第11話 できごと報告会と『賞金首マッスル・レディー』


 その夜、コウから定例の報告会前にローズマリー一同に通信が入り、身体をアップデートしている事、サイボーグセンターの博士から聞いた全ての情報を報告した後に、今日から二週間合流できないと報告された。


「ねぇコウ。想像が思い付かないのだけど、身体を改造したらどうなっちゃうの?」


「多分あれだよ」

「そうあれだよ。身体がすごーく大きくなって、如何にもゴテゴテの機械が動いていますって感じになるんじゃないかな」


『アハハ。ヒロミサトミ、残念だったな。身体の中身は変わるが、外見は今と一緒で何一つ変わらないぞ』


「そうなんだ。良かった! 身体が変わってコウですって言われても解からないもんね」


『アハハ。ユイは変な所を心配するのだな。

 まぁ二週間後を楽しみにしていてくれ。じゃぁな』


「お大事に」


 コウと通信を終えた後に、みんなホテルのレストランで今日のできごと報告会をしながら食事をする。


 ハルカとキョウコは、ハルカの実家で見て触った最新の技術や都市で流行になっている兵装兵器の話をした。


 ユイはハルカの実家から一人離れて親の墓参りに行き、その後、都市で流行っているツブツブ食感のジュースを飲みながら、お洒落な洋服店が並んでいる通りを歩いた話をした。


 ヒロミとサトミは、テーマパークに行って、すごく楽しかった絶叫マシンの話をして、ユイと盛り上がっていた。


 遊んでいた三人を白い目で見ながら、チサトとマイは、コウからの報告を交えて、ハンターオフィスで聞いてきた情報の話をした。


「じゃあ、今日のまとめはキョウコちゃん。お願いね」


 急に「まとめ」と言われたキョウコは戸惑ってしまった。


 キョウコは、前カンパニーでは一番下っ端だったから、皆の前で意見を言う立場に無く、大勢が集まる場所で人の前に立って話した事がなかった。

 ローズマリーに入ってからも、できごと報告会に参加をしていたが、今までまとめをしたことがなかったからだ。


 それに合わせて、いろいろハンターとして力量不足をキョウコ自身が知っていたので、皆に訓練を頼み訓練に付き合わせたりしていた。

 特にユイは快く受け入れ、ユイの射撃は他のメンバーよりあまり上手では無かったが、戦闘中の身体の動かし方、攻撃のタイミング等は誰よりも丁寧で、上手に教えてもらっており、ヒロミとサトミも笑いながら良く付き合ってもらっている。


『これも訓練の一環。 よし! がんばろう』


 キョウコは深い深呼吸してから、話をまとめた。


「え~と、まとめます。

 初めにテーマパークは、滞在期間中に絶対行きたいと思います」


「「「 やった! 」」」


「ユイさん、ヒロミちゃん、サトミちゃん冷静に! 

 それから…

 コウさん、マイさん、チサトさんの情報ですと、私達の街をモンスターが襲った原因が第二東海岸都市管轄のヒライズ遺跡に潜んでいる巨人女型賞金首クラスが関係していると思われます。


 その巨人女型賞金首はまだ詳細不明ですが、現在判っていることは、無双して第二東海岸都市のハンターを倒し続けていて、モンスターを操っている可能性があります。

 アオバ都市は裏で、トップクラスのカンパニーに調査依頼を出していて動いているとのことです。


 これは私の予測ですが…


 もしトップのハンター達がヒライズ遺跡いる巨人女型賞金首クラスの攻略を諦めた場合、再び私達の街にモンスターを使って、襲ってくるのではないかと思っています。


 なので、私キョウコは待機期間中、ハルカさんの実家でメカニックの勉強をさせてもらえる約束をしましたから、再び街を襲われる前提で皆さんの武器を作りたいと思います。


 引き続き、マイさんを中心にヒライズ遺跡の情報収集をお願いします」

 

「キョウコ、話し方が少し堅いわよ。もう少し勉強が必要ね。

 それから皆の武器を作るなら私も交ざらないといけないわね。だって、皆の武器メンテしているのは私なんだし、作る場所も私の実家なんだもん」


「キョウコちゃん。私たちもあの防御障壁が欲しいな~」


「キョウコちゃんお願いね!」


「それなら、私も欲しいぞ!」


「私、ちょうど武装の見直しして、買い直そうとしていたところだから、今使っている物より強力なのが良いな」


 皆の様子を見て、ユイはニッコリ笑顔をつくった。


「キョウコちゃん、まとめたいへん良くできました! 

