勇者と魔法とねこぱんち

@akainendo

1話

「さあ、お入りくださいませ。」


ぎぃぃぃぃ……バタン......


大きくて重い扉が閉まった。


偉そうな太った髭モジャのおじさんが奥にどしりと座っている。


ゴクリと息を飲んだ。


ここが王室か……


王が口を開いた。


「よくぞおいでくださった。3人の勇者方よ。」


「「「はっ。」」」


俺達は膝を着いた。緊張がまだ解けない。


「君たちに来てもらったのはほかでもない。あの魔王の討伐だ。」


王は続けた。


「6年前、この国にモンスターが湧き始めてから、私たちの生活はめちゃくちゃになった。食料は荒らされ、人間が魔物の食料にされることもあった。他にも村が潰れたり、色々された。」


「これは本当に許されないことだ。だから勇者の素質のある君たちをここに呼んだのだ。」


王は僕達3人を見た。


「まずマリア。君は力の勇者だ。力が強く、どんな魔物も力でねじ伏せてきた。君の力は魔王を倒す力になるかもしれない。」


「はっ!わたくしがきっと魔王を打ち倒してみせます!!」


赤髪の女性は大きな声で言った。気合十分らしい。


「うむ。」


王は頷いた。


「次に、くノ一の君だ。名前は教えてくれなかったが、忍者の里で1番早い足を持つと聞いた。君は速さの勇者だ。隙に入ってしまえば魔王でも一撃でたおせられるかもしれない。」


「はい!きっと私が魔王の急所を滅多刺しにします!」


急所を滅多刺し……何それちょっと怖い。


俺はちょっと股間が心配になった。


小柄な女の子なのにそんな怖い事言わないでよ……


「次に君だ。勇者ギル。」


「は、はい!」


俺は王様になんて言われるか気になっていた。


俺は足が早いわけでもなく、力が強い訳でもない。ただの村人なんだ。


特別には勇者になれる素質なんて特に無かったから、なんで勇者に選ばれたのか分からなかった。


俺はなんの勇者なんだろう。


「君はだな。」


ゴクリ……


「幸運の勇者だ。」


「へ?」


王は続けた。


「だって運も実力の内っていうからな。運良く魔王倒せちゃったりするかもだし。」


「国の中か数万人1人だけランダムで選んだら君が当たったんだよ。君は運が良い。」


「ええええええ!!そんだけええ!?」


「まあ大丈夫でしょ。君運いいし。」


王は髭を撫でながら言った。


もっとなんか強い意味があると思ってたなあ、


勇者の子孫だったからとかじゃないのかよ。


運がいいから魔王倒してこいとか、心もとないなあぁ......



「では3人の勇者よ!!健闘を祈っておるぞ!必ず魔王をうち取ってみせるのだ!!」


「「おおおーー!!」」


他の2人だけめっちゃノリノリじゃん。


相当腕に自信あるんだろうな。


俺だって.....俺だって運がいいだけらしいけど、頑張って魔王討伐目指すぞ!!


きっと、スライムから徐々に倒していけば、すごい強くなっていくに違いないさっっ!!


胸がドキドキ。ワクワク。震えるようだった。


きっと俺が魔王を倒してみせるんだ!!!



「おおおーーー!!!」



俺もそう叫んでいたはずだった。




気がつくと、

黒と白のシマシマの服を着ていた




なぜ俺は牢屋にいるんだ……

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