第12話 第八北東農園都市へ帰還
翌日、第八北東農園都市に市長を護衛帰還の予定は、午前八時出発になっていたが、朝早くに市長が本都市統治機構に呼ばれ、予定より二時間遅い、午前十時に出発した。
午前十時出発では街に戻る頃には、深夜近くになる。
夜は日中のモンスターより面倒なモンスターが出現するので、より一層注意しなければならない。ローズマリー一同は、市長を安全に帰すために気を引き締めた。
アオバ都市から離れ、地平線から高層ビル群が消える頃。
離れていく高層ビル群を見ていたキョウコは、名残惜しそうにいつまでもアオバ都市の方向を見ていた。
キョウコは初めてアオバ都市に行き、二週間という短い時間だが、アオバ都市の景観や都市の住まう住民、ハンターの姿がとても印象に残っており、最終日に行ったテーマパークは、感動や絶叫など人生初となることばかりでとても楽しかった。
ハルカの実家も短い間ではあったけど大変お世話になって、今更だけど情が込み上げていた。
楽しかった時間があっという間に過ぎてしまって、どこか残念そうにしているキョウコをハルカが見た。
「キョウコ。お父さんが言ったでしょう。いつでも来なさいって、だからいつでも行けるし、多分だけど用事が残っているから、また行けるわよ」
キョウコは、ユイが当代に頼み事をしていたことを思い出し、また行ける機会があるとその日を楽しみにして一度首を大きく頷き、前を向いた。
「すまないね。四週間の予定が、随分早まって予定期間が半分になってしまった。君達もまだやりたい事が残っていただろうが…私も思っていなかった方向に進んで驚いたのだよ」
市長は予定が早まった理由を話し出した。
「本都市の取締委員会に、第八北東農園都市の被害状況及ぶ被害金額の報告が一日で終わり、その後の復興額、復興計画並びに期間の報告も一日で終わった。
本都市に行く前にデータのやり取りはしていたのだが、私が予測した以上に早く終わり、私が用意したデータ以上のことは何も言われなかった。
私はこれで責任者として責を問われ、市長の役から外されると思っていたのだが、その翌日に取締委員会に出向くと、私の責は問われないことになった。
取締委員会の席に第八北東農園都市の大出資者であるモリナカ農産社も交えて、第八北東農園都市の今後の会議に変わったのだ。
取締委員会とモリナカ農産社は、復興計画を取りやめ、復興では無く新たに都市開発、農地拡大計画、農場プラントを増改築させ、農産物の増産を計画。それに合わせ、食品加工場も拡大することになった。
事件前の第八北東農園都市から本都市に供給している農産物は、全体の半分程度だか、増産することでアオバ都市以外の都市にも供給する計画だ。それらの予算はモリナカ農産社が出資することになる。
農産物の増産に伴い、人や物を今以上に動かすことになる。
統治機構からは新たに第八北東農園都市の予算拡充して、本都市統治機構から支援金を出資するところまで事が運んだ。
さらに、統治機構は中小企業の集まりである企業連から旅行会社を募り、第八北東農園都市のリゾート計画までも計画している。
ほら、街には温泉が湧くだろ。その温泉を湯治旅行に利用するとのことだ。
その湯治旅行計画は早急に作ることになっている。何でも賞金首が関係していることだからだ。
君達の事だから、もうすでに知っていると思うが、ヒライズ遺跡の賞金首は桁違いの高額に設定される。桁が違う高額の賞金首と言うことは討伐にも時間が掛る。
ヒライズ遺跡は、第二東海岸都市の方が近いが、第八北東農園都市からも半日で行ける距離にある。
その賞金首を利用して、街の都市開発を早めるということだ」
ピピッ、ピピッ、ピピッ…。
キョウコが通信情報レーダーを覗く。
アオバ都市を離れ、何事もなくしばらく走っていたら、情報通信レーダーにハンターキャラバンの反応が示された。
通信管制に座っているキョウコが首を傾げながらハルカに問う。
「ハンターキャラバンってなんです?」
「ハンターキャラバンは、荒野に出ているハンター向けに行商をしているハンターカンパニーのこと、別名でハンターキャラバンって呼んでいるの。
ハンターキャラバンは武器弾薬などを売りながら、屋台をやっていて食事も提供しているわ。遺跡や荒野に長期間滞在しているハンターなどが良く利用しているの。数あるキャラバンでも美味しい食事を提供しているキャラバンは、特に人気があって商売繁盛しているわ」
ハルカがキョウコの隣に移って、情報システムを操作する。
「あっ。このハンターキャラバン、人気があるキャラバンじゃない。でも何でこんなところにいるのかしら…」
「ハルカ~。お腹空いたよ~。ハンターキャラバンに寄って行かない?」
「ダメよ。今は市長の護衛帰還の依頼中なんだから」
「ハルカ君、旅はまだまだ長い。街に到着するのは深夜になるだろう。日が暮れ夜になるとモンスターが強くなり、君達はより一層、警戒心や注意力が必要になる。しかし、まだ日中だ。私はハンターキャラバンと言うものに寄って行っても良いと思うのだが…
実は私もどんな食べ物を提供しているか、少し興味がある」
「あら市長。それは依頼かしら?」
「あぁ。依頼というよりも必要経費に勘定して請求した方が良い。備考欄に『市長が希望のため』とか書けば尚更良い」
ローズマリー一行は市長を含めて皆の希望で、ハンターキャラバンに寄って行くことになった。
キャラバンは中心に簡易テントを数台張り、その周りに武器弾薬、回復薬に備品用品、調理場に別れている3台の大型トレーラーを止め、幾つかの戦闘車両を配置して、キャラバンに来る人、食事をする人用に、周りを厳重に警備している。
このキャラバンを情報通信で調べると、名が通っているカンパニーなので、警備は大丈夫だろうと判断して、ローズマリー一行と市長はキャラバンの屋台で昼食をする。
「いらっしゃい! 今日のおすすめは、とてもジューシーな天然肉で作ったハンバーガーだよ。美味しいよ~。
あれ? この辺では見かけないカンパニーだけど、何処から来たんだい?」
「第八北東農園都市です」
「第八北東農園都市… そのシンボルマークどこかで見たような…」
「親父。今話題になっている、あの噂の有名なカンパニーだ」
「おお。そうか。そうか。これはこれは、光栄なことだな。
そうか~あの有名なカンパニーか~…
改めて、はじめまして。キャラバンこと『ミチバカンパニー』の代表ロクロウだ。よろしくなっと!
