あやかし双子のお医者さん




「これ! おいしいです!」

 リンドールをはむはむと頬張った靫正が、たまらずといったていで叫んだ。

「坊ちゃん。しゃべるのは食べ終わってからだよ」

 その横でサクヤが呆れたように言う。「そんなにお気に召したなら、俺のぶんもぜひどうぞ」

「リンツね~。お高くない?」

 ふむふむと晴が、まるいチョコレートの包みをがさがさとあける。晴だが中身は嵐だ。剥いたチョコレートは球形でそこそこ大きいのに、嵐は容赦なく口に放り込んだ。もぐもぐしながら、にやあ、とする。完全に表情が嵐だった。

「値段相応のおいしさだと思うけど」

 莉莉はそう言いながら、棚に置かれた刀の前に、リンドールを置いた。それから手を合わせる。すると、姿を見せていた兼光が、目をぱちぱちさせた。

『……こ、これは……甘い、ですね……』

 それで兼光にも味がわかったようだ。

「僕もこれは好き」と、人間の姿をした理人が、食べ終えてからにっこりした。

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