チョコレートはそのままに 3

 ファミリーレストランのメニューは優柔不断の天敵だ。新しい何かに挑戦しようと悩み悩んだ末に、結局いつもどおりのものに落ち着くことになる。

「本気かよ」

 注文を終えると、店員がいなくなるのを待たずにコウジが口を開いた。

「しょうがないだろ。チカが別れたいって言ったんだ」

「そんなの、本気なわけねえだろ。女ってのはなあ、時々変なことを言い出すもんだ」

 得意気だ。

「そんなに変なことでもないだろ。大体の人は別れたい時に別れたいって言うよ。コウジが変な女と付き合い過ぎておかしくなってるだけだ」

「それが不思議なもんでなあ、別れたくないから別れたいって言う時もあるんだぜ」

「全然わかんねえ。チカとは六年も付き合ってたんだ。それで別れたいって言うんだから、別れたいんだろ。別れたくないから別れたいって言う女がいるんならそいつをここに呼んできてほしい。説教してやる」

 わかってねえな、コウジは水を一気に飲み干して立ち上がった。

「カツヤくん、私ちょっとお手洗いに行ってくるわね」

「女だってトイレくらい言えるだろ」

「ほんと、わかってねえな」

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