第14話 からくり十兵衛とローズマリー
キョウコは映し出された『からくり十兵衛』の映像を情報通信システムで処理して、レーダーと映像を立体化させ、照準システムに送った。
これで高度な精密射撃できる。
ハルカは照準システムをさらに補正して、狙いを定め60㎜レールキャノンを二連射で放った。
着弾予想は、からくり十兵衛の胴体と右腕上の四連式ロケットランチャーだ。
ハルカが当たると思った瞬間、閃光が奔り、ハルカが放った二つのレール弾が落とされた。
からくり十兵衛の武装は腕だけでは無く、腹部分にビーム砲も埋め込まれていた。
「なんでよ!!」
ハルカはレール弾を迎撃したビーム砲に苛立つ。
三千万ゼニークラスの賞金首は、ビーム砲など高火力の武器を持っていないのが定説だったからだ。
その定説を踏まえ考えられることは、ローズマリーがからくり十兵衛と接敵する以前に、からくり十兵衛は高レベルのハンター達と戦い、高レベルのハンターを討ち破り吸収していたことになる。
荒野や遺跡などで倒れたハンターや倒したモンスターを放置すると、餌を求めてやって来たモンスターがそのまま飲み込んで吸収してしまう。
そう言った特性から、からくり十兵衛は高レベルのハンターと高武装を丸ごと飲み込み吸収して、姿恰好を改変していると考えられたからだ。
レーダーでビーム痕の解析を進めると、からくり十兵衛のビーム砲に対してこちらのビーム砲が威力は高い。
しかし、からくり十兵衛との距離は遠く、大型8輪駆動戦闘装甲車の40㎜ビーム砲の射線角度が、まだからくり十兵衛に照準できない。
ビーム光線の射線は一直線だ。惑星は円球で丸い。
まだ地平線の向こうに、からくり十兵衛がいる。
ハルカは歯を食いしばりなから、チサト達に向けて撃ってくる対戦車ロケット弾を20㎜光弾連射銃で撃ち落とし、60㎜レールキャノンを連射した。しかし、ビーム砲で落とされている。
「ハルカさん。チサトさんが有効距離圏内に入りました!」
チサトは、支援砲撃で背後から迫ってくるレール弾の弾速音を聞きながら、頭上では対戦車ロケット弾を20㎜光弾連射銃の光弾が撃ち抜き爆破する中、ロケット弾の爆発や地面の凹凸でバイクが暴れるのを強引に力尽くで押さえつけ、一直線にからくり十兵衛に向かい、からくり十兵衛の姿が見えていた。
だがバイクのニ連射式20㎜光弾砲の射角が、からくり十兵衛に入っていない。それはバイクのニ連射式20㎜光弾砲の取り付け位置がバイクの特性上、低い位置に設置していたからだ。
それがやっと、バイクに搭載されているニ連射式20㎜光弾砲の有効照準距離まで縮めていた。
チサトはバイクの二連射式光弾砲を照準に合わせながら、背に掛けて持っていた電子エネルギー弾の光弾とビーム兵器が合体した複合式ライフルを構え、二連射式20㎜光弾砲と複合式ライフル両方の引き金を引き、光弾を放つ。
光弾が一直線にからくり十兵衛に向かう。
からくり十兵衛が放った光弾に気づき、横に大きく動き躱す。
同時に、からくり十兵衛が両下腕のガトリング砲をチサトに向け、連射してくる。
ガトリング砲の連射速度はあまりにも早く、弾丸が連なっているかのように弾光の線が見える。
チサトは超人の剛力でバイク強引に急旋回させて、線に見える弾丸を躱し続けながらも、手に持っている複合式ライフルを構えビームで応戦し、二本のガトリング砲の射線から逃れ、からくり十兵衛の側面側に移動する。
チサトの複合式ライフルから放たれるビームは、からくり十兵衛に直撃はしないが、からくり十兵衛のガトリング砲もチサトには当たらない。
その攻防も変わって来る。
からくり十兵衛の動きが素早い。しかし機動力ならバイクが上だ。
チサトが超人の剛力で強引に旋回し駆け回り、チサトの動きにからくり十兵衛が遅れ始め、チサトの射撃が直撃するようになっていた。
チサトが狙い定めた一直線のビーム光が、からくり十兵衛に直撃しビーム光が弾ける。
しかし、からくり十兵衛の装甲が赤くなっただけで、ダメージを全く受けていない。
