第51話:クラスの出し物、決めようか?

 今日最後の授業を潰して、ボク達のクラスは文化祭の出し物を決めることになった。


「では、うちのクラスの出し物を決めるわ。みんな、意見を出してくれるかしら」

「ぃよっ! 待ってました!」


 怜奈の言葉に、クラスのみんなが盛り上がる。


「ねぇ、雪は何か考えた?」

「ううん、まだ何も。飛鳥は?」

「一つだけあるよ。まあ定番なやつだけどね」

「そうなんだ。駿介と美乃梨は?」

「俺も特に考えてないなぁ」

「私は一つ考えたよ。ちょっとだけ凝ったやつ」


 などと話していると、怜奈がボク達に目を向けた。


「ほらそこ、何かあるなら言ってくれるかしら」

「あ、はーい。私、お化け屋敷がいいと思うな」

「お化け屋敷ね。他にはあるかしら」


 怜奈が聞くと、美乃梨が元気よく手を挙げた。


「はいはい! 私も一つあるよ!」

「何かしら」

「コーヒーをメインにした喫茶店がいいな!」

「コーヒーをメインに、ね。そういえば美乃梨はコーヒーが好きなのよね」

「うん! だからもしやるなら、本格的なやつがやってみたいなって思って」

「へぇ、なんだかちょっと興味があるね」

「でしょ! さっすが姫様、わかってるね」


 怜奈は飛鳥達が上げた候補を、黒板に書いていく。


「……これで全部かしらね。ならこの中から多数決で決めるわ。これがいいと思ったものに手を挙げて頂戴」


 みんなが頷いたのを確認して、怜奈は一つずつ読み上げていき、挙がった手の数を数えて黒板に書いていく。


「……では、うちのクラスはコーヒーメインの喫茶店ね」


 順調に出し物が決まると、怜奈は話を進める。


「次はお客様に出すメニューを考えるわ。……まあ、コーヒー喫茶だから、コーヒーを出すのは当たり前だけど」

「どのコーヒー豆を使うか、だよね」

「ええ、美乃梨の言ったように、本格的に入れるなら、そこから選ぶ必要があるわね」

「とは言っても、あんまり知られてないのを出しても、お客さんはピンと来ないだろうし、私はキリマンジャロ、モカ、ブルーマウンテン辺りがいいと思うな」


 確かにその辺なら、コーヒーに詳しくなくても聞いたことくらいはあるだろう。


 入れる側のボク達も、全然知らないのを扱うよりはいいかもしれないし。


「ん、そうね。みんなも賛成ってことでいいかしら」

「「「はーい」」」

「ならコーヒーはこれで決まりね。次は食べ物ね」

「やっぱりコーヒーに合うものがいいよね」

「そうだなぁ。何があるかね」


 考えていると、クラスの一人が意見を出す。


「定番だけど、クッキーはどうかな。思ってるよりは簡単だし、卵を使わないやり方もあるから、アレルギーの心配も無いと思うよ」

「そうだね、それはいいと思う」

「俺も賛成だぜ」


 みんながその意見に賛成し、飛鳥がそれならと手を挙げる。


「私もクッキーの作り方なら知ってるから、そっちを担当していいかな」

「ええ、お願いするわね。……メニューとしては、あと一、二品は欲しいところだけど」

「それだったら、ホットケーキはどう? そんなに難しくないし、結構コーヒーとの相性もいいんだよ」

「ホットケーキかぁ……旨いよなぁ」

「聞いたら久々に食べたくなってきたぜ」


 ホットケーキという意見にも、どうやら反対意見はなさそうだ。ただ……。


「確かにありだけど、そちらは卵と牛乳を使うから、注文を取る際はあらかじめお客さんに聞く必要はありそうだな」

「そうね、そこはみんなに気を付けてもらう他ないわ。ただ出す分には問題は無いと思うし、これで申請するわね」


 怜奈は手元にある申請書に、内容をどんどん書いていく。


「……なぁ、ところでさ、服装はどうするんだ? 客引きの意味で、ただ制服ってのも味気ないだろ?」

「確かにそうだね。教室の内装も変えたいところだけど」

「ええ、その辺も考えなければならないけど、一先ず今日は服装だけ考えましょう」


 服装かぁ……お店の店員はよくワイシャツにエプロンを付けてる姿を目にするけど。


「う~ん……やっぱりここはメイド雪ちゃんに出てもらうしか」

「出ないからね」

「どうして!?」

「そんなに驚く?」


 美乃梨が心底驚いた表情をしていた。周りを見ると、クラスメイトのほとんどが同じ様子だった。


「でも効果的だと思うけどな、メイドの雪が接客をやったら」

「……いえ、悪いのだけれど、姫様には接客をさせるわけにはいかないわね」

「え、どうして?」


 意外にも怜奈がそれを否定した。当然疑問に思った飛鳥も、彼女に問いかける。


「もちろん福谷君が言ったように、客引きという意味では大いに効果的だと思うけれど、おそらくその効果が大きくなりすぎて、パンク状態になるわ」

「……あ~、確かに」

「それと、飲食が目的でなく、姫様が目的で来てしまう人だって、決して少なくないはずよ。そうして人がたくさん集まってしまうと、他のクラスの迷惑にもなってしまうわ。だから、申し訳ないけれど……」

「うん、分かってるよ。というかそれが無くても、やるつもりは無かったし。……ありがとね、怜奈」


 ボクはそこまでちゃんと考えてくれた怜奈にお礼を言った。


 彼女は照れながらも、こほんと咳ばらいをして、話を戻す。


「では服装についてだけど。コストのことも考えて、制服のブレザーを脱いで、ワイシャツの上にエプロンという形でいいかしら。エプロンの色は極力黒がいいわね」

「うん、私は賛成」

「俺もいいと思う。財布にも優しいしな」


 怜奈の意見に、みんなが賛成したところで、ちょうど授業終了の鐘が鳴った。


「今日はここまでね。明日からはもう少し具体的な部分を決めていくから、みんなそのつもりでいてね」


 はーい、と全員が返事をしたところで、今日はそのまま解散となった。

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