第6話 兄弟②
二段ベッドの上段がイオ。わたしは下段らしい……昔から。いままですーっと一人で寝ていたから、自分の上に別人が寝ているなんて初めての体験。昔からこうだったらしいんだけどね。
しかし……上にいるイオ。悪意は感じられないけど普通じゃない。人間を擬態しているけど男女として肝心の部分がスッキリと無かった。お風呂で洗いながら、湯船に浸かりながら話を聞くがさっぱり要領を得ない。
色々と考えて寝付けないわたしは視線を感じた。上段から見開いた目でこっちを凝視するイオ。可愛い顔が台無しでむしろホラーだった。
「ちょ!?イオ、どうしたの?ちょっと……かなり怖いんだけど。」
「お姉ちゃん……一緒に寝ていい……かな?」
少し戸惑いながらもわたしはイオを招き入れる。危険を感じれば、わたしの力でイオを消すだけだったから。
「お姉ちゃんはイオと最初に会った時を覚えてないよね?」
「今日のこと?」
首を振るイオはわたしと額を重ねる。奇妙な音が響き、わたしの記憶の底から浮かび上がってくる。そうだ、これは何故か忘れていた記憶。
◇◇◇
その夜、いつものようにひとり自室で熟睡していると、夢のように身体が軽く浮く感じを覚える。それは『幽体離脱』だった。浮遊を楽しんでいると、突如わたしの中に聞いたこともない、音なのかすら怪しい音が響き、意識を持っていかれる。
瞬きをしただけなのに……わたしは宇宙に移動していた!慌てたけど、息苦しくないのが分かると落ち着くことができた。
「幽体って呼吸しないんだ。寒さも暑さも感じない。便利だなぁ。そして、地球マジ青いし!」
眼下に地球が見えた。結構小さい。
また音が響く。さっきよりも音が大きい。一瞬、意識が途切れ……移動していた。わたしの周りには暗黒の闇だけが広がり、遥か遠くに楕円形の光がいくつか見えた。
「あの光は……銀河!?何か……ちょっと怖いんですけど。」
更に大きな音が聞こえ、意識が混濁する。
どれくらいの時間が経ったのだろう?気付くとわたしの前に……色という概念が当てはまらない世界が広がっていた。所々に黒い塊があった。わたしのすぐ前にもあった。触れようとするが幽体が触れることはない。黒い塊の中には無数の光が点在していた。何となく直感で分かる。
「この黒い塊は……宇宙?」
わたしは多分、宇宙の外に来てしまったんだと分かる。しかもわたし自身がかなり大きくなってると感じた。何故なら宇宙全体がこんなに小さいのだから。音がまた生まれ、今度は気配を感じた。
「誰か居るの?音を出してるのはアナタ?」
だが姿は見えなかったし、わたしの呼びかけにも返事は無かった。でもすぐそばにいる感覚。
そこで意識が途絶え……わたしは幽体離脱での出来事をすっかり忘れ、日常に戻された。
◇◇◇
あの気配がイオだったの……かな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます