第18話 アオバ都市のトップカンパニー
ユイ達三人は予定より遅い三日掛かりで、荷車の荷台いっぱいに家具や食器などの日用品を集め、やっと街が見える地平線上にまで戻って来た。
遠くからでも見える街の郊外に、超巨大な何かが停まっていることに驚き、先を急いだ。
「三日掛ってやっと街に戻って見れば、すごい超巨大な車両が止まっているね」
「あれはタイヤなのかな? すごい大きいタイヤ、わたしより大きいよ」
「上の砲台もすごくいっぱいある」
ユイ達は巨大な戦車のような、巨大な戦闘装甲車のような、超巨大な車両を見上げながらローズマリーの拠点に戻った。
「「「 ただいま~ 」」」
「あ! ユイさん達、お帰りなさい」
ユイ達三人がローズマリーの拠点に戻ると、キョウコだけが残っており他の皆は出掛けていた。
「ねぇキョウコちゃん、街の郊外に止まっている巨大なもの何て言うのかな? あれはどうしたの?」
「あれは陸上巡洋艦って言うらしいですよ。私、すごく大きくて、また街が襲われるんじゃないかと心配しましたけど、アオバ都市で活動しているハンターカンパニーみたいです。何でもアオバ都市トップのカンパニーらしいですよ」
「へぇ …そのトップの人達が何で街に来たんだろうね」
「さぁ? …私ずっと工房に閉じこもっていましたから、分からないです」
「キョウコちゃん、偶にはお外に出た方が良いよー」
ユイ達は荷台に家具や食器を積めるだけ積んで帰って来たので、三人だけでは積荷を降ろすのは大変だと思い、荷下ろしをキョウコも手伝って四人で荷台から倉庫へ運んだ。
「キョウコちゃん。お土産にイノシシのお肉だよー。あとでチサトに料理してもらおうねー」
「三匹も狩って来たから、いっぱい食べられるよ」
「うん。飽きるまで食べられる」
「はい! 楽しみです!」
そう言うと三人はイノシシ肉を冷蔵箱の中に仕舞い、また荷下ろしの作業に戻った。
「キョウコちゃん、わたし達の車、荷車いっぱいにしてけん引すると、動力機のパワーが足りなくて、負担かけながら帰って来たから、後で見てね」
「うん。良いけどヒロミちゃんとサトミちゃんの車は基本戦闘用だから、荷物を引っ張るような力がないの。また同じ事をすると動力機に負担かかちゃうんだよ」
「そーかー。 小型戦闘車は荷物運ぶのに適していないのか…何か車買った方が良いのかな?」
「「 うん! ユイちゃん買おう! 」」
「そうだよね。 護衛依頼の報酬金も入ったし良いよね」
「ユイさん達が出掛けてから、ハルカさんも同じこと言ってました」
「こんにちわ~ 何方かいますか~ こんにちわ~」
「は~い~」
声がする方向を見たらマナの両親だった。
「いつもマナがお世話になっております。
ユイさん、少しご相談したい事があって覗ったのですけど、よろしいですか?」
「はい、良いですよ。何です?」
「はい。実は私たちのハンター用品店を再建のために、頑張っていたのですけど…私たちの店が街の再開発地区に入ってしまったのです。
店の売却費は入ってくるのですが…その売却費だけでは店を再び建て直すことが困難で…店の売り上げも悪く、ハンター用品店の再建を諦めたのです…
諦めたのは良いのですが、私たちは長年ハンター用品店の仕事しかいていないので、他所で働く事も適わなくなってしまいまして…。
そこで、マナがお世話になっているローズマリーの店で、私たち家族一家をまとめて雇ってもらえないか、と御相談に来たのです」
「なるほど…事情は分かりました…」
ユイは顎に手を乗せて考え込んでいる。キョウコ、ヒロミとサトミもユイの顔を見ながら考える
「私達ローズマリーとしても、マナちゃんのご両親が働いてもらえるのは心強いです。
只、私達は初めて店を構える事になるので、いろいろ分からない事があるので、皆に相談してから連絡を入れます」
その後、ローズマリーの店の現状を話してから、マナの両親は深く頭を下げ帰っていった。
「キョウコちゃん、皆はどこにいるの?」
「皆さんは街に行っていると思います」
荷下ろしを終わらせ、街の様子を見学しながらユイは街を散歩している。
