キラとメキ……エデンの秘密

第3話・人間はキスしただけでは生まれない

 メキに見習い創造神が言った。

「それじゃあ、そろそろメキをパートナーに紹介しようか……ついてきて、向こうの広場で待たせてあるから」

 メキが見習い創造神の後からついていくと、茂みの向こう側にメキがいた広場とは別の広場があり、平らな石台の上に背中まで伸ばした髪をポニーテール風にした、裸の人物が背を向けて座っていた。

 こちらの広場にも、タコ頭やイカ頭の動物たちが、裸の人物を遠巻きに取り囲んでいる。

 見習い創造神が、長髪ポニーテールの人物に向かって言った。


「キラ、連れてきたよ……君のパートナーのメキだ、仲良く子作りして♪」

 キラと呼ばれた人物が上体を、ひねるように振り返る。

 キラの胸には二つの膨らみがあった──キラは女だった。

 メキを一瞥〔いちべつ〕したキラが言った。

「あたいのパートナーって女かよ、女同士で繁殖できるのか?」


 数分後──キラとメキは平な石台に並んで裸で座り、見習い創造神からの説明を受ける。

「えーと、二人がいる『エデンの楽園』は、こんな感じになっています」

 見習い創造神は、地面に木の棒で円を描いて、マス目に区切って棒で一ヶ所を示す。

「この辺りの小エデンが、ボクの担当している楽園地域で、キラとメキがいる場所です。大エデンは、数枚の層になっていて。

ヒューマンタイプ以外の人類……例えば、昆虫人類とか魚類人類とかが創造されていて、それぞれの見習い創造神が担当しています……まぁ、重ねたパンケーキを想像してもらえればわかりやすいですかね」


 キラが挙手して質問する、胡座あぐらを崩して座っているキラの陰部は丸見えだ。

「楽園については、だいたいわかった…神さんから生命の息吹を吹き込まれた時から、気になっていたんだが」

 キラは、周囲にいるタコ頭やイカ頭の動物たちを見回す。

「こいつら、いったいなんだ? なんでタコと、イカと貝なんだ?」

 見習い創造神が、お気楽な雰囲気で答える。

「ボクは、お寿司のネタの中ではタコ、イカ、貝類が特に好きでね」

「はぁ!?」

「どうせ、世界を創造するなら、好きなモノで作った方が飽きがこないでいいかな? と、思ったから」

「そんな、しょーもない理由で命を創造したのか! とにかく、この女と二人で子作りをやりゃいいんだな」

 キラは、いきなりメキを押し倒すとキスをしてきた。

 驚くメキ。

「んぐっ!? ふぐっ!?」

 裸の女に温かい石の上に押し倒され、裸体を密着させられて押しつけられた互いの乳房が変形して。

 口を吸われるメキの目が、次第にトロ~ンとした恍惚の目に変わる。

 ペチャ……チュクッ。

 メキから唇を離したキラの唇に、唾液の架け橋が糸を引く。

 メキを見つめながら、キラが質問する。

「どうだ、体に何か変化はあったか? あたいの唾液で受胎したか?」

 キラの言葉に、キョトンとするメキ。

「えっ、キスしただけで妊娠するはずが」

「しないのか? あたいの頭の中に微かに残っていた記憶だと、赤ん坊ってキスをするとできるって……じゃあ、あの記憶は間違った記憶だったのか? 人間って卵から生まれるんだよな?」

「いやっ、卵から人間は生まれないから」

 キラが、見習い創造神を睨みながら問い詰める。

「説明しろ! そもそも、あたいたちは女同士で繁殖できる機能が、体に備わっているのか?」


 見習い創造神が頭を掻きながら答える。

「メスやオス同士で繁殖可能なオプションは、すでに別の見習い創造神が先にゲットして使われちゃったから……キラの頭の中にあった『キスで赤ちゃん』と『卵からは人間が誕生する』の記憶は、大神さまが散らばった魂を集めた時に、キラの魂と融合しちゃった別の生物の記憶断片だね………この宇宙には、そんな繁殖方法の人類もいるから……メキの方からは、なにか質問はある?」

 足を閉じて座ったメキが、胸元を両腕で押さえ隠しながら恥ずかしそうに言った。

「なにか、着るモノをください……ずっと、裸だと恥ずかしくて」

 見習い創造神が手で、バツ印を作って返答する。

「それはダメ……まだ、衣服は早い。苗木が育つまでは裸で過ごしてね、両手で乳房を包み隠す手ブラなら認めてあげるから」

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