第16話 イケメン②

 1か月の間に一人っ子だったわたしに可愛い弟(無性別)と……イケメン執事みたいな妹(両性具有)ができました。


「あのさー、ヴェヴェ。色々と問題があるからもう一緒にお風呂はダメね!」


「仲の良い姉妹が一緒にお風呂入ることに問題があるのかね?」


 わたしの……わたし達の部屋(4畳半の和室)で紅茶を入れてくれるヴェヴェ。


「戸籍上は妹にしたんだろうけどさー、見た目は成人男性だからね……しかもイケメン執事。女子高生とイケメン執事が一緒にお風呂入るのは淫行条例に抵触するから。イオはいいけどヴェヴェはダメ。」


 わたしに抱っこされているイオを見てヴェヴェが不満そうな表情を見せる。


「では……私は誰と入浴したら良いのかね?姉君。」


「いや、ひとりで入ってよ。ヴェヴェの身体を見た人が驚くでしょ!」


 自分の言葉に風呂でのことを思い出し、顔が熱くなる。ヴェヴェは無言のまま眼鏡を外すと三段ベッドの一番上に登っていく。もうほとんど天井に付くくらいの高さだ。


◇◇◇


「本当ね。戸籍データベースに妹が書き込まれているわ。見て。」


 大体結果は見えていたけど、次の日わたしはハニワに妹ができたことを報告する。ハニワのスマホ画面を見る。


 『氏名:ヴェネディクト=ヴェルツリー / 生年月日:95087年722月7128836日 / 性別:女』


「また訳わからない生年月日だし。」


「鈴木家の二女で洋名って。多分だけど『ヴェルツリ―』が『鈴木』を表しているんでしょうね。少しは考えてるみたい。」


 ハニワに言われるまで分からなかった。なぞなぞですか?


「それと、生年月日は弟の『鈴木ゐを』と全く同じね。双子ってことかしら?」


 いや、あんな双子は嫌だ。弟は小学生くらいで、妹は長身イケメン執事。そんな二人が双子な訳ないでしょうに。


「妹は長身で耽美なイケメン執事。あと両性具有です。」


「アンドロギュノスですか。興味深いです。うっ……何かが干渉してきた。」


 ハニワは頭を押さえて動かなくなる。


「お姉ちゃん。」


「ここでしたか、姉君。」


 学校の屋上でまさかの声に振り向くと、イオとヴェヴェが立っていた。


「ふたりともどうしたの!?」


「イオ達も学校に行くことにしたから。」


 イオの服が変形して男子のブレザーとズボンになる。ヴェヴェの服は女子のブレザーとスカートになった。


「ちょっと、どっちもおかしいって!そんな子供と大人な高校生いないってー。」


「このふたりが鈴木さんにできた兄弟なんですね。いま記憶の改ざんをされました。もうこのふたりは我が校の生徒で、学年とクラスは鈴木さんと同じです。アタシの記憶はブロックチェーンのコピーから改ざんの影響を免れましたが……。」


 わたしは全く理解できなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る