2話

なんだろう。頭が痛い。ズキズキするようだ。


確かあの後、王の城を出て、装備を揃えたんだ。武器と鎧を買ってウハウハだった。


そんでもってどっかに行ったはずだ。あれ、、どこに行ったんだっけ……


目を開けると暗くてジメジメしたところにいた。寝ているから天井が見える。なんか汚い。てか、え!!どこここ!


「う、イテテテテ……」


「よう、起きたか。」


あれ、どこかで聞いた事のある声だった...



どこでだったかな……



あ!!


「道具屋のおじさんか!!」


思い出したぞ!確か次に道具屋に寄ったんだ。その時接客してくれたおじさんの声だ!!


「おじさん!ここは一体......」


ムクリと起き上がると、そこには鉄格子と、微かに灯る松明があった。え、????


「え!!!!ここ牢屋!?!?」


「え、ちょっと待って、理解が追いつかないんですが、なんで俺なんで旅立ち初日で捕まっちゃってんの!!なんで!!」


「覚えてないのか坊主……」


道具屋のおじさんは言った。どっから声がするんだろう。


あれ、もしかして、


 あ、お隣からだ。


「なんでおじさんまで捕まっちゃってるの!!!?」


「ウルセーー!!お前のせいだっての!!」

おじさんは、うがーと喋り返した。


「俺が何したって言うんだよ!!勇者は悪い事しないぞ!一般常識だ!」


おじさんは黙った。


え、なんで黙ってるの?


「もしかして俺犯罪しちゃった?」


隣の牢屋でおじさんがケッ!って拗ねた


「自分で思い出しな。」


「うう、ええーっと、確か僕は道具屋にみなぎーるドリンクを買いに行ったんだったな。」


みなぎーるドリンクはテンションが上がる飲み物だ。気合いを入れる時僕はいつも飲む。

聞いた事あるでしょ。みなぎードリンク。若者の間で流行ってるあれだ。


頭痛いけど頑張って思い出す。


「そこで、表に無いから倉庫にあるかもな、悪いが探して見てくれっておじさんに言われたんだっけ。」


「そうだ。」


「そんでー倉庫にも確か無かったんだ、みなぎーるドリンク。そんで、やっぱ諦めきれなくて、探してたら倉庫の奥の奥、箱の下にみなぎーるドリンク見つけたんだ。」


「…………」

 おじさんは黙っている。


「うーん、そんでー、おじさんにお金払って、我慢できなくて店の前で飲んだんだ。」


「ああそうさ。」


俺はそのあとからの記憶はどうしても思い出せなかった。


「くそお、思い出せない……」


俺は頭を抱えた。するとおじさんはため息をついて言った。


「まったくばかものめ。俺が説明してやろう。」


「お願いします。」


「まず最初に、実は俺は、危ないお薬を飲んでいてな。

飲むと気持ちよくなる薬"ラリルレロ"って薬だ。液状のな。あ、勘違いするなよ、別に身体に害はないが、依存性が高くて王が禁止してるんだよ。」


「俺は誰かにバレると捕まってしまうから、ラリルレロを隠していたんだ。バレないところにな。それに、薬って名前の容器に入れる事なんてできねえから、別の容器に入れていたんだよ。」


僕の血の気が引いた


「え、まさか。そんなわけぇー……」


「そのまさかだ。ばかもの。隠してたラリルレロをお前は俺の前でボトル1本分飲んだんだよ。しかもあの薬は適量ほんの少しでいいんだ。それなのに全部飲み干しやがって、くそう。もったいねえ。」


おじさんが泣きながら悔しがる声が聞こえた。


「て事は、薬物の異常摂取で俺はぶっ倒れて、薬物使用者として捕まってるのか??」


「いいや、もっとある。」


「え?」


「あの薬はな、気持ちよくなる代わりに理性が飛ぶ。欲が強くなるんだ。人を殺したい願望があるやつがいっぱいラリルレロを飲むと、夢見心地でボケーッと人を殺してしまうだろうな。」


俺はゾッとした。


「じゃ、じゃあ、俺は、人を殺してしまったのか?」


「いいや。」


俺はほっとした。人殺しでなければもう大丈夫ってくらい心配だった。


「じゃああれか、おじさんの店のもん全部食ったとか?」


「いや、違う。」


「じゃあなんだ。聞かせてくれ、」


おじさんは黙った。しばらく沈黙だった。


一体俺は何をしたっていうんだ。


「後悔しないな?言うぞ?」


おじさんは思い出すように話し始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る