チョコレートはそのままに 5

「最近、頑張ってるよな。何か良いことでもあったか」

 上司が下から覗き込むようにして言った。

「そうですかね、悪いことのほうが多いですよ」

「悪いことか」

「大丈夫です。仕事に集中出来る環境になったような気はします」

「そうか、無理はするなよ」

「昼、行ってきます」


 ベンチに座ると、いつものようにバサバサと鳩が群がってきた。

「お前ら、今日だけだからな」

 カツヤは袋からパンを取り出すと、細かく千切ってばら撒いた。

 コロロ、コロロ。

「なあ、お前ら」言いかけて横に目をやると、数日前のチョコレートが、ほとんど形を変えないままで残っていた。

「生きてて楽しいか?」

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