チサトは複合式ライフルを撃った瞬間に、ビーム光の着弾を確認しないまま次の攻撃に向け、からくり十兵衛の背後に回り、今度はバイクの二連射式光弾砲を撃つ。
二つの光弾がからくり十兵衛の背後で爆発した。
背後を撃たれたからくり十兵衛は少し前方によろけたが、すぐに体勢を立て直し、チサトに振り向き二本のガトリング砲を連射する。
しかし、そこにはチサトはいない。すでにチサトは移動していたからだ。
からくり十兵衛の反対側面に急旋回していたチサトは、複合式ライフルのエネルギーを貯め、チャージしていた光弾をからくり十兵衛の右腕上、四連式ロケットランチャーに向けて射撃する。
チサトは四連式ロケットランチャーを射撃しロケット弾の誘発を誘ったのだ。
チャージされた光弾が四連式ロケットランチャーに直撃し爆発した。
四連式ロケットランチャーは表面を赤くしただけで健在している。
「くっそ! なかなか硬い装甲しているじゃないか!」
チサトが狙い通りに行かないことを悔しがっていると、違う方角から四連式ロケットランチャーに三連の光弾が着弾、エネルギー爆発した。
コウが腕に持っている三連式大型20㎜光弾砲を撃ったからだ。
チサトに引き続き、コウもからくり十兵衛に攻撃を開始した。
四連式ロケットランチャーは、三連の光弾による攻撃で表面が赤くなっているが、まだ健在している。
コウは三連式大型20㎜光弾砲を撃ちながら、チサトの方へバイクを進め、チサトはからくり十兵衛の背後に向けバイクを転進する。
からくり十兵衛は空中にジャンプしながら、二本のガトリング砲をチサトとコウに向けて連射する。
チサト、コウは頭上から連射される弾丸を右へ左へと急旋回を繰り返し、線上に綱なる弾丸を躱し、複合式ライフルと三連式大型20㎜光弾砲の光弾で反撃する。
ジャンプしているからくり十兵衛は光弾を避けることが出来ずに、胴体に光弾が直撃する。
胴体から光弾の花火を撒き散らし光弾の威力で吹き飛ぶ。
吹き飛びながらも、からくり十兵衛は胴体を紅く染めながら体勢を立て直し、四連式ロケットランチャーのロケット弾をチサトとコウに放ち、続けざまにガトリング砲を連射した。
チサトは複合式ライフルで、コウは三連式大型20㎜光弾砲でロケット弾を撃ち落としながらも、ガトリング砲を連射を避け、バイクの二連射式20㎜光弾砲の射線をからくり十兵衛に向け発射する。
チサトとコウの攻撃は直撃するが、からくり十兵衛の装甲が赤くなるだけでまだ装甲を破れずにいた。
チサトとコウがバイクを駆け廻し、激しい攻防を繰り返している最中、からくり十兵衛が大爆発した。
ヒロミとサトミが乗っている小型戦闘車も戦闘域に入り、車両を自動運転に切り替え、サンルーフから身を乗り出したヒロミとサトミが爆炎術式をからくり十兵衛にぶつけたのだ。
爆炎術式をぶつけられたからくり十兵衛から土煙が立つ。
その土煙の中に一台のバイクが突撃する。ユイだ。ユイはハルカの母から譲り受けた大太刀、桜華刀を抜いていた。
ユイは大型浮上バイクをジャンプさせ、からくり十兵衛に斬りかかる。下から上に桜華刀を振り抜き、からくり十兵衛の腕元から四連式ロケットランチャーを斬り落とした。
桜華刀に斬られた四連式ロケットランチャーが大きな音を立てながら地面に落ち、ユイのバイクも着地する。着地したユイはそのまま急転してバイクのニ連射式20㎜光弾砲を放つ。
後方から向かってくる光弾を背にした、からくり十兵衛は前方へジャンプし躱す。前に宙返りしながらガトリング砲をチサトとコウに向けて、腹部にあるビーム砲をユイに放つ。
からくり十兵衛が攻撃した直後、からくり十兵衛の頭上で大爆発が起きた。
ヒロミとサトミがカウンターで、爆発術式をぶつけたのだ。
その隙にユイ、チサト、コウはからくり十兵衛の攻撃を躱していた。
からくり十兵衛の全身は紅く染まり、白い煙が立っている。
それぞれが動きを止め睨め会う。互いが沈黙し、間合いの取り合いになり緊張感が奔る。どちらかが先に動いた瞬間、攻撃が放たれる。