お~い、みんな! 有名なカンパニーがうちに来てくれたぞ! 折角だから自己紹介しておこう」
ミチバカンパニーのロクロウは初老に見え、陽気で明るく話し方が優しい。ロクロウの仲間達もロクロウと同じく陽気で明るく話し方が優しかった。人気キャラバンになった要素の一角なのだろう。
武神のコウを覗いて、ローズマリー一同は有名、有名と連呼されて、少し照れを感じたが改めて自己紹介されたので、ローズマリー一同も自己紹介をした。
市長は自分の事のように喜んでその様子を見ていた。
「ハンターカンパニーに統治機構の制服…… 事情は大体判っから、しっかり警備してやるよ。ゆっくりキャラバンを楽しんでくれよ」
ローズマリー一行は、おすすめのハンバーガーと人工野菜たっぷりの焼きパンを注文した。
注文した品が出来るまで、キョウコは初めて訪れたキャラバンを目を輝かせて見て周り、マイもあまり訪れた経験がなかったので、物珍しそうに見て周っている。
ユイとハルカは各都市を旅していた時に、いろいろなキャラバンを訪れており、コウは長いハンター稼業しているのでキャラバンを知っている。チサトとヒロミ、サトミは第一南都市出身であるため、第一南都市には多くのキャラバンがあり、キャラバンを良く利用していたので、市長を中心にしてテーブルで注文した品を待っている。
「ハルカ。このキャラバンのカンパニーランク調べられるか?」
「ちょっと待て…」
ハルカは通信端末を大型8輪駆動戦闘装甲車の情報通信に繋ぎ調べた。
「判ったわ。カンパニーランク60ね」
「そうか。高ランクだな。では、この先、気を付けながら進んだ方が良さそうだ」
「ルートを変えるもの手だが…」
いろいろ見て周っていたマイが戻ってきた。
「六か月前くらいに、私が前に所属していたカンパニーは、賞金首討伐のために準備していたのだけど、倒されて準備していたのがおじゃんになっちゃったのよね…
その賞金首が現れる場所が、確かのこの辺だったはず…。
倒されたのは六か月前。定期的に現れる賞金首だけど…再び現れるのは少し早いような…
出発前にも依頼を確認したけど、賞金首の討伐は載っていなかった…」
「その賞金首は?」
「『からくり十兵衛』。からくり十兵衛は、何の突拍子も無く定期的に現れて、ハンターオフィスに指定されている賞金首よ。
現れる姿が千差万別で、共通するのは大型の人型機械人形ってだけ。
時には大きなソードを何本も持って素早く動いたり、装甲だらけの重装甲だったり、銃火器を何本も生やした重武装していたり、現れるたびに違う恰好しているから『からくり十兵衛』って名前なんだけどね」
「今、調べたんだけど賞金額は… 三千万ゼニーだわ」
「結構な強さだな」
「うん。結構良いジャンク品が取れるわね。センサー系に砲身系… ボディも高く売れるじゃない!」
「ハルカちゃん。やる気で~す」
「やる気になっているよね~」
「ハルカ、依頼中だよ。さっき私に言ったもんね!」
「うむ。ユイよ。からくり十兵衛はまだ依頼が出て来ないことから、まだ噂の段階だ。賞金首討伐は早い者勝ちだから、ハンター達は噂の段階で探し当て倒そうとしているのだろう。依頼が出てからでは、多くのハンター達が集まり、その分、賞金を得られる機会が減ってしまうからな。
現時点では、出ないかも知れないし、出るかも知れないと言うことだ」
「みんなどうする? 迂回して安全なルートで行くか、このままのルートで行くか」
「私からも良いかね?
迂回して安全なルートを通るならば、街に辿り着くのが朝方になる。君達を信用しているが、警戒心、注意力が散漫になり、安全なルートが安全ではなくなる恐れがある。
しかし、このままのルートで、もしその賞金首に出合い頭になってしまった場合は、君達ローズマリーカンパニーは難なく倒すだろうと思っている。賞金首を倒した後なら、警戒心、注意力はさらに上がり、街に帰るまでその警戒心、注意力は継続し、安全に街に帰る事が出来るだろう。
そこで、私は今聞いたことを全て無かったことにしよう。
君達ローズマリーカンパニーは護衛帰還中に、たまたま賞金首に遭遇してしまい、安全に逃れるのが困難になり、戦闘することになった。ではダメかね」
「ありがとう! 市長!」
「市長に貸しができたわね!」
「六か月前の貸しを返してやる!」
「うむ! やる気が出て来たな!」
「久しぶりの賞金首。燃えてくるな!」
「「 ドッカン、ドッカンやっちゃうよ! 」」
注文した品がテーブルに運ばれ、キャラバンを見て周っていたキョウコがパタパタと走って戻ってきた。
ローズマリー一同を見回したキョウコは
「どうして、みんなさん、突然やる気になっているんです?」
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