 みんな拍手~」


 パチパチパチパチ…


「えっと、みんな、がんばって情報集めお願いね。

 キョウコちゃん、皆の分作るのは大変だから、私のは最後で良いよ。ハルカのお母さんから刀をもらったから。

 じゃぁ、御飯も経費に入って後でもらえるから、デザートも注文しよう!」


「「「「「「 おおう! 」」」」」」


「ヒロミとサトミあとユイ。しっかり情報を集めるんだぞ! いつも遊んで怠けるからな」


「いつも遊んでばかりじゃないよ! ね!」

「「 ね! 」」


 できごと報告会を終えたローズマリー一同は、再びワイワイガヤガヤおしゃべりして今日一日が終わった。


 次の日からマイ中心に情報を集め、十日過ぎた頃から新しい情報が入らなくなった。



 十二日目の夜、ホテルのレストランで定例のできごと報告会を開きながら、今まで集めた情報をまとめた。


 ヒライズ遺跡で暴れている巨人女型賞金首クラスは、ヒライズ遺跡の中央にあるストロベリービルに潜んでいて、ストロベリービルからモンスターを操っている。操れているモンスターは機械型、大型、生体型、昆虫型などだ。ハンターオフィスでヒライズ遺跡のモンスターを調べると、そっくりそのまま元からいるモンスターを操っていることがわかった。


 そうした状況の中、命からがら生き延びて生還したハンターの話によると…


 巨人女型賞金首クラスは、身長10m超で全身筋肉がムキムキ。

 ムキムキの身体を自慢するように、ぴっちりレオタードを着て良くポーズを撮っている。

 遠くから見ると美人に見えるが、近くから見ると二本の牙を生やし、怖い顔をしている。


 その戦闘能力は、12㎜ライフル銃の弾丸をマッサージされているかのように、気持ち良さそうな顔をして受け止める。

 戦車の砲弾をハエ叩きのように叩き落し、戦車をボール変わりにリフティングし、最後、蹴りで戦車が吹っ飛び大破する。

 持っているバッド棒をフルスイングすれば、戦車が遥か彼方まで飛んでいく。


 そういう特徴からハンターたちの間では

『マッスル・レディー』

 と呼ばれていた。


 そのマッスル・レディーは、そのままの名で近々賞金首に指定され、賞金額は十億ゼニー以上と話が流れていた。


 賞金首討伐に向かうことが出来るのは、高レベルのハンター及び高ランクのカンパニーのみに依頼が限定される。

 ハンターオフィスから依頼が出ないカンパニーは、汎用討伐依頼を受けヒライズ遺跡の付近でモンスターを狩っても、報奨金は出ない。


 そして、高レベルのハンター及び高ランクのカンパニーは討伐の準備をしている。

 ある一部のカンパニーには調査及ぶ討伐依頼が出されていると、噂になっていた。



 ユイはまとめた話を聞いて、しばらく沈黙した後、ローズマリー全員に告げた。

 今日はコウも通信で参加している。


「皆良く聞いて。

 ローズマリーは高ランクのカンパニーでは無いし、今の時点で賞金首討伐に向かうことができるのは、高レベルのハンター、高ランクのカンパニーに限定されているでしょう。

 街が襲われた原因とも言われていて、もし私達の街からローズマリーに協力要請で、マッスル・レディー討伐依頼が来ても、何が何でも絶対に断る!