その時、からくり十兵衛の足下から大きな業火柱が立った。
沈黙を破ったのはヒロミとサトミだ。
ヒロミとサトミはからくり十兵衛を焼き尽くさんと、業火術式を放ったのだ。
ユイはバイクのニ連射式20㎜光弾砲を撃ち、コウがバイクのニ連射式20㎜光弾砲と三連式大型20㎜光弾砲を撃つ。
火柱の中で大爆発が起きた。
火柱と爆発の中、からくり十兵衛が身体を燃やしながら上へ大ジャンプした。
その時を狙っていたかのように、チサトがバイクの二連射式20㎜光弾砲と最大チャージした複合式ライフルのビームを撃ち、からくり十兵衛に直撃する。
さらに、後方から来た大型8輪駆動戦闘装甲車の40㎜ビーム砲、ビーム二射も直撃した。
からくり十兵衛の胴体に大きな穴が開き、そのまま真っ逆さまに崩れ落ち倒れた。
「意外と装甲が結構硬かったな」
「うむ。腹にビームを仕込んでいたから、高レベルのハンターでも飲み込んでいたのだろう」
チサトとコウは倒れているからくり十兵衛を脚で突っつきながら、からくり十兵衛が動かないか確認している。
「それにしてもハルカ! 市長が乗っているのに大型8輪駆動戦闘装甲車で突っ込んでくることは無いだろう。
おかげで、私の見せ所が無くなったぞ」
「うむ。私も新調した身体をもっと試したかったのだが…」
大型8輪駆動戦闘装甲車からハルカ、マイ、キョウコも降りて来ていた。市長も降り、賞金首との戦闘の激しさの痕跡を見て驚いていた。
「何呑気なこと言っているの。市長が乗っているからこそ、早く倒さないといけないんじゃない」
マイとキョウコが倒れているからくり十兵衛を検分している。
「キョウコ、マイ、どんな感じ?」
「はい! いろいろ使えそうです!」
「ボディも冶金の精度が高いから、高値で売れそうね」
ユイ、ヒロミ、サトミは何も言っていないのに、大型8輪駆動戦闘装甲車から折り畳み式の簡易トレーラーを取り出し、せっせと組み立てていた。
折り畳み式簡易トレーラーは、もし車両が故障した場合に、搭載するために積んでいたものだ。
「ハルカちゃん! 組み立て終わったよー」
「サトミ、私はまだ何も言っていないわよ」
「ハルカちゃん、いつも通りだよねー」
「ヒロミ、私はまだ何も言っていないわよ」
「ハルカちゃん、無理してま~す」
「ユイ!」
「ハルカ君。賞金首はハンターに取って戦利品ではないかね。私は座って見ていただけだが、こんなすごい賞金首を倒した君達を誇りに思う」
市長は戦闘の痕跡を見た後に、亡骸となったからくり十兵衛をじっくりと見ていた。
「では市長、依頼中なのに、からくり十兵衛を持って帰っても良いと?」
「あぁ、良いだろう。誰も君達を咎める事はできない」
「ハルカ、許可出たし、陽が沈む前に、さっさとからくり十兵衛を乗せちゃおう!
それから早めの夕食にしようよ」
「そうね。昼食はキャラバンで食べちゃったから、ホテルに無理言って作ってもらったお弁当まだ食べてないし…」
「マイさんそうですよね。私もお弁当が食べたいです」
「「 食べたい! 」」
「仕方がないわね。皆でさっさと積み込んでしまうわよ。
キョウコは、情報通信システムのレーダーを最大に拡大して。それから各車両のレーダーを通常に切り換えて。そうすれば、広い範囲で小さいモンスターまでも索敵できるから」
「はい! では、私はレーダーを設定しますので、みなさんは積み込みと夕食の準備をお願いします」
「「「「「「 は~い 」」」」」」
遠くの方でローズマリーの戦闘や様子を一つのハンターカンパニーが双眼鏡で覗き見ていた。
「あれが噂の第八北東農園都市にいるカンパニーか…」
「あぁ…からくり十兵衛の討伐報奨金を、今回の依頼の資金にしようと思っていたが…
武神がいるとは言え、なかなか手際が良い戦闘だな」
ローズマリーはワイワイ騒ぎながら夕食を済ませ、市長の護衛帰還のため、そして、自分たちの拠点がある第八北東農園都市に帰って行った。
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