第9話 ぼっち飯①
昼休み。トイレから教室に戻る時、階段を昇るハニワが見えた。上は屋上。
「一人で何してるんですかー?ハニワさん。」
屋上の貯水タンクの影で一人お弁当を食べるハニワに声をかけるわたし。
「昼食です。鈴木さんこそアタシに話しなら通信で良いのでは?」
24時間監視されており、24時間いつでも語りかければ答えてくれるハニワだからこその台詞だ。わたしはそんなことを改めて言われたくはなかった。ぼっち飯に赤面する顔が見たかったんだけど、そんな表情は露ほども見せなかった。何か悔しい〜!
「わたしもお昼だよ。よいしょっと。」
ハニワの隣に座りお弁当を食べる。ハニワはわたしを見ていたがすぐに自分のお弁当を食べ始める……黙々と。そして沈黙。あれ〜気まずい。ふたりいるのにぼっち飯な気分……。
「そういえばさ、わたし兄弟ができたんだ……昨日。」
昨日の出来事を話す。
「まぁ、ウォッチしていましたから知っていますよ。鈴木さんの様子がおかしかったのでちょっと調べましたが……弟さんのことですよね?」
「弟?いや、自称で妹なんだけど。」
イオは女の子と言った……いやその場で選択した感が拭えないが、何でハニワはそんなことを言うの?
「戸籍上の性別は『男』になってますよ。ほら。」
ハニワはスマホをわたしに示す。画面には……
『氏名:鈴木ゐを / 生年月日:95087年722月7128836日 / 性別:男』
いや、性別なんてどうでも良くなる内容ですけど!
「何、この生年月日!?」
「そうなんですよ。役所のミスだと思ったのですが……データ登録日は昨日。多分、鈴木さんの前に現れた時点でご家族など近しい人間には昔から居たという認識が植えられたのかと。アタシのように鈴木家のことを知らない人間の記憶には影響はない。ただ、戸籍データには登録されるということは、超常的な力で弟さんがいた現実に書き換えられたと考えられますね。」
何ということだろう。破天荒な生年月日に目を奪われたが、それと同じ位に……『ゐを』って昔の人間の名前かよと驚愕した。あんなに可愛い容姿が台無しだよ~!
「ハニワには言っておくけど、ゐを……もといイオに性別は無いんだ。男と女を区別する特徴が無かったんだよ。分かるかな?」
『ゐを』も『イオ』も発音は同じだが、文字で見てしまうと言い難くなる気がしたので、わたしの中では『イオ』にする。
「性器が無い……ということですか?それは……人類ではないということですかね。」
ダイレクトな表現だ!敢えて表現をぼかしたわたしの努力を返せ!!
「でも悪い子じゃないと思う。可愛いし。あの顔でお姉ちゃんと言われるとキュンキュンするんだ~!」
「人類以外にもときめくとは、鈴木さんは器が大きいですね。」
アンタも十分に人類とかけ離れていると思うが。
「ハニワ、アンタ……イオを拉致して解剖とかしないよね?」
「興味はありますよ。でもまぁ、その異人類を溺愛する鈴木さんの怒りを買って殺されたくないですから、当面は様子を見ます。」
わたしはハニワにもう一つの話をする。
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