拠点から出て商店街からハンターカンパニーの拠点が多く集まる地域、他の都市から来た人達が泊まるホテル街など散歩しながら、街の様子を見ていると、街の郊外に停めている陸上巡洋艦の他にも各都市から多数のハンターが来ていた。
そのハンター達は街の開発関係には見えないし、観光に来た様子も無く疑問に思いながら街の様子を見るように歩いていた。
ユイが散歩しながら街の様子を見ていた頃、コウは飲食店街の狭い区域内にある、ハンターご用達の二十四時間営業しているBARにいた。BARは酒の提供の他にも食事も提供している。
そのBARに、男女三人連れの一組の客がカウンターで酒を飲み食事をしていた。
「マスター、この街の食い物は何でも旨いな」
「はい、ありがとうございます。この街は農業都市だから他の都市よりも多くの農産品が市場に流通しています。農業の他にも、数少ないですが鶏や牛の畜産もしているので、街にも僅かながらも流通しています」
「なるほどな。旨い食い物、温泉、第八北東農園都市をリゾート計画にするわけだ」
三人組はマスターと話をしながらも、店内の奥で一人ひっそりと本を読んでいる人物に目をやった。
「あいつは… もしかして武神か?」
コウは事前情報通りに、街に来たハンター達の様子を本で目隠しをしながら見ていた。
情報ではヒライズ都市遺跡へ向かうハンターを利用して、開発計画の一つであるリゾート計画が進められることになっている。
街に来ているハンターはヒライズ都市遺跡に潜むマッスル・レディー討伐のためで、街には補給などを行うために来ていた。それらのハンターカンパニーがどの都市から来たのか、どの程度のカンパニーランクなのか偵察しにBARに来ていたのだ
三人組のもう一人の女もコウを見た。
「少し姿が変わっているようだけど、武神ね」
三人の内二人の男女はコウが座っているテーブルに向かった。
「よう! 武神、久しぶりだな!」
コウは話しかけられても本を読んでいる。
「俺だ。忘れたのかコウ」
「うるさい! 私は本を読んでいるのだ。
静かに読書をしている奴に声をかけてはいないと言う常識を失ってしまったのかライズ、クリミ!」
「って言うか本を読むようになったのか?」
「この街に来てから読むようになった。本は良いぞ。いろいろな知識を教えてもらえる。貴様らも読んだ方が良いぞ」
「コウ。私達はもうコウの部下じゃないのよ」
「知っている。昔の誼みで助言をしただけだ」
「アハハッ。久しぶりの再会だと言うのに相変わらずだな。
こっちは武神であるコウ代表が抜けてから大変だったんだぜ。コウが重要な依頼を請け負っていたから、伝手のない俺達は信用が無いまま重要な依頼を受けることができなくて、一時期カンパニー解散の危機まで陥った。
でもまぁ、俺とクルミが努力したおかげで信頼を得ることが出来、クライアントから信用されるまでに至り、現在に至っているって訳だ」
「知っている」
「コウ。じゃあ、あの仕事は諦めたの?」
「いや、諦めていない。諦めてないからこそ、今こうしている」
「俺達では役不足って訳か?」
「いや、役不足ではない。役不足では無いが、もしそうなった時には被害が大きすぎるのだ。
現に、今の私でも修行中なのだ。何度も言ったはず。わかってくれ」
「あぁ。そのことなら俺達は諦めた。だが…」
コウと男女二人が深刻そうに話を進めていると、コウから連絡が受けたユイがその場に来た。
「コウお待たせ。 その人達コウの知り合い?」
「うむ。昔の誼みだ」
「おいおい、昔の誼みなんで酷いじゃないか。せめて昔の親友とか昔の仲間とかって言ってくれよ」
「ユイ。そういう仲だそうだ」
「ん~…。 コウが前にいたカンパニーの人たち?」
「そう。そうだ。コウが代表をやっていて俺とクルミが幹部をしていた。今は俺が代表をしていて、クルミが副代表をしている」
「じゃぁ、アオバ都市トップのカンパニーさん?」
「あぁそうだ。改めてトップカンパニーって聞くと照れくさいが、サーフランカンパニー代表のライズだ」
