#24 エピローグ

 よく晴れた日の午後、オブライエン家のマナーハウスの庭には、大勢の人が集まっていた。パラソルの下に若い男たちが集まっている。その中心にいるのはビクトリアとフリーダだ。

「君のお株がすっかり奪われてしまったな」

「私はもう人妻ですもの。あんなふうに男性に囲まれても、うれしくないわ。妹たちがすっかり元気になったのがいちばんうれしいのよ」

 そういうソフィーをルパートは熱い目で見ている。

「メアリーもようやく退院できたし。今日は来ていないけれど、無理をしなければ、ふつうに生活していいそうよ」

「それはよかった。アンディも喜んでいるだろう。仕事のほうも落ち着いてやっているそうだ」

 あの日の火事の原因は漏電ろうでんだった。離れは古く、かなり長いこと修繕していなかったし、コンセントにほこりがたまっていたらしい。玄関側から火が出たので、反対側の書斎にいて、酔っていたアンディはそれに気づかなかったと言っていた。それで彼もすっかりりて、酒からは遠ざかっている。

「これで、すべてがまるくおさまったのね」

「ああ。ようやく僕と君の二人のことだけを考えられるようになった」

 ルパートはソフィーの手をそっと取った。

「ソフィー。結婚してからずっと仕事ばかりだっただろう。思い切って長期間の新婚旅行に行かないか。豪華客船でヨーロッパのリゾート地へ行って、そこから世界一周してもいい」

 そう言うと手のひらに熱く口づける。

「新婚旅行? こんなに時間がたってからようやく?」

 今すぐにでもキスを返したい気持ちをおさえてソフィーはこたえた。

「ああ。実をいえば、もうギリシャ行きの船の一等を押さえてある。きっとロマンチックな旅ができる」

 キスは妻を誘うかのように手首の内側に上がっていった。

 まったく私の旦那様は強引なんだから。いますぐにでも寝室に行って抱き合いたそうなルパートの目を見て、ソフィーはおかしくなった。

「ルパート、リゾート地でゆっくりするのはすてきなアイデアだけど、世界一周のほうは延期してもらわないといけないわ」

「どうしてだい?」

 ルパートがいぶかしげに顔を上げた。

「実は……赤ちゃんができたの」

 ソフィーはルパートの目をまっすぐ見て言った。

「船の上での出産は、さすがに大胆すぎると思うの」

 ルパートは一瞬、目を見開いた。やがてその顔が喜びに輝く。

「そうか……。それはもちろん大事にしなくては。そうか……」

 ルパートは幸せをかみしめるように何度もつぶやいた。

「これからは子供も一緒に幸せになりましょうね」

「ああ、もちろんだ。僕は何があろうと、君と子供たちを守っていく」

「愛しているわ、ルパート」

「ああ、ソフィー、僕もだ」

 穏やかな陽光の下、二人は深いキスをした。


― 完 ―

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【漫画原作】傲慢な大富豪とエメラルドの瞳の伯爵令嬢 ― A Lady with Emerald Eyes and An Arrogant Billionaire ― スイートミモザブックス @Sweetmimosabooks_1

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