第5話 兄弟①

 その子は我が家の居間のソファに寝転んでテレビを見ていた。


「おかえり、お姉ちゃん。」


 見た目は小学校3〜4年生くらい。サラサラヘアーはセミロングより短め。何とも可愛らしい顔立ちでナデナデしたくなる可愛さ。ときめいちゃう!


「た、ただいま。えっと……」


「あら、帰ってたの?ならイオの宿題見てあげて。分からないんだって。」


 お母さんが台所で晩ごはんを作りながらわたしにそう話しかけた。


「え?イオって何?もしかしてこの子のこと?」


「アンタ何言ってるの?お姉ちゃんでしょ!さっさとやっちゃって。」


 何故か怒られた。いや、それよりも……お母さんはわたしのことを『お姉ちゃん』と言ったのか!?これ以上お母さんに聞いてもいつものヒス発症しそうなのでやめた。


「君の名はイオって言うの?」


「何言ってるの?お姉ちゃん、イオのこと忘れちゃったの??」


 可愛い顔が曇るのが見てわかる。わたし……悪いことしてるの!?


「ちょっと来て!お母さんがいないところで話しよう。」


「じゃあイオ達の部屋でお話しよう。」


 わたしは手を引かれて2階に上がる。この子『イオ達の部屋』って言った?どういうこと?イオは何の躊躇もなくわたしの部屋に入る。


「ちょ、わたしの部屋なんだけどココ。って……えええぇ!?」


 わたしの部屋に二段ベッドがある~!学習机も2つ!?いつのまにか2人部屋になっていた!!


「どういうこと?今朝までこんなの無かったのに……。」


「何を言ってるの?お姉ちゃんとイオの部屋だよ、小さい頃からずっと。」


 本当にどうなってるの??わたしは一人っ子。兄弟は欲しいと小さい頃から思っていたけど、突然弟ができるなんて。しかも昔から、最初から弟がいることに……アレ?


「あのイオって弟……かな?」


 中性的で正直性別が分からない。男の子とも女の子とも思えるし、どちらでも不思議ではない愛らしさがあった。


「弟って……何?」


「あ、いや。妹だよね。ゴメンゴメン!」


「妹?」


 アレ?何この反応??


「いや、男の子と女の子どっちだったかなーって。ハハ。」


「男の子と女の子?どっちかなの?」


 何だろうこの違和感。通じていない!?


「そうだけど。どっち?」


「じゃあ、女の子。」


 じゃあってなんだよ!?


「そかー、じゃあ妹だね。」


「ねぇ、弟でもいいの?」


 ダメだろう!


「いや、女の子は妹だから。もうイオったら、ふざけないでよー。」


 んー、釈然としないけど何かもういいかな。わたしに妹ができた。


「アンタたち、夕飯前にお風呂入りなさいねー!」


 階下からお母さんが叫ぶ。


「お姉ちゃん、お風呂行こう~。」


 またわたしの手を引いて走り出すイオ。


 妹と二人でお風呂……新鮮だなぁ~。しかし、お風呂で知った事実。


 イオは男の子でも女の子でもありませんでした。

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