまだ何も置いていないが今後あるものを置こうと考えている。南側は部屋の入り口であり、応接用のテーブルとソファが置いてある。
紙と鉛筆はセロ兄さんとシル爺に手伝ってもらいながら搬入している。紙は木箱3箱分あり、魔鉄粉鉛筆は木箱1箱分ある。流石に3歳の俺には到底運べないため手伝ってもらっていた。
「セロ兄さん、シル爺、手伝ってくれてありがとうございます。僕のギルドが利益を出したら何かお返ししたいと思います。」
全ての木箱が部屋に運び込まれたので、俺は2人を労った。
「いえいえ、トール様とまた一緒に遊べると思えばこんなの全然平気だよ。お返しなんていらないよ。」
「私もアレス侯爵家の執事として当然のこと。お返しなど必要ありません」
2人とも本当に良い人なんだよな。こんなに愛されていてトールは恵まれているな。
魔鉄粉鉛筆の発注も2人が一緒について来てくれた。
冒険者ギルドで魔鉄を購入して、材木ギルドで端材を購入して、それを細工ギルドに加工してもらって。
はっきり言って全然楽しくないはずの行程なのにセロ兄さんはずっと笑顔だった。それはもうハーフエルフの美少年の笑顔はドキドキするくらい可愛かった。
・・・俺そんな趣味ないはずなのになぁ
新たな可能性を開いてしまいそ、いやそれはない、はずだ。
シル爺はギルドとのやり取りを率先してやってくれた。俺がシル爺に魔鉄粉鉛筆の説明をすると必要な魔鉄・端材の量を算出してくれて、細工ギルドの人たちにもわかりやすく説明してくれた。
本人は「アレス侯爵家の執事として当然」と言い張っているが、あれは執事の域を超えていた。海千山千の商人のようなコミュニケーション能力を発揮していた。それは初老の紳士なのにかっこいいと思ってしまう程だった。
さて、紙15000枚と鉛筆50ダース600本の合計額は、
ちなみに紙は植物紙で値段は1枚1000テネット
1枚1円以下のコピー用紙を使っている現代人からすると高すぎだろ!!ぼったくってるんじゃないのか??と思うがこの世界で紙は高級品らしい。こればっかりは仕方がない。
魔鉄粉鉛筆は魔鉄と加工賃が高かったため1本5000テネット
600本も1週間でよく揃ったなと思うが、細工ギルドに依頼するとギルドに所属する数々の細工店が加工してくれる。幸い繁忙期ではなかったようで、1週間での納品という快挙を達成してくれた。
「それじゃあ借金を返すために一仕事するか」
「お!トール様、早速始めるんだね。僕も見てていい?」
美少年に見られるの、悪くないだろう
「私はお茶を持って参りますので一度退出させて頂きます。」
俺は魔鉄粉鉛筆を手に取り、作業台の上に置いてある紙に向き合った
初めて実践する【
ダイヤモンドである
ダイヤモンドはC、炭素の同位体だ。
Cを立方体状に共有結合させた構造を持つ。
俺はダイヤモンドの構造を強くイメージする。
すると紙にうっすらと魔法陣が現れた
現れた魔法陣をなぞるように魔鉄粉鉛筆を動かしていく。
・・・出来た!!
これで魔法陣は完成した。あとは魔力を込めるだけ。
鉛筆を置く
魔法陣に手をかざして魔力をこめていく
10秒後、キラキラと光る魔法陣の上には一辺10cmの透明な立方体が鎮座していた
・・・ミスったぁあああ!!!
この魔法陣では魔力を込めれば込めるほどにダイヤモンドが成長してしまう
これ何カラットだよ。拳くらいあるぞ。
はい、やり直し
チラッと横を見るとセロ兄さんが楽しそうに立方体を見てる。
まだ、ばれてない。
「失敗してしまいました。セロ兄さん、この魔法陣は棚にしまっておいて下さい。あとこのサイコロは屋敷の裏の焼却炉に放り込んでおいて下さい。」
そう言って俺はセロ兄さんにこの魔法陣と巨大ダイヤモンドを片付けさせる。
「分かったよ、ちょっと捨ててくるね」
この時セロ兄さんが大切そうに巨大ダイヤモンドを持っていたことを俺は全く気づいていなかった。
その後すぐに俺は魔法陣を改良した
よし、成功。
小指の爪くらいのサイコロ状ダイヤモンドを量産できる仕様に変更できた。
次にダイヤモンドを加工していく
加工はダイヤモンドにおける最強の方程式「ラウンドブリリアントカット」を利用する。
これは1919年ベルギーの数学者マルセル・トルコフスキーが考案したもので、光の反射率や屈折率を計算しダイヤモンドが最も美しく輝く形を理論的に導き出したものだ。
俺は理想の58面体をイメージする。
するとまた紙の上にうっすらと魔法陣が浮かび上がる。
俺は浮かび上がった魔法陣をなぞるように魔鉄粉鉛筆を動かしていく。
・・・出来た!!
小指の爪くらいのサイコロダイヤモンドを魔法陣の上に載せて魔力をこめていく
キラキラと光を放った後、そこにはブリリアントカットされたダイヤモンドが燦然と輝いて存在していた
成功だ。
「お坊ちゃん方、お茶を持って参りましたよ、って何ですかそれは!!!!!」
速攻でバレた
「最強のダイヤモンドなのです」
「いやはや、ダイヤモンドとはここまで美しく輝くものなのですか。これもトール坊ちゃんの
「おそらく今後もこういうことが続くと思うので、あまり驚きすぎて死なないようにしてくださいね
できれば慣れてもらえると嬉しいです。」
「ううう、これもアレス侯爵家の執事としての務め。私はなるべく驚かないように努力いたします」
本当に、頑張って欲しい
部屋のドアが開く
「トール様、サイコロ捨てて来たよ、ってそれ、めちゃめちゃ綺麗だね!!!!」
「そうなんです、最強のダイヤモンドなんです。カットの仕方は細工ギルドに売り付けようかと思っています。そうですね少なくとも1億テネットくらいにはしたいところです」
数学者マルセルさんの知識ではあるが異世界なので許して欲しい。
「い、い、1億ですと!?!?!」
驚かないと誓ったシル爺は10秒後に驚いていた。
「あっ、失礼いたしました。驚かないよう以後気をつけます。」
頬が赤い。老紳士のくせに可愛いところがある。
・・・って、だから俺そんな趣味ないからな!!
「このカットはラウンドブリリアントカットと呼ばれる最強の加工なのですが、設計図を譲ることで細工ギルドと良い関係を作ろう思っております。
1億テネットと聞くと高いと思ってしまいますが、この加工を施すだけでおそらく100万テネットくらいはダイヤモンドの価値が上がるので100個売れば回収できます。逆に安すぎるくらいなのです。」
「トール様、すごい!!僕はトール様とまた遊べるって楽しみにしてたけど、今はそれ以上に楽しいよ。僕に手伝って欲しいことがあれば何でも言うんだよ!」
セロ兄、ありがとう
「お母様お抱えの商人が来週来るようなので、そこでブリリアントカットを施したダイヤモンドを買い取ってもらってもらいます。思ったよりも価値がなかったり、価値が高すぎた場合は値段を調整します。」
「爺はもう何も言いません。ブリリ、何とかカットができても、3歳児には到底できない大きな数の計算ができても、もう爺は何も言いません。トール坊ちゃんがここまで成長なされたことを素直に喜びましょう。アレス侯爵家の執事としてこれほどの幸せはないのです!!!」
シル爺は自分に言い聞かせるようにそう言ったが、セロ兄さんのようになるべく早い段階で慣れて欲しい。
俺はこの世界の文明を進歩させると創造神に誓った。
こんなのはただのお小遣い稼ぎだ。
俺はその後10個ほどダイヤモンドを作成した
【トール所持金】
-1800万テネット(魔鉄粉鉛筆と紙 -1800万テネット)
魔鉄粉鉛筆:魔鉄という魔力の伝導性がある物質を使った鉛筆。これを使って魔法陣を描くと効率的に魔法を発動できる。
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