第2話 殺人鬼②
ドアの外でわめき散らしドアを何かで力一杯叩いていた騒音が……悲鳴に変わった。
「うわぁぁぁーっ!な、何だお前はぁ!?や、やめろ、やめ……」
直後、更に大きな音が響くや鍵を掛けた重厚な扉と共に芳賀先輩が吹き飛んできた。芳賀先輩は背中に怪我をしており出血もしていた。幸い致命傷ではないようだった。
廊下から現れたのはとても大きな人型の何かだった。お世辞にも人間とは言い難い人型であった。
「先輩、何なんですかアレは!?」
「分からないんだ!何だアレは!?」
同じことを言うわたし達。
「せ、先輩は殺人鬼ですよね?殺しちゃってくださいよ!」
「や、やったさ!でもナイフが刺さらないし切れないんだぁ!あんな化け物、倒せる訳ないだろう!!」
そう叫んだ芳賀先輩はわたしを掴み、思いっきりわたしを突き飛ばす……化け物の方へ。
「鈴木、俺は逃げる!あとは自分で何とかしろ。」
芳賀先輩は2階の窓から身を投げ出した。ソレには狭い部屋の入口をくぐり抜けて化け物が入ってきた。
◇◇◇
強い雨が降りしきる暗い森を急ぎながらゆっくりと走る芳賀先輩。飛び降りた時に足を痛めたのか走る姿が痛々しい。視界が悪く足元のくぼみ、いや穴に気付かずに倒れて穴にハマる芳賀先輩。
「大丈夫ですか、先輩。」
呼ばれて驚いたのか辺りを見回すと、ようやくわたしの姿を見つけたようだ。
「す、鈴木!?生きていたのか!?化け物から逃げられたのか?」
「化け物なら……ほら、先輩の横にいますよ。」
耳を疑った芳賀先輩はすぐ横を注視する。
「ひぃ!」
闇に紛れて気付かなかったようだが、横に盛り上がったモノが先輩の視界に入る。
「先輩が殺してくれないから…わたしが殺しましたよ。いま死骸を埋葬していたんです。」
「ウソだ!あんな化け物を殺したって言うのか!?銃でも持っていたのか?鈴木!」
「銃なんて持ってませんよ。持ってたら先輩のナイフなんか怖くないですよ。それより、丁度良いですか?……その穴。」
芳賀先輩は自分の周りを見回すと合点がいったようだ。
「す、鈴木。殺人鬼って話だが。アレは嘘なんだ。分かるよな?」
わたしは芳賀先輩に随分と軽くなったモノを投げる。暗くてよくわからない風な先輩。
「それ、裕子です。わたしのクラスメイトで嫌な奴だったんです。本当に嫌いでしたよ。ソレ、館の地下室にありました。中まで良く観察したんですね?」
「し、知らない!俺じゃない!!助けてくれ、警察に行くから!!!」
「穴、丁度良いみたいでよかった。」
◇◇◇
後日のニュースで男子高校生とタクシーの運転手が蒸発したことが報じられた。
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