チョコレートはそのままに 14

「言っちゃったんだから仕方ないだろ」

「それをわざわざ実行しようとするかねえ」

 運転席のコウジは、だらしなく伸びた髪の毛を後ろでしっかり縛って、いつになくやる気十分だ。

「しかもこんなに朝早くから」

「なあ、聞かせてくれよ。例の話」

「例の話?」

「サンタクロースだよ。見たことあるんだろ」

「冬はもう少し先だぞ」

 コウジがアクセルを踏むと、車がゆっくりと動き出した。


 朝食を我慢してよかった。

 こんなにも綺麗な朝焼けを見ながら旅の始まりを祝えるのだ。失敗を目指せばいい、どちらに転んでも成功になる、と上司は言っていた。カツヤは窓を開け、温かいような、痛いような風を頬に感じながら、形を変えていく雲をぼうっと眺めていた。真冬に起こった、耳を疑うような奇跡の話を聞きながら。

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チョコレートはそのままに ささきゆうすけ @yusukesasaki

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