第37話:生徒会、そこは…?

「ちょ、どうするの!? っていうかどうにか出来るの!?」

「ああわわわわ! 雪が、雪が………後輩に?…………あれ、それはそれでありかも」

「いやねぇよ。正気に戻れ佐藤」

「そうよ飛鳥、姫様が後輩、ましてや私達が“先輩”と呼ばれるだなんて」

「いやそこまで言ってなかったよな?」

「あ、あはは。みんな面白いくらいテンパってますね」

「うん…」


 みずなの言う通り、当事者のボクより慌てている。なんか面白いからこのまま見ていたい気もするけど、さすがに止めようかな。


「みんな落ち着いて。一応先生から救済措置があるって話は聞いてるから」

「あ…そ、そうだよね。あはは、………あぁ、良かった」

「ええ。それなら一先ずは安心と言ったところかしら」

「けど、その救済措置ってのは、具体的に何するんだ」

「うん、なんだか生徒会の仕事を手伝うことらしいけど」

「生徒会……それ、本当なの」

「先生が言うには」


 美乃梨はなんだか険しい顔になって、少し考える仕草を見せた後、こう言った。


「私、前に別のクラスの子から聞いたんだけど、何でもその生徒会の会長が、部類の女好きなんだって。それで今までに餌食になった女生徒が何人もいるって」

「餌食て」

「あ、それ私も聞いたことある。その性癖があるから、生徒会には女生徒しか入れないって」

「ああ、なんだ。それならボクも先生に聞いているよ」

「あれ、そうなの」

「うん、だから生徒会メンバーが一人分足りてないってこともね」

「そっか。けどそれなら、雪が生徒会に入るってことなのかな」

「どうだろう。あくまで手伝いとしか聞いてないけど」


 そこまで話したところで、先生が教室にやってきて、ボクを呼び出した。


「天音君、少しいいかしら」

「あ、うん。じゃあまた後でね」


 ボクはみんなにそう言い残し、先生と教室を出ていく。


「それで、例の手伝いの話なのだけど。早速今日の放課後からやってもらうことになったから、よろしくね」

「うん、それはいいんだけど。実際どのくらいの期間なの?」

「そうね。大体2か月くらいかな。後は実際にどれくらい天音君が仕事をしてくれたか、その実績次第ってところね」

「なるほどね。わかったよ」


 結局、要は自分次第ということだ。留年なんてしたくないし、退学なんてことになったら、新しい目標である恋が出来なくなる。


 まあ、今のところ、相手何ていないけど……………あれ、そういえば。


 ふと気づいた。そう言えばボク、以前は飛鳥やみずなを見たとき、かなりドキドキしたことが何回かあったけど、今は全然そう言ったことがない。


「どういうこと?」

「え? 何が?」

「あ、ううん、何でもない。それより、放課後は生徒会室に行けばいいのかな」

「ええ、場所は分かるわよね」

「うん、知ってるから大丈夫」

「なら、今日からお願いね」


 そう言って先生は職員室に戻っていく。ボクはまだその場に立ったまま、先ほどのことを考えていたけど、結局答えは出なかった。


 ――放課後。

 ボクは予定通り生徒会室へ向かう。飛鳥とみずながやたらと付いて来たがっていたけど、さすがに止めた。二人まで巻き込むのは違うしね。


 ドアの前までたどり着き、ノックをすると、中から綺麗で透き通った声が聞こえてきた。


「どうぞ」

「失礼します」


 ドアを開けて中に入ると、部屋の真ん中に長机があり、それを囲うようにして四人の女生徒が座っていた。


「待ってたわ、天音雪君。私は生徒会長の朝野美雨あさのみう。三年生よ。美雨でいいわ。よろしくね」


 一番奥に座っているのが、生徒会長の美雨。サラッとしたロングの黒髪、黒曜石のように輝く瞳。少しあどけなさがある顔立ちで、スタイル抜群。まさしく美人といったところだ。少し怜奈に似てるかも。


「ハァ………ハァ………ほ、本物の、歌姫。間近で見ると、より一層……」


 何やら不穏な声が聞こえるが、ボクは無視する。


「うん、よろしく」

「…ハッ…こほんっ。ええ、それで、こちらが副会長の西村友里にしむらゆり。二年生よ」

「よろしくね、天音君。私も友里って呼んでね」

「よろしく、友里」


 会長の右斜め前に友里。少し赤く染まった髪をツインテールにしていて、やや釣り目気味な赤い瞳。こちらもまたスタイルが良く、美人といより可愛いといったところだ。


「そしてこちらが佐藤都子さとうみやこ。書記を担当してるわ」

「よろしくお願いします。一年です」

「うん、よろしく、佐藤さん」

「都子、と呼んでください」

「あ、うん。じゃあ都子、よろしくね」


 友里の右隣に座っているのが、都子。ボブカットの黒髪で、クリッとした可愛い瞳。黒縁メガネを掛けていて、真面目そうな雰囲気を醸し出している。


「最後に佐藤莉子さとうりこ。会計を担当しているわ」

「よろしくです! 雪先輩! 莉子って呼んでくださいね!」

「うん、よろしくね。莉子」

「ちなみに都子と莉子は双子の姉妹なのよ。莉子が姉ね」

「です!」


 友里の正面に座っているのが莉子。見た目は都子にそっくりだが、こちらは眼鏡を掛けていない。今のやり取りで分かったけど、とても元気な子だ。


「以上が、生徒会メンバーだよ。そして聞いていると思うけど、これから雪君には私達の仕事を手伝ってもらうことになる」

「うん、聞いてるけど、具体的に何をするの」

「まあ主に雑用かな。少なくとも、いきなり書類を渡して精査してとか、難しいことは言わないから、安心してね」

「そっか。わかった」


 それならとりあえず安心かな。確かにいきなり難しいこと言われても困るからね。


「さて、それじゃあ早速一つ頼みたいことがあるんだけど」

「うん」


 そう言うと、みんなが何やら紙とペンをこちらに差し出して一斉に言った。


「「「「サインください!」」」」


「………………あ、うん」


 この生徒会、大丈夫なんだろうか。


 それがボクの第一印象だった。

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