第10話 コウのからだ

 コウは独りで行動をしていた。

 別に仲間外れになった訳ではなく、今日の予定はローズマリーの皆にも知らせている。


 コウは機械化した体のメンテナンスするために、昔からの友人であり、信頼できる同志とも言える博士が所属しているサイボーグセンターに出向いていた。


 コウはアオバ都市を離れてから体である機械を大分アップデートしていなかったので、あの襲撃事件を切っ掛けに思ったことをするためにサイボーグセンターに行ったのだ。


「コウさん、お久しぶりですね」


「あぁ、博士、ご無沙汰しているな。今日はメンテナンスとアップデートをしようと思ってな。最近の機械化はどうだ? 

 何か私にぴったりのものがあるか?」


「はい。おかげさまで忙しくさせてもらっています。

 コウさんにピッタリなものもありますよ。少しばかり高額になりますが、予算の方はいかがいたしますかな?」


「予算なんか気にするな。 

 今の体の出来が良すぎて、今までアップデートせずとも済んだのだ。その分予算がある」


「なるほど。今回も前回と同じようなオーダーで?」


「いいや。今回は違う。

 体の大きさは今と同じ小さめでより高機動型にしたい。機動殻で足りないパワーと機動を補うと思っている」


「なるほど。体を高加速重視のバランスにして、機動殻で最高速を上げ、さらにパワーも上げる感じでよろしいのですね」


「そうだ」


「コウさんの体は今でもトップクラスの出来なのですが… さらに性能を上に上げる。こちらとしては申し分ないオーダーですけど、何かあったので?」


「博士…  貴様、博士と申すものが知らないのか? 

 私が今いる街で起こったことを?」


「はい。良く存じております。しかし、今の体でもサイクロプスやミノタウロスごときでは何の問題もないかと」


「あぁ倒すだけなら問題はない」


「では…討伐数でございますかな?」


「そうだ」


「やはり…

 コウさんの討伐数約四百で二位。二位以下五位までは僅差でありましたな。しかも同じカンパニーのハンター同士。

 都市のハンターも噂になるほど驚いておりますよ。一つのカンパニー、しかも小規模カンパニーがほとんどを倒したのですから。

 まぁ、コウさんがいれば出来ない事もないでしょうけど、驚くのはコウさんより上のハンターがいると言うことです…」


「ふん。まだまだ情報不足だな」


「なるほど。 …この程度の情報では私に任せられないと言うことですな。

 ならば、討伐数が一位の女子は、この都市の出身者。さらに言うならば、その女子の父親は、元統治機構軍の基本格闘術の講師をしていた師範人で、家柄が伝統剣術家でございます。


 女子の御両親は荒野流行り病で亡くなっており、その女子が今伝統剣術家を継いでいる。

 御両親が亡くなった当時は、女子がまだ学生で剣術が未発達、その実力不足から都市からは親の仕事に対する恩赦がなく、女子は泣く泣く親の財産を売りながら何とか学業を終えることができた。


 それから都市に愛想が尽きたのか都市を離れ、各都市を旅しているうちにハンターになり、現在の都市に移ってカンパニーのリーダーをしている。 

 コウさんが今所属しているカンパニー、ローズマリーのリーダーですな。


 ここまでは、よくある話で納まりますが…


 女子の逸脱した能力は、各地点々としながらどんなモンスターでも無傷で剣で斬り倒し、単独で賞金首までも無傷で斬り倒していること…

 今では正式にでは無いですが、第八北東農園都市ハンターオフィスの中では、裏で剣豪の称号があるとかないとか…」


「私が知らない情報も少しばかり混じってはいるが、その情報と私の体に何が関係している?」


「…なるほど …過去の情報より未来の情報を知らねば、私に任せられないと言うことですな。

 ならば、大軍のモンスターが第八北東農園都市を襲った原因。

 それは、第二東海岸都市の管轄にあるヒライズ遺跡に現れた巨人女型モンスターが絡んでいると噂が立っております。その巨人女型はなんでも戦車を一振りの一撃で大破するとか…。


 確実に知り得る情報では、戦車砲の180㎜徹甲弾を素手で跳ね返し、数多くのハンターを返り討ちにしている。時期に高額の賞金首になることは確実になっております。

 そして、狂暴かつてない巨人女型は『ヒライズ遺跡』その周辺にいるモンスターを巧妙自在に操ることが出来、地元のハンターも手が出せないほどにやられていると聞いています…。


 不思議ですな。なぜモンスターがモンスターを操れるのか…。


 …私が知っている過去と照らし合わせれば、コウさんも知っているあの狂信ドクターが絡んでいるのはないかと私は思っております。

 数十年ヤツの姿が確認出来ていなく、死んだのではと思っていたのですが、狂信ドクターの姿が消えてからは、モンスターがモンスターを操る事象は起きておりません。


 しかし、今、現に起きている。


 ハンターオフィスや統治機構、さらに大企業連も狂信ドクターが絡んでいると知れば、必ずや動きます。


 いや動いています。


 現にこのサイボーグセンターには、トップクラスのサイボーグたちが稼いでいる金額以上の予算で、アップデートの見積もり、予約をしているのですから…」


「それで、どうする?」


「はい。コウさんたち、カンパニーの事情は存じております。

 予定では四週間掛かる市長の報告のあとに決裁を行うことになっておりますが、決裁は何もなく時間を掛けずにすぐに終わります。

 市長の報告から決裁までの期間は約二週間でございます。

 二週間後にコウさんたちのカンパニーは市長を連れて、また町まで戻ることになります。私の仕事はその二週間でコウさんの体をきっちり仕上げる事です」


「できるのか?」


「はい。できます。武神と言われるコウさんが昔から当社を何回もご利用してもらえるおかげでサイボーグセンターは大きくなり、大企業連の伝手も繋がり、統治機構にも繋がったのですから」


「さすが回し者だな」


「はは… 体は今夜から創り始められますが、機動殻の方は少しばかり時間をください。まだ、コウさんに見合うものがシミュレーションできておりません。出来次第、取り掛からせてもらいます」


「博士…

 あやつ狂信ドクターはどのくらいになっていると思う? 

 …昔、私はあやつに散々ひどい目に合わせられ、そのたびにここを訪れていたのだ。

 …今度こそ、あやつを仕留めて見せる」


「はい。巨人女型がまだどの程度の強さかはっきり知り得ておりませんが、前より技術を向上させているのは、はっきりとわかります。


 研究施設で禁断の技術を隠れながら研究をして解雇になり、解雇になったその恨みで、研究した禁断の研究を持ち出し、禁断の研究技術を荒野の遺跡内部で、さらに研究技術を進めて使い、都市に被害を出させている。


 同じ施設で研究していた私としても許せる行為ではありません。


 我々もあの当時から大分技術が向上しております。今回こそ仕留めるためにサイボーグセンター全技術を持って、しっかり身体を仕上げさせてもらいます」


 コウと博士は問診した後、コウ専用の処置室に入っていった。


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