 だって私が学生の時に、巨人型モンスターは人間科超人族をモデルに作られているって教わったのね。


 マッスル・レディーは通常の巨人型モンスターの動きではないって、話を聴いただけも判断できるし、知力もある。教本通りならチサトより五倍大きいマッスル・レディーの強さは、少なく見積もっても、チサトの五倍も強さがあると思う。


 みんなの中で五倍チサトに勝てる人はいる? 私は勝てないよ。皆は勝てる?」


 皆は黙ってしまった。ユイが勝てないと言った相手に誰が勝てるというのか。コウも身体を強化しているが戦闘能力五倍のチサトとなるとかなり難しい。一同をシーンと沈黙してしまった。


「五倍チサトちゃんに何て勝てないよ~」

「う~ん勝てない~」


 ヒロミとサトミは、チサトの身体をペタペタ触りながら言った。


「そうね。五倍チサトに何て勝てないわよね~」


 ハルカもチサトの身体をペタペタ触りながら言った。


「私は見た瞬間に、木っ端微塵にされると思います」


 キョウコもチサトの身体をペタペタ触りながら言った。


「う~ん~ 五倍チサトって言われても、私は想像できないな…」


 マイもチサトの身体をペタペタ触りながら言った。


「おい! 何でみんなして私の身体に触る!」


 チサトは、皆に身体を触られて鬱陶しく感じ、怒りを露にした。


「だって五倍チサトだよ」


 ユイもチサトの身体をペタペタ触りながら言った。


『アハハ…チサトよ。諦めろ。いつものことだ。

 私も五倍チサトは難しい。

 だが、皆が知っている通り、私はある人物を倒すために今身体を強化している。その人物は五倍チサトより断然に強いかもしれんが、諦めたらそこで終わりだ。皆、励め!

 街の統治機構からマッスル・レディー討伐依頼が来る前提で励め!

 しっかり身体作りして準備することに励め!

 そして、しっかり武装を整えることだ。大事なのは諦めないことだ!』


 皆にペタペタ身体を触られ鬱陶しく感じながらも


「なんだよ~。コウが今日のまとめをした感じになっちゃったじゃないか! 私はおちか~」


 ピピッ、ピピッ、ピピッ

 ユイの通信端末が鳴り、着信先を見ると市長からだった。


『ユイ君、夜分遅くにすまないね。四週間の予定が大分早くなり、あさって二日後に街に戻る事になった。

 君達も予定が有るだろうが、帰る準備をしていてくれ』


 コウが言っていた通りになった。


「コウ、今の話聞こえた? コウの言っていた通りになったよ。それまでに戻れる?」


『ああ、問題ない。こちらもその予定で進めていたからな。明日の昼には合流できるはずだ』


「じゃぁユイちゃん。明日はみんなでテーマパークに行こうよ~」


「コウちゃん、すごーくおもしろい絶叫マシーンがあるんだよ」


『私でも楽しめるのか?』


「あれー、何でコウもノリノリになっているのよ。うん! 決まったわね。明日は皆でテーマパークだわ!」


「おい! ハルカまで。それでテーマパークは超人にも似合う場所なのか?」


「チサトにも似合うよ。前からアオバ都市に来た時は、いつか行ってみたいと思っていたところなの~」


「今からワクワクして、すご~く楽しみです!」


「よ~し! 初日に決めていたことだし、明日はみんなでテーマパークを思いっきり遊ぼう!」


『「「「「「「 おおう! 」」」」」」』


 こうして、コウが合流した後、テーマパークに行くことになった。


 翌日、コウと合流する前に、アオバ都市の高レベルのハンターカンパニーは、第八北東農園都市のハンターよりかなりレベルが高いので、アオバ都市に拠点を持つ高ランクのカンパニーの拠点を覗いて、戦闘車両や兵装類などどんな物を持っているのか視察した。


 その後、待ち合わせ場所でコウと合流し、テーマパークに行き、ヒロミとサトミがおすすめする絶叫マシーンを皆が楽しく乗り、アオバ都市滞在、最後の終日をワイワイと騒ぎながら過ごした。


 ローズマリー一同がテーマパークからホテルに戻った頃には、夕食の時間を過ぎており、お腹が空き過ぎていたローズマリー一同は、ホテルに着いた途端、レストランへ直行し、アオバ都市最後の晩餐会としてワイワイ騒いだ。

 ホテルのレストランは豪華な食事だけでなく、コウも飲める機械生体油もある。しかも、高価な果実味でコウも最後の夜を楽しむのであった。


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