「同じく副代表のクリミよ。よろしくね」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。私はローズマリーカンパニーのユイです」
「噂は聞いているぜ。その噂の現実も見た。からくり十兵衛。あの戦闘は俺達が見ても素晴らしかった」
「私達が若かった頃は、あんな戦闘できなかったよね」
「ん? 若い頃? 今でも若いように見えるけど…」
「ユイ。その二人は見た目若いが年寄りだ」
「コウも女性だけど、女性に向かって年寄りなんて酷い! 私が年寄りならコウは生きた化石じゃない。
ユイさん、私達は長寿族なのよ。私達が生まれたてホヤホヤの頃に、コウのカンパニーに入ったからコウは生きた化石なの!」
「じゃぁ世代を超えた歴戦のハンターなんだ。コウと同じく強そう~」
「で、ライズ。 他の高ランクカンパニーも来ているようだが、どうしてこの街に来た? 私を呼び戻そうとして来た訳ではないのだろう?」
「その言い分だと事情は知っているみたいだな。
そうだ。ローズマリーカンパニーを誘いに来た。ヒライズ遺跡の賞金首マッスル・レディー討伐だ。
ハンターオフィスからその依頼も来てはいるが、もう一つ別の依頼も受けている。
ヒライズ遺跡の調査だ。
前触れもなく現れたマッスル・レディーに関する調査だ。どうだ? 一緒にやってみないか? 俺たちは心強い仲間がほしいのだ」
「ライズさん。マッスル・レディーに関係する依頼は、私達のカンパニーランクでは受けられないの」
「わかっている。サーフランカンパニーからローズマリーカンパニーに依頼を出すとしたらどうだ?
もちろん報酬金は、ローズマリーカンパニーが納得する金額を出す!」
ユイとコウは顔を見合わせた。
「ライズさん。一つ聞いていい?
サーフランカンパニーには超人はいる? もし居たとしたら、その超人にかすり傷一つも受けないで無傷で圧倒的に勝つ事は可能?
私達のカンパニーにも超人はいるけど、私達はその超人に無傷で勝つことは不可能なの。勝つとしたらこちらも相応の傷を負わないと勝てない…」
「なるほど… こちらもマッスル・レディーは知性があると判断している。
ユイさんも知っているのだな。巨人型モンスターは人間科超人族をモデルに作られていることを。
旧世界から現世界に入る黎明期に何故だか解らないが遺跡を警備するシステム、そして謎のモンスターが作られたと言われる言伝え。
謎のモンスターに関しては、環境を再整備するためだとも言い伝えられ、趣味で作ったとも言われているが…。それらに対応するために、人間も改造していることも」
「はい。知っています。学校で習いました」
「学校? それはアオバ都市の?」
「はい」
「・・・・・・・・・・・。
そうか…俺は是非ともローズマリーと共闘したかったんだが、仕方がない。
ユイさん。気が変わったら何時でもいいぜ。俺達は心強い連中ならいつでも歓迎だから」
サーフランカンパニーのライズとクリミは、ユイと連絡先を交換してからBARを後にした。
BARを出た後、人が少なくなった通りで…
「おい。ライズ、諜報部の俺からしたら、いろいろしゃべり過ぎだ」
「いや。良い。 こちらもローズマリーの強さがわかった気がするから」
「でもよ、ハンターの中には統治機構の軍上がりもいるが、ローズマリーに関する事はしっかり調べたと思っていたのに、あのお嬢ちゃん、まさか統治機構管轄の幹部育成学校出たとはな」
「バータ。諜報の長がそんなで大丈夫か?」
「調べても出てこねぇもんは、出てこねぇよ…」
「出てこねぇって、俺、極秘でローズマリーを鹵獲しろって依頼受けているんだけど…まぁ成功報酬だからな。
しかしよ。共闘どころか、ローズマリーは慎重だな。コウがいるなら何とかなると思っていたが…
ヒライズ遺跡…。
こっちも慎重にやらないと被害が大きくなりそうだ。もう一度、作戦シミュレーション見直してみっか」
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