第17話 時間①

 ジリリリリリリリリリーーー!!


「うーん、朝かぁ。あと……」


◇◇◇


「この『時計』というのは『時間』とやらを示すものだったか?」


 起きたら14時過ぎだった。スマホに学校からの着信履歴が何度もあった。


「ヴェヴェ……何時に起きたの?」


「何時?済まないが『時間』というものが分からない。」


 手にした目覚まし時計を眺めるイケメン。それはそれで絵になる。妹だけど……。


「起きてたなら起こしてよー。イオは?」


「イオ?あぁ、アレは学校へ行ったぞ。」


 イオはイオで自分だけ登校するとは。これはおしおきだな。


「何故『時間』などというものがあるのだ?姉君よ。」


「何を言っているの?」


 ヴェヴェの話では『時間』はこの地球の文明にしかないとのこと。他のどの文明にも『時間』なんて概念は無いらしい。さすが宇宙の外から来た妹は何を言っているのか意味不明だった。


「でもさぁ『時間』が無いと困るでしょ?」


「困る?『時間』が無いと人類は絶滅するのか?」


「いや、そうじゃないけど。」


「『時間』が無いとこの世界は消滅するのか?」


「いや……そうじゃないけど。」


「『時間』が無くても困らないではないか?」


 確かに『時間』という概念が無くても人類の生存に影響はない。時計だって原始時代からあった訳じゃない。この地球と人類にとって『時間』という概念が無い時代は確かにあったのだろう。


「でも、『時間』が無いと学校の登校時間が分からないから遅刻しちゃうし、電車やバスの来る時間も分からないよ。見たいテレビ番組もライブ配信も見逃しちゃうよ。ほら困るでしょ?」


「そもそも人類個々は『時計』無くして『時間』を違わず認識できていないではないか。認識に個体差がある時点で曖昧な概念だし、『時計』とやらも個々の性能でバラつきがある。とても正確な『時間』を共有できているとは思えない。そんな不安定な『時間』に意味が見出せないし、それに縛られていること自体……人類には不利益だとすら思う。『時計』を捨て『時間』を無くすことが人類の進化につながる。そうは思わないか?」


 ヴェヴェはこういう奴なのか。面倒くさい……。


「今更『時間』は無くならないよ。そういう意味不明な話はさ、ハニワと朝まで話し合うといいよ。わたしにはよく分からないし、どうでもいいし。今は先生に何て言い訳するかで頭がいっぱいだよ~。」


 ヴェヴェはそれ以上何も言うことなく……三段ベッドの一番上に登り布団に入